権威主義は個人が自律的存在であることを許さない

2008-02-15 05:46:27 | Weblog

 プーチン・プリンスホテル・前時津風親方・札幌介護タクシー代詐取元暴力団員、人吉市職員の生活保護書体名簿漏洩etc.etc

 誰もが理解していることだが、思想・信教の自由、言論の自由、集会の自由、移動の自由等々の基本的人権の保障こそが個人が自律的存在であることを保証する。国家権力や権威主義的強権的他者の支配から個人が自律的存在として自由に活動することを保障する。

 と言うことは、権威主義は基本的人権の敵として存在する。

 「自律的存在」とは簡単に言うなら、他からの支配を受けずに自らの自由意志と責任で行動することを言う。そのような人間活動を基本的人権の抑圧を通して権威主義は否定する。

 前時津風親方は時太山に対して権威主義的強権的他者として君臨し、それは独裁的な態度にまで高まって時太山に許されている自律的存在性を抑圧し、抹殺すると同時にその生命まで抹殺した事例である。

 次のような『朝日』記事がある。

 ≪「ロシア、法が完全に欠如」 元石油王が会見≫(08.2.9/asahi.com)

 <脱税などで有罪判決を受け、別の罪で追起訴されたロシア元石油最大手ユコスのホドルコフスキー元社長(44)が、東シベリアのチタで6日に開かれた裁判の休憩中に被告席から英紙記者らの質問に答え、敵対したプーチン大統領体制下のロシアを「法の支配が完全に欠如している」などと激しく批判した。
 7日付の英紙フィナンシャル・タイムズによると、元社長は「中国も権威主義体制だが、一定の法治主義が機能している。ロシアよりずっとましだ」と強調。3月の大統領選で当選が確実視されるメドベージェフ第1副首相が「法の支配確立」を唱えていることについて、「実現はきわめて困難だろう」と切って捨てた。
 一方で、「ロシアは長期的には民主的な欧州国家への道を歩むだろう」と希望も語った。
 元社長は、野党に資金援助をした後、脱税などの摘発を受け、ユコスも解体・再国有化された。その後、ユコスの販売利益を横領した罪などで追起訴された。現在は、別のユコス元幹部が拘置所内でエイズ治療を十分に受けられていないとして抗議のハンストを続けている。>・・・・・

 中国とロシアのどちらが権威主義的かケースバイケースによって違ってくるだろうが、ロシア大統領のプーチンの政策は民主主義の立場から見たら、かなり目に余るものがあると言える。石油で得ている莫大な資金でロシア経済を立て直した実績を背景にメディア規制、国家管理による経済統制、非政府組織(NGO)に対する国家統制、中国と同様に似た者同士の立場からではあろうが、世界の民主主義を否定し、強権的独裁国家体制を肯定することになるそれら国々との友好外交と結果としてのそれら国内の民主化運動抑圧の間接的な幇助・加担等々。

 ロシアのそのような内政面の強権的規制と民主主義的に無節度な外交によって自らになおのこと権力と資金を集中させて権威主義体制を強めていく。そういった局面に現在のロシアはあるようだ。

 昨年10月(07年)にロシアを訪問したライス米国務長官はロシアの人権状況を批判している。

 ライス「大統領府に権力が集中しすぎている。誰もが司法の完全な独立を疑問視している」(≪ライス米国務長官、ロシアの人権侵害を非難≫AFPBB News)

 日本の主要閣僚が外国を訪問して、その国の民主主義に反する国家体制を批判するのはいつの日のことなのだろうか。その違いは物言う大人と黙したままの子供との差がある。

 米映画監督のスティーブン・スピルバーグは「私の良心がこの仕事を行うことを許さなかった。私の時間とエネルギーは、五輪のためでなく、(スーダン)ダルフール地方で続く、筆舌に尽くしがたい人権侵害を終わらせるために、費やされるべきだ」(08.2.13/読売新聞インターネット記事≪「良心許さない」スピルバーグ監督が五輪文化芸術顧問辞退≫)と北京五輪開閉会式の文化芸術顧問を辞退する声明を発表した。

 同じ日付けのロイター通信の≪五輪=ノーベル平和賞受賞者ら、ダルフール問題で中国政府に書簡≫はスピルバーグの言葉を次のように伝えている。

 <「スーダン政府の主要な経済・軍事・政治パートナーとして、また、国連安全保障理事会の常任理事国として、中国は公正な和平をダルフールにもたらすために貢献する機会と責任を有している」と指摘。さらに、その責務を果たさなければ、残虐行為を続けるスーダン政府を支援していることを意味すると中国政府を批判した。>

