明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 

飾る  


引っ越ししたら、部屋に自作の写真作品を飾ろうと考えていたのだが、これがなかなか思うようにはいかない。原因は明白である。私の写真作品は通常の、外側の世界にレンズを向けるのとは違い、常々言っているように〝レンズを外側に向けず、眉間に当てる念写が理想〟であり、また私の制作とは〝頭に浮かんだイメージを可視化し、やっぱり在ったな、と確認する行為〟でもある。その結果を日常目に入る所に飾り暮らすというのは、江戸川乱歩言うところの〝鏡地獄〟球体の鏡の中で暮らすような心持ちして穏やかではないだろう。   江戸川乱歩の〝うつし世は夢 夜の夢こそまこと〟他、林芙美子と室生犀星の短冊をそこらに掛けた。床の間がわりの置き床の上には九代目市川團十郎の瀑布図、または初代市川左団次の書を飾るつもりでいたが、いずれも天井辺りから提げないと、長過ぎ畳に着いてしまう。これに五代目尾上菊五郎があれば、いわゆる〝團菊左〟となるわけだが、菊五郎にいたっては私は見たことさえない。置き床の上には、今のところ泉鏡花旧蔵の兎と同じ万古焼きの兎、関東大震災後の補修時に作られた歌舞伎の瓦、九州から四十数年ぶりに帰って来た私の卒業制作の大徳利をとりあえず置いてあるが、置きゃいいってもんではないだろ。

【タウン誌深川】〝明日出来ること今日はせず〟連載第17回『引っ越し』

『石塚公昭 幻想写真展き続ける作家た18年7/25~9/2 リコーイメージングスクエア銀座ギャラリーA.W.Pyoutubeこ2016年『深川の人形作家 石塚公昭の世界


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先日、携帯ショップに行って良く判ったが、今時のネット事情に全くついて行けていない。理解しようという意欲もわかない。すっかりポンコツの域に在ることを思い知らされた。と言いながら、以前からやってみたかったのが、制作中の動画撮影である。  私の作品に、昔から付きまとうのは、被写体のサイズである。そしてオイルプリントの発表時に言われ、陰影を出さない手法で再燃したのは、これは写真なのか?絵なのか?である。オイルプリントの時は、これはどういう手法なんですか?と、一日中聞かれ、画廊の受付嬢が笑いをこらえる始末で、誰も知らない手法をやる私が悪いのだ、と技法公開のためにホームページを作った。謎があった方が良か良かろう、と以前は写真だけ展示したが、聞かれれば答える訳で、となると人形も見たい、となる。ネタばらしという野暮なことをしないですむマジシャンが羨ましい。  当ブログには深川江戸資料館と銀座のリコーイメージングの会場の動画のリンクを貼り続けているが、少なくとも大きさが判る。こうなったら野暮ついでに被写体の制作風景も公開してしまえ、というである。もし生まれ変われるのであれば、人形を作っている事は絶対言わない。いやそれでは面白く無い、相棒の人形制作者を捏造して、藤子不二雄みたいなつもりでやりたい。そして都合の悪いことは、みんなそいつのせいにしてやるのだ。

【タウン誌深川】〝明日出来ること今日はせず〟連載第17回『引っ越し』

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先日、スマホの修理と、母の携帯電話の解約、スマホの修理依頼、その他諸々をやっていたら四時間もかかった。いい加減うんざりである。仕事だからしょうがないのだろうが、一通り説明しないとならないのだろう無表情で延々と。サインばかりさせられた。前回スマホを購入した時の知人に今回ももおんぶにだっこ。良かったことと言えば、照ノ富士がいたことであった。デカイ.  その後が良くない。代替え機のせいで手こずるうち、フェイスブックを再設定ということになり、改めてお友達申請をしてご迷惑をかけた。修理が終わって同じことになるようなら、フェイスブックは止めよう。相性が悪いと言えばパソコンのプリンターで廃棄して10年にはなるだろう。次が携帯電話であり、使わなくなったガラケーを逆関節にへし折ってやった。  飲み仲間の小林さんが、江東区の洲崎で『立肉屋』という店をオープンさせる。場所は洲崎パラダイス赤信号で、轟由起子が営む千草(廃業したが現不動産屋)の隣である。プレオープンにお邪魔してきた。御祝いに、前日撮影した店内に古今亭志ん生を座らせた写真を進呈。これを飾っておくと〝おじゃんにならない〟

