圓朝は座布団と着物に模様をいれようか考えたが、やはり止めた。今まで何体作ってきたか判らないが、着衣に模様を入れたのは、ただ一度きりである。このストライプはさすがにしょうがない。不器用なので線がヨレヨレであるが。 せっかく立体で作っても、模様が入ると目がそちらへいってしまう。何度か書いたことだが、九代目團十郎を隔月のフリ一ペ一パ一の表紙用に作った時、それ以前、歌舞伎座で海老蔵丈の目玉に照明が反射してピカ一ッと光ったのを見ていた。昔から團十郎に睨まれると風邪をひかないといわれている。当時インフルエンザがはやっていたし、歌舞伎座も改修するというので進言して決まった。歌舞伎座の上に巨大な鎌倉権五郎景政の『暫』が乗っかり東京中を睨み倒す予定であったが、せっかく作った顔の造形があの隈取りに隠れると思うと耐えられず、初志貫徹はならなかった。 海老蔵丈の目玉が光ったとき、お家の芸のためには目の小さな嫁さんは貰いにくいだろうな、と思ったものだが、無事な快癒を願いたい。海老蔵に睨まれると癌も治る、という新たな伝説はどうか。
アートスケープ 展評『深川の人形作家 石塚公昭の世界』
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