 下線部分は国と一企業の違いはあるが、新高輪プリンスホテルが右翼の恫喝に屈したかその影に怯えたかして右翼の要求に添ったため、結果的に右翼の思想・信教の自由否定の体質、言論の自由抑圧体質を支援したことを意味するのと同じ構図を踏む事例であろう

 ライスは「ロシア独自の制度を作ることが市民団体の目的であると確信する」と述べているが、その仕組みについては「個人の解放と自由、信仰の自由、および集会の自由などわれわれが共有する万国共通の価値観を重んずるものでなければならない」(上記AFPBB News)と念を押している。

 要するにプーチン・ロシアは「個人の解放と自由、信仰の自由、および集会の自由」を重んじていない国家、逆に国家統制を強め、個人が自律的存在であることを許さない権威主義国家となっていると批判しているのである。

 国家権力だけが個人が自律的存在であることを許さないのではないことは既に触れた。先に例を挙げた新高輪プリンスホテルにしても右翼の恫喝に直接屈して、あるいは右翼の影に怯えて間接的に屈して一旦契約した日教組の会場使用を拒否したことで自分で自分の思想・信教の自由、言論の自由の首を締め、そのことが本人だけのことで収まらず、日教組という他者の思想・信教の自由、言論の自由まで封じて悪影響を与えた構図は権威主義的強権的他者の支配が個人が自律的存在であることを許さない事例とすることができる。

 生活保護世帯の元暴力団組員の夫妻と夫妻に協力した介護タクシー会社の役員が介護タクシー代金を約2億4千万円も不正受給していたとして2月9日(08年)に逮捕されているが、その事件にしても北海道滝川市の市職員が夫の元暴力団組員だとするコワモテ・威嚇に屈してその男を権威主義的強権的他者扱いし、その支配に従うことで自分から自分の自律的存在性を放棄した例であろう。その結果自己の言うべき「言葉」を封じ込めさせる自らが持つ言論の自由の自己抑圧を行うこととなって2年近くの間、請求されるままに満額支払い続けた。

 熊本県人吉市の市の男性職員が借金をしているヤミ金融業者の強請りに屈して生活保護受給者名簿を秘密裏に渡していた例は借金の弱みがヤミ金融業者を権威主義的強権的他者に変じせしめ、その支配に従って自分が自律的存在であることを自分から放棄した例と言える。

 その職員が剣道連盟に所属する剣道者だとは驚きである。年齢は49歳という十分に大人の年齢であり、何年剣道に打ち込んでいたのか、礼節を教える、強い意志を育むといった剣道訓練の趣旨をいとも簡単にタテマエに変質させてしまっている。

 それが権威主義的国家権力でなくても、権威主義的強権的他者の存在ののさばりを許すことは自らの思想・信教の自由、言論の自由等を自ら封殺することとなり、結果として在るべき姿としなければならない自律的存在性を自分から放棄する場面に遭遇しなければならなくなる。

 そのような場面が世の中の大勢を占める方向に進んだとき、戦前の軍国主義国家と類似の国の姿を取ることになる。戦前型国家主義者である安倍前首相の「美しい国 日本」はそのような国の姿を言うのだろうが、国民にとっては自由抑圧装置そのものの国の姿となる。

 そうさせないためには国家権力による権威主義的態度の現われへの監視と同時に権威主義的強権的他者の存在の威嚇に屈しない強い態度を例えささやかな事例であっても、如何なる場面でも示すことが必要になる。
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 参考までに引用。

 ≪ライス米国務長官、ロシアの人権侵害を非難≫(07.10.14/AFPBB News)

