私も他人のブログを読んで〝何いってんだか訳判らないよ〟としょっちゅう思うから、三島の話しは大概にしておきたいが。 三島はとにかく血が大好物である。クーデターの挙げ句のような血の海で死んでいる将校や、神風連の侍が、もはやこれまで、と割腹している所を制作した。ひとえに三島にウケるためであった。一方江戸川乱歩の時は、残酷シーンを書いておきながら、あとで後悔して削除するような人物であったから、過激なシーンを避け、例えバラバラ死体でさえ切り口は羊羹を切ったかのような有り様で、犯人役の乱歩は、常に他人事のような顔をしていた。よって手掛けたいのはやまやまであったが、私の手法だと『芋虫』では、乱歩を芋虫にするしかなく断念した。他の作家が、やりたい放題描いているのを見ると羨ましくもあるが、著者の創作のおかげで様々なイメージを抱かせて頂いた、と思うと本人を登場させる手前、それが出来ない。好き勝手な事をやっている割に奇妙なくらい律儀な私である。逆にいえば好きでないことはしたくない、というのも強いのであろう。最初の話に戻ろう。 作家本人にウケたい、とは言うものの、あくまで私の創作である。三島の趣味だからといって、なんでもかでも血に染めたくはない。目を開いたまま静かに座る三島がいたとしよう。作者の私が死んでいる、といえば死んでいるのである。それなら部屋に飾ることも可能ではないだろうか?と前回男の死で一カットも売れないというワースト記録を作った私であった。
【タウン誌深川】〝明日出来ること今日はせず〟連載第17回『引っ越し』