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何年か一度、『悪名』『兵隊やくざ』を一通り観るが邦画といえば、一社選ぶとしたら大映である。子供の頃12チャンネルで良くやったていたし、映画館でも良く観た。ガメラや大魔神などは子供がやりたい放題。スクリーンの前にむしろが敷いてあり、そこに寝転がって眺めた事さえあるが、さすがに近過ぎ下過ぎて観られたものではない。大映映画は、入力オーバー気味で音がバリバリいってるように聞こえ、小学校からの友人もそういっていたが、それは気のせいらしい。 特に増村保造監督が好きだった。下手でも良いからセリフははっきり、は後の大映ドラマに引き継がれていた。俳優では市川雷蔵、勝新太郎、田宮二郎、若尾文子ファンであり、以前母から若尾文子の芝居のチケットが入ったから、と誘われたが、イメーシが壊れても、と拒否、数年前に、近所の文化センターに来たときは、わざわざ後ろの席に座ったが、これだったらもっと前に座ればよかった、と思った。 先日ユーチューブで『悪名』を観ていて、最近亡くなった八千草薫が売春婦役で出ていた。おっとりした役ばかりが印象にあったが、なんでもできるんだな、と感心。室内のシーンで、そういうば昔の家は、皆こうしていたな、とさっそく。

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次号の『タウン誌深川』では、江戸から明治ヘの重要人物について書いた。いつになく真面目な出だしでたまにはこんな感じで、と思わなくはなかったが、中盤で耐えられなくなり失速。結局、途中から子供の頃の、お隣のおばちゃんの話になってしまった。まあ、歴史上の事は、そういう事を書く人に任せておけば良いだろう。 お隣のおばちゃんには、実にお世話になった。子育てが初めての母は子沢山のおばちゃんが心強かったという。父が脱サラして共働きとなり、兄妹を鍵っ子にしたという事もあったろう。妹は寂しかったそうだが、私は欠片もそんな気になった事はない。放っておいてくれれば好き勝手している。未だにそうだが。 遊んでいて喉が渇くと気が急いて、早く遊びに復帰したいものだから、数メートル手前のお隣の台所に勝手に上がり込み、真鍮製の蛇口に針金でブラ下がっている、赤いアルマイトのコップで水を飲んだ。昔は“鉄管ビール”といったが、水道水は、うちのメッキの蛇口で飲むより、お隣の真鍮の蛇口の方が明らかに美味かった。 ただ今、東京オリンピック以前の東京化計画を進めており、掃除機も買わず、ホウキとブリキのチリトリという有様である。お隣のおばちゃんを思い出して、台所の蛇口をじっと見つめる私。こんな事がやたらと詳しい、大手ゼネコンの元部長殿がいるから、今度聞いてみよう。

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少々風邪気味なこともあったが、夜中に目が覚めたこともあり、十一時に起きる。引っ越し以来、早寝早起きが続いていたが。おかげで一日三食ほぼ時間通りに食べる、という私にはあり得ない事であった。それが良い事なのかは実感はない。ここのところ朝は塩麹と海苔にごま油のお粥で、下手すると暗いうちに目が覚めて、朝食をとると昼食までが長かったが、腹持ちも良く。 千葉の従姉妹が、母方の祖母の戦前物の糠床を保持している。以前、糠を分けて貰ってなかなか上手くいったのだが、個展をきっかけに挫折。しかし、今だったら自信がある。あるのだが、まだ時期尚早であろう。何が、とは言わないが、まだ先にやっておかなければならない事がある。 そういえば引っ越し早々、はりきって備えたゼンマイ式柱時計がすでに止まっている。目の前の一つの事にしか責任が持てず、陶芸家の道がなかった私である。せめて家の中だけでも上手くやって行きたい。柱時計が止まってしまうようでは、糠床はまだ早いということであろう。

