専門学校時代の友人N君が、伝統工芸の陶芸展の審査員として上京してきた。日本伝統工芸展の入選歴が3回だか4回以上が出品の条件で、その中から3人の受賞者を選出するそうで、人間国宝2人を含む7人の審査員で選んだという。先年彼の作品は国立近代美術館に収蔵もされた。しかし当の本人はというと、知り合った十代の終わり頃と基本的にはまったく変っておらず、それはほとんど呆れる程である。私には作る物が物凄く良くなってしまった以外は、眼鏡が遠近両用になったくらいの違いに思える。 相変わらずのバ◯アた◯しである。学生時代から何故だかお年寄り、特に女性に可愛がられる。近所の商店街で昼食の総菜を買っても、彼だけコロッケがひとつ余分にはいっているなんてことは普通であった。確かに気さくで愛想は良いのだが、ただそれだけでああはならない。何年か前に上京した時は、近所の安くて有名な◯三という、開店の4時には行列ができる店に連れて行った。ここは無愛想で知られる婆さんがいる。注文時に二言三言かわしたろうか。何しろ店は混み合っている。彼はセーターだったか何かを忘れてしまったので、翌日も2人で行ってみると、婆さんが彼の顔を見るなり「忘れ物!」と笑顔で手を振ったのには唖然としてしまった。まったくあり得ないことである。彼からは婆さんに効き目のある、猫でいうマタタビの成分のような物が発せられている。といわれれば納得ができる。 今回は彼がいかに彼の方面にウケがいいか、という驚くべきエピソードを聞いたが、それは彼を単に陶芸家として成功させるだけでは惜しい、というくらいの話なのだが、日本伝統工芸界の星になってくれれば充分といえば充分であるし、最近のブログは冗長が過ぎるので、この辺りにしておく。
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