<【10月14日 AFP】ロシアを訪問中のコンドリーザ・ライス(Condoleezza Rice)米国務長官は13日、ウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領への権力集中が人権侵害を招いていると非難した。
 ライス長官は会見で「大統領府に権力が集中しすぎている。誰もが司法の完全な独立を疑問視している」と述べた。
 長官はビクトル・ズブコフ(Viktor Zubkov)首相、ドミトリー・メドべージェフ(Dmitry Medvedev)第1副首相、およびセルゲイ・イワノフ(Sergei Ivanov)第1副首相との会談で人権問題を既に話し合い、セルゲイ・ラブロフ(Sergei Lavrov)外相との会談でもこの問題を取り上げることを明らかにした。
 ライス長官はまた、首都モスクワ(Moscow)の米大使館で人権擁護を掲げる市民団体の代表らと会談し意見を交換した。
 会談冒頭で長官は「ロシア独自の制度を作ることが市民団体の目的であると確信する」と述べたが、その仕組みについては「個人の解放と自由、信仰の自由、および集会の自由などわれわれが共有する万国共通の価値観を重んずるものでなければならない」との考えを示した。
 長官は今回のロシア訪問期間中に人擁護団体の指導者8人と会談。ロシアでは今年12月に総選挙が実施され、来年3月には任期切れとなるプーチン大統領の後任を決める大統領選挙が行われる。>
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 ≪「良心許さない」スピルバーグ監督が五輪文化芸術顧問辞退≫(08.2.13/読売インターネト記事)

 <【フェニックス(米アリゾナ州)=臼田雄一】米映画監督のスティーブン・スピルバーグ氏は12日、就任を要請されていた北京五輪開閉会式の文化芸術顧問を辞退する声明を発表した。
 スピルバーグ氏は声明で「私の良心がこの仕事を行うことを許さなかった。私の時間とエネルギーは、五輪のためでなく、(スーダン)ダルフール地方で続く、筆舌に尽くしがたい人権侵害を終わらせるために、費やされるべき」などと辞退理由を説明している。
 スピルバーグ氏は昨年4月、胡錦濤国家主席宛に、公開書簡を送り、スーダン・ダルフール紛争を早急に解決するよう、要請。7月には、対応が改善されないとして、同顧問辞退を示唆した。その後は、北京五輪組織委と交渉が途絶えていたが、北京五輪組織委の幹部は読売新聞に対し、「同氏とは、開閉会式演出案の知的財産権を巡って、そもそも合意できていなかった」と話していた。
 ロイター通信によると、中国はスーダンへの最大の武器輸出国。>
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 ≪五輪=ノーベル平和賞受賞者ら、ダルフール問題で中国政府に書簡≫(08.2.13/ロイター)

 <[ワシントン 12日 ロイター] ノーベル平和賞受賞者らが12日、中国の胡錦濤国家主席に書簡を出し、ダルフールでの残虐行為を辞めるようスーダンに圧力をかけることで五輪の理念を支持するよう求めた。
 ダルフール紛争解決への支援を促す団体のイベントにあわせて公表された同書簡では、「スーダン政府の主要な経済・軍事・政治パートナーとして、また、国連安全保障理事会の常任理事国として、中国は公正な和平をダルフールにもたらすために貢献する機会と責任を有している」と指摘。さらに、その責務を果たさなければ、残虐行為を続けるスーダン政府を支援していることを意味すると中国政府を批判した。
 同書簡には、東ティモールの独立に尽力したカルロス・ベロ氏、イランの民主運動家シリン・エバディ氏、グアテマラの人権活動家リゴベルタ・メンチュウ氏ら多数のノーベル平和賞受賞者のほか、政治家や五輪メダリスト、芸能人らが署名した。>
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 ≪人吉市 市職員がヤミ金に名簿 生活保護者286人分など 「借金あり断れず」≫>(08.2.13/西日本新聞インターネット記事)

 <熊本県人吉市は12日、同市福祉生活部福祉課保護係の男性職員(49)が借金をしているヤミ金融業者の求めに応じ、生活保護の受給者名簿245世帯286人分を渡していたと発表した。市は同日、生活保護世帯の調査を始めた。これまでに被害の報告はないという。市は職員の懲戒処分や地方公務員法(守秘義務)違反での刑事告発も検討する。
 市によると、職員は生活保護を担当するケースワーカー。昨年11月、ヤミ金融業者から名簿を渡すように求められた。職員は係長とケースワーカーしか知らないパスワードを使ってコンピューター端末を操作。氏名、生年月日、住所などが書かれた受給者名簿を印刷し、ファクスで業者に送った。
 また、職員は自身が所属していた人吉球磨剣道連盟の会員名簿189人分もファクスで送っていたという。
 市によると、職員が11日、市職員組合の委員長に相談して漏えいが発覚した。職員は消費者金融への返済が滞り、昨年5月に初めてヤミ金融業者から2万円を借り、これまで約800万円を業者に支払った。職員は「ヤミ金を使っていることをばらすと脅された。借金があり断り切れなかった」と話しているという。
 同市の田中信孝市長は「意図的な情報流出で深刻に受け止めている」と陳謝した。>

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