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三重県名張市は江戸川乱歩の生誕地だが、在住の中相作氏より、私の乱歩を表紙に使って頂いた著書を御恵投頂き、買って来たばかりの電気カーペットを腹下に、名張の酒を飲みながら拝読した。 乱歩生誕125年だそうである。“二銭銅貨を新青年で精読する”乱歩のデビュー作を改めて精読し、中学生になり配本が始まった講談社版江戸川乱歩全集により大人向け乱歩を読み、私の道筋が決まってしまった事についてあれこれ思い出した。 “乱歩にとって秘密とは、人間の内面や現実の背後に秘められている奇怪で異常な真相にほかならない。それを垣間見ようとして乱歩は秘密ヘの傾斜を深め、小説作法は探偵小説という規範から逸脱して、郷愁と恐怖と官能に彩られた独自の作品を開花させてゆく。”とある。これこそが、まさに中学生の私が乱歩にはまった理由であり、犯人捜しに頭を使うような読書はまっぴらと、探偵小説ファンになることなく、並行して谷崎潤一郎を授業中も耽読する事になり今に至っている。ボロボロになった講談社版の挿絵には横尾忠則さんにサインをしていただいた。

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こう寒くなってくると寝床でシミジミと熱燗といきたくなる。撮影に使った行灯はあるし、火鉢も鉄瓶もある。以前、試したことがあるがなかなかイメージ通りには行かなかった。シミジミするためには頃の良い酒器のサイズというものがある。大ぶりな酒器では燗がつきにくいし趣に欠ける。泉鏡花なんか腹這いになって読みながら、お新香くらいでやっている最初のうちは良かったが、燗が間に合わなくなる。結局レンジでチン、ということに。わざわざ寒い部屋で布団の中だけヌクヌクが良いわけで、台所に立つたび酔いが冷める。もっと容量が大きくないとダメだ、ということになり、結局あぐらをかいて飲み始める。そもそも鏡花を読みながら飲もうという了見が良くない。と鏡花に八つ当たり。その使い物にならないお銚子は即燃えないゴミ行きとなった。巨乳の女性が可愛いブラジャーがないと嘆く感じであろうか。 先日、学生時代に制作した一升以上入る徳利を四十年ぶりに見て、山賊体質の私が寝床で鏡花などとスカした真似をしようというのがそもそもの間違いであると思う。しかし私も同じ間違いを繰り返すほど馬鹿ではない。シミジミと日本酒をチビチビやっているように見せかけ、実は中身は芋焼酎を生で、とすでに次の策は考えてある。それなら可愛いブラジャー、いや酒器でO.K.である。ヘンといえば、一体私は何に対して見せかけよう、というのであろうか。こんな調子であるから“独身者の部屋はノックしないで開けるな”という。

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昔は感度が低く、引き延ばしができないオイルプリントのために大判カメラを使い、古典レンズを集めた。しまいには水晶製の、おそらくカール・ストラスが1916年に訪米中のニジンスキーを撮影したと同じソフトフォーカスレンズを入手した。そんな私であったが幾年月。現在落ち着いたのが中古のデジカメに、それに付いていたズームレンズである。 縮尺の違う物を画面に配するにはズームレンズに限る。さらに切り抜く都合で、レンズの味など不要である。フォトショップも切り抜いて貼り付けるだけなので、余計なエフェクトは必用がない。 度々書いているが、私の原点は子供の頃、頭に浮かんだ事は何処へ行ってしまうのか。それを可視化して、やっぱり在った。と確認するのが私の創作である。数年前、意味も良く解らないまま陰影を無くした作品の制作を始め、ある日頭の中のイメージに陰影が無いことに気付き、スーパーの袋を落としそうになった。陰影がないくらいなので、フィルムの粒子なんて物など在るはずもない。私は長年、外の世界にレンズを向けず、眉間にレンズをあてる念写が理想だ、といいながら外の世界に在るかのような作品を制作してきた。気が付くのが遅かったが、まあなんとか間に合った。だかしかし、イメージを取り出すにしても、あまりに愛想がない。そこで和紙ヘのプリントである。田村写真に出かけ、プリンターから出て来るプリントを最初に見て、田村氏が笑ったら成功というのが最近の流れである。

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