中国製農薬入り餃子に炙り出された、ボロボロ出てくる日本の危機管理無能力

2008-02-03 10:19:10 | Weblog

 昨年12月28日に千葉市の36歳の主婦が中国製ギョーザの食後、嘔吐・下痢の症状が出て救急車の出動を依頼、一旦救急病院に搬送。続いて119番が同じ家から通報を受け、二女を搬送。

 救急病院から移送された市立病院の医師が食中毒の疑いを把握しながら、食品衛生法に基づく保健所への届け出を怠る。

 当主婦は次の日、購入先の生協に経緯を訴える。訴えを受けた生協は事食品に関することとしてだろう、商品の残りを回収し、千葉保健所に報告すべく電話したが、保健所が正月休みに入っていてつながらず、メールで主婦の訴えを伝える。

 生協側は自前の検査センターで検査、異臭がしたので、外部機関に再調査を依頼したが、下痢原因の特定に至らなかった。

 生協はここまで一応の「危機管理」を働かせている。

 保健所が生協からのメールを開いたのは正月休み明けの1月4日。主婦は食べ残しの餃子を千葉市保健所に持っていき、異物混入の検査を求める。だが、流通状況や同様の苦情についての調査を約束するが、生協が微生物検査する予定を伝えて、ギョウザ自体の検査を断る。

 保健所は地域住民の健康や衛生を支える公的機関である。健康や衛生に基本的に関わる食品状態を検査せずに流通状況や他の苦情の調査から手をつけるのは危機管理意識が全く欠けていたからではないか。その苦情が最初の報告例であったなら、次の苦情が寄せられるまで単に流通状況を調べたで終わる可能性が発生するからだ。

 事実そのとおりになったが、想定しない危機に備えることも危機管理であるなら、他人任せの検査ではなく、自らが食品検査から取り掛かって流通関係及び他の苦情の有無を同時進行で行うべきだったろう。

 児童相談所が親の子供に対する虐待を把握していながら、自宅訪問はせず、電話で応対するだけの座仕事で済ませて子供を死なせてしまう横着な危機管理を思わせる。

 自ら積極的に動く危機管理意識を備えていなかった。また地域住民の健康や衛生を支える公的機関であるなら、正月休みに保健所に交代で詰めろなどとは言わない、転送電話という便利な利器が存在する今の時代、そのような設備で備える危機管理意識ぐらいはあってもいいのではないだろうか。全員が全員正月休みに海外旅行だ、国内温泉巡りだするわけではあるまい。例えそうであっても、転送は携帯電話にもつながるのだから、他の機関に連絡するとか、その場その場で臨機応変な対応を心がける心の備えだけは持つべきだろう。

 主婦のみが危機管理行動を取った。それが危機管理意識からではなく、あくまでも例えとして、少しでもカネにしようという不純な動機だったとしても、保健所側は結果的に無駄骨となることがあっても、地域住民の健康や衛生に備えた危機管理として扱う義務と責任を負っているはずである。常々言っているように、「危機管理」とは常に最悪のケースを想定して、最悪を回避するよう備え、行動することだからである。結果としてたいしたことが起きずにカネばかりかかったとしても、人間生命が最悪の状態に見舞われなかったことを以ってよしとすべきだろう。

 1月5日には兵庫県高砂市で同じ中国の食品製造会社製のギョーザを食べた家族3人がが食中毒を起こしている。この件のイキサツをちょっとややこしいから2月1日(08年)の読売新聞インターネット記事≪都、情報生かせず・FAX送信漏れも…中国製ギョーザ≫をそのまま引用してみる。

