明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



こう寒くなってくると寝床でシミジミと熱燗といきたくなる。撮影に使った行灯はあるし、火鉢も鉄瓶もある。以前、試したことがあるがなかなかイメージ通りには行かなかった。シミジミするためには頃の良い酒器のサイズというものがある。大ぶりな酒器では燗がつきにくいし趣に欠ける。泉鏡花なんか腹這いになって読みながら、お新香くらいでやっている最初のうちは良かったが、燗が間に合わなくなる。結局レンジでチン、ということに。わざわざ寒い部屋で布団の中だけヌクヌクが良いわけで、台所に立つたび酔いが冷める。もっと容量が大きくないとダメだ、ということになり、結局あぐらをかいて飲み始める。そもそも鏡花を読みながら飲もうという了見が良くない。と鏡花に八つ当たり。その使い物にならないお銚子は即燃えないゴミ行きとなった。巨乳の女性が可愛いブラジャーがないと嘆く感じであろうか。 先日、学生時代に制作した一升以上入る徳利を四十年ぶりに見て、山賊体質の私が寝床で鏡花などとスカした真似をしようというのがそもそもの間違いであると思う。しかし私も同じ間違いを繰り返すほど馬鹿ではない。シミジミと日本酒をチビチビやっているように見せかけ、実は中身は芋焼酎を生で、とすでに次の策は考えてある。それなら可愛いブラジャー、いや酒器でO.K.である。ヘンといえば、一体私は何に対して見せかけよう、というのであろうか。こんな調子であるから“独身者の部屋はノックしないで開けるな”という。

【タウン誌深川】〝明日出来ること今日はせず〟連載第17回『引っ越し』
『石塚公昭 幻想写真展き続ける作家た18年7/25~9/2 リコーイメージングスクエア銀座ギャラリーA.W.Pyoutubeこ2016年『深川の人形作家 石塚公昭の世界


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