私の家では、父が鶏肉を嫌いだったので、クリスマスの時くらいしか食べられなかった。なのでずっと高価なご馳走だと思い込んでいた。父は子供の時に、首をチョン切られながら庭を駆け回る鶏でも見たのではないか?おそらくそんなところであろう。青魚もだめであった。最晩年は、母が健康のため、と新鮮なイワシを食べさせていた。何だ、食べられるんじゃないか?私は父と違って、一度蕁麻疹が出たくらいで食べられなくなることはなく、たまたまだろうと思う方である。 父といえば、幼い頃、早朝枕元にプレゼントを置いているのを薄目を開けて見ていた。一月後、何かしでかして父に叱られた時、突然「クリスマスの時、プレゼント置いてたじゃないか!」つまりサンタなんかじゃなく、嘘をついていたじゃないか、という訳であろう。母は、知っててずっと黙っていたのだな、と思うと可笑しくてしかたなかった、と言っていた。子供と言うものは、大人に気を使っているものである。
偶数月25日発行【タウン誌深川】〝明日出来ること今日はせず〟連載第18回『葵の御門』