 <中国製ギョーザ問題
 今回の中国製冷凍ギョーザの問題では、関係機関の情報がうまく集約されず、対応の遅れにつながったことが明らかになってきた。
 東京都や品川区によると、兵庫県高砂市で1月5日、JTFが中国から輸入した冷凍ギョーザを食べた家族3人が、有機リン中毒を疑わせる症状を発症しているとの連絡が、同7日に同県から都に寄せられた。
 都はこの情報を、JTFの本社がある品川区に伝えて調査を要請し、同区保健センター職員がJTFの食品管理室に電話で聞き取り調査を行った。
 その際、JTFからは、〈1〉2007年6月、消費者から「ギョーザを食べて体調不良になった」との電話がJTFの販売店にあった〈2〉同年8月、居酒屋から「ギョーザを食べた客が味がおかしくて吐いた。下痢もしている」と届け出があった――ことが報告された。品川区の担当者は都にもこの情報を伝え、兵庫県にも連絡された。
 しかし、行政側が兵庫県のケースとこの2件を、結びつけて対応を取ることはなかった。その後、22日には、中国の同じ工場で製造されたギョーザを食べた千葉県市川市の家族5人が、吐き気や下痢の症状で病院へ搬送される事故が発生。都と品川区は30日になってJTFに立ち入り調査に入り、警察当局やJTなども事実を発表した
 一方、都は31日、7日に兵庫県から連絡を受け、品川区側に調査を依頼した際、農薬中毒症状を示す書類を誤ってファクスしていなかったことを明らかにした。都は食中毒が起きた状況などを示した4枚の報告書をファクスで受け取り、同区保健センターにJTFへの調査を要請するとともに、この報告書もファクスした。しかし、「患者の血中コリンエステラーゼ活性が低くなっている。縮瞳(しゅくどう)もみられる」と、農薬中毒を疑わせる症状を記載した4枚目の報告書を送らず、誤って問題の商品の写真を送付してしまったという。>・・・・

 昨年来、一昨年来から賞味期限切れ食品の再利用、腐った肉を混ぜた食品といった食品に関わる偽装・偽造問題が頭に記憶できない程に多発していながら、何ら学習し得ていない食品に対する危機管理意識の希薄さ。例えJTフーズの報告した2件と兵庫県のケースが関連はなかったとしても、関連の有無の調査を経た上での結論とすることが危機管理上の手続きのはずが、そこまでは頭が回らない危機管理不足。

 千葉市の保健所は1月21日になって、1月4日にギョウザを持ち込んで調査を依頼した主婦に対して「ギョーザと女性らの中毒に因果関係は認められない」とする流通状況などの調査結果を伝えて、一旦調査を打ち切ることを報告したと中日新聞≪保健所が検査断る 千葉市の被害女性、ギョーザ持参≫(08年2月2日)が伝えているが、流通状況に食品の欠陥の判定を任せること自体にその危機管理の程度を窺うことができる。

 ホームグランドの千葉市内に限った流通状況の把握だったのか、翌1月22日に上記「読売」記事にもあるように千葉市から習志野市を挟んで東京方面に20キロほど離れた市川市で同じ中国製ギョーザを食べた一家5人が中毒となり、5歳の女児が一時重体に陥っている。

 最初は残留農薬が原因に疑われたが、混入していた有機リン系農薬成分メタミドホスの濃度の濃さから何者かの故意による混入の疑いが有力になってきた。兵庫県の事件のギョウザの袋に小さな穴が開けてあって、内部のトレイにまで達していたと言う。トレイは皿の役目を果たすものだから製品の底に位置した場所に置く。そこからメタミドホスを混入したとするなら、人目から隠すために裏側を狙ったということだろう。

 悪意を持った人為的犯行ということなら、それが中国の食品工場内で起きた事件であっても、和歌山毒物カレー事件と同列の犯行者の悪意の程度に応じることとなって防ぐに困難な事件の範疇に入り、問題はやはり事後の対応――危機管理が重要な問題となる。

 日本人の危機管理無能力は今に始まった事柄ではない。何事も上は下を従わせ、下は上に従う権威主義に災いされた機械的になぞるだけの行動様式・思考様式がその機械性を離れて柔軟、かつ想像的(創造的)に臨機応変に行動できないことから発している。だからこそ、マニュアル人間だとか横並び症候群だとかあり難い名前をつけられる。

 マニュアル人間であっても、マニュアルを忠実になぞって行動していればそれ程大きな間違いは起きないように見えるが、あくまでもなぞり思考だから、これまでの食品偽装・食品偽造事件で何か重大な健康障害を起こしていれば、そのことに備えた姿勢は用意できるが、そういった前例がないケースではそれをなぞってインプットする機会を逸するから、当然のこととしてなぞるべきマニュアルが存在しないことになり、まさしく羅針盤を失った船同然に役目上与えられている責任を果たせなくなる。

 尤も前例があってそのことに適切に対応するマニュアルをつくり上げたとしても、機械的なぞり思考であることに変わりはないから、前例に少しでも食い違う新たな事態に対してはマニュアル自体が食い違うことになって、なぞりに不適合が生じ、それがそのまま危機管理行動の不適合となって現れたりする。

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