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日常よく使われる英語表現を毎日紹介します。毎日日本時間の午前9時までに更新します。英文執筆・翻訳・構成・管理:上杉隼人

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TO TAP, TO HELM

2019-05-02 08:40:19 | T

 あの柴田元幸先生もこのAsahi Weeklyのエッセイで、翻訳についてこう話されている。

 https://blog.goo.ne.jp/getupenglish/e/aed87a2b2137addf98081c0799efd7dd

 ……しょせん英語は自分にとって外国語、おかげで「読めるだけでうれしい」状態がいまなお続いている。この「嬉しさ」は翻訳という仕事をする上でものすごく重要だと思う。これを感じなくなったら、さっさとやめて隠居する潮時だと思っているのだが、なかなかなくならない。

 柴田さんですらそうなのか、と思うとほっとするし、うれしく思うが、わたしの場合は「読めるだけでうれしい」と感じることはほかの翻訳者よりずっと多いと思う。英語はまだまだ勉強中だし、おそらく終わることはない。

 たとえば、今秋翻訳刊行予定のThe Moviemaking Magic of Star Wars: Creatures & Aliensに、以下の表現がある。The Last Jediについて触れた箇所だ。

 When writer-director Rian Johnson was tapped to helm The Last Jedi, he had a very clear vision for the creatures. He communicated his vision to Neal Scanlan, creature supervisor for the film.

“The direction I gave Neal,” recalls Johnson, “was to always mix an element of grotesque with beautiful.”

 ここで動詞helmは「…の舵取りをする」という意味で使われるが、状況によっては「(映画を)監督する」の意味で使われる。なぜここで使われているかと言えば、その前に「映画を監督する」の意味でいちばんよく使われるdirectの名詞directorを使ってしまっているからだろう。英語では日本語以上に重複を避けようとする気持ちが強いので、普通の言い方をするのであれば、違う語を充てたいと思うはず。

 そして動詞tapの使い方にも注意したい。この語は基本的には「軽くとんとたたく[打つ]」の意味であるが、以下のOxford Advanced Learner’s Dictionaryの定義にあるように、普通は受身形で、「誰かを選んで適当な仕事を命じる」の意味でも使われる。

 6 [T, usually passive] tap sb (NAmE) to choose sb to do a particular job

 ● Richards has been tapped to replace the retiring chairperson.

  信頼厚き研究社の『新英和大辞典』には以下の定義と用例がある。

 《米》 〔クラブの会員に〕選ぶ, 指名する 〔to, for〕.

 ・tap a person to [for] membership 人を会員に選ぶ.

 上の部分を訳せば、こうなるだろう。

 映画監督、脚本家のライアン・ジョンソンは『スター・ウォーズVII』のメガホンを取ることを打診されたとき、クリーチャーに関して明確なイメージをもっていた。本作でもクリーチャー制作を担当するニール・スキャランに、自分の考えを伝えた。

「スキャンランに出した指示はいつも同じで、グロテスクと美しさの要素を混ぜ合わせてほしいということだ」

 英語は一生勉強をつづけたいし、ほかに特にすることがないので、そうなるだろう。

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