菅新首相は「沖縄独立論」で沖縄県民を唆して鳩山前首相のように打っちゃりを食らわすのか

2010-06-17 05:53:58 | Weblog

 《菅首相「基地問題どうにもならない」「もう沖縄は独立した方がいい」と発言 喜納参院議員が暴露》MSN産経/2010.6.15 23:57)――
 
 菅新首相が昨年9月の政権交代直後、一議員ではなく、副総理・国家戦略担当相の任に就いていた身で、平和運動家であり、「Wikipedia」が「ウチナー・ポップを代表する音楽家と紹介している、62歳の民主党の喜納昌吉(きな・しょうきち)参院議員(党沖縄県連代表)に次のように語ったと、鳩山前政権末に記した自著《沖縄の自己決定権-地球の涙に虹がかかるまで》未来社)で明らかにしているという。

 インターネットで調べたところ、発行日は2010年5月31日、鳩山前首相が辞任表明したのは6月2日午前開催の民主党の両院議員総会。

 記事が著作に書いてあると紹介している菅新首相の発言。

 「基地問題はどうにもならない」

 「もう沖縄は独立した方がいい」

 記事は次のように解説している。

 〈喜納氏は政権交代後、沖縄の基地問題に関して菅首相と交わした会話を紹介。喜納氏が「沖縄問題をよろしく」と言ったところ、首相は「沖縄問題は重くてどうしようもない。基地問題はどうにもならない。もうタッチしたくない」と漏らし、最後は「もう沖縄は独立した方がいい」と言い放ったという。〉――

 このような菅新首相の沖縄観に対する喜納氏自身の著書の中で明かしている感想も記事は記している。

 「半分ジョークにしろ、そういうことを副総理・財務相であり、将来首相になる可能性の彼が言ったということ、これは大きいよ。非公式だったとしても重い」――

 そして記事自体の論評。

 〈首相は23日に沖縄訪問を予定しているが、就任前とはいえ、国土・国民の分離を主張していたことは大きな波紋を呼びそうだ。〉――

 喜納氏は自身のTwitter、《kinashoukichi》で菅発言について次のように書いている。

 〈菅さんの発言は、総理就任以前のものだ。菅さんは総理に就任して決定権を持った。菅さんなら、沖縄県民が望む未来像を描いてくれるかもしれない。一国ニ制度も含めて、沖縄の自立、独立を国民的に議論する時期がきたのだと思う。〉(6月16日午後2時ごろのツイート。)

 喜納議員をしてこうまでも期待を抱かせた以上、「ジョークで言ったに過ぎない」と逃げることができるだろうか。もしジョークだとした場合、それを真に受けた喜納議員自身を悪者とすることになる。ジョークを真に受けた愚か者だとすることになる。

 私自身はかねてから「沖縄独立論者」で、いわゆる“沖縄の独立のススメ”をブログなどに書いているが、例え副総理・国家戦略担当相といった閣僚の身であっても、「沖縄独立論」を掲げるのは本人の思想・信条としてあるものだろうから、一向に構わないと思う。政治家である以上、それを政治的に具体的な形に持っていくかどうかにかかっている。

 勿論、内に秘めた思想・信条と言うものある。だが、沖縄選出の国会議員に、「もう沖縄は独立した方がいい」と口にした。

 ロシアとの間で帰属問題が膠着状態となっている北方四島にしても、本来的な原住民はアイヌ人なのだから、アイヌ独立国家としての返還を求めるべきだが私自身の考えで、アイヌ人への返還という形を取ることによって、膠着状態に一石を投じる大きなキッカケになると信じている。

 但し、菅直人の「沖縄独立論」には問題が二つある。その一つは、喜納議員をして〈菅さんなら、沖縄県民が望む未来像を描いてくれるかもしれない。一国ニ制度も含めて、沖縄の自立、独立を国民的に議論する時期がきたのだと思う。〉と期待を抱かしめたように、その他大勢の沖縄県民に期待を抱かせた場合である。

 2007年実施の沖縄県民を対象とした調査であるが、琉球大の林泉忠(リム・チュンアンティオン)准教授らによる「沖縄住民のアイデンティティ調査2007」「琉球新報」記事――《政府の施策、68%「不満」 沖縄アイデンティティ調査07》(2007年11月29日)が伝えている。

 「沖縄独立」の是非を巡る沖縄住民の見方

 「独立すべき」      ――20.6%
 「独立すべきではない」  ――64.7%
 「沖縄住民が決めるべき」 ―― 0.8%

 となっていて、「独立すべき」は4分の1に満たないが、

 「沖縄住民のアイデンティティの基本構造」

 「沖縄人」    ――41.6%
 「日本人」    ――25.5%
 「沖縄人で日本人」――29.7%

 となっていて、沖縄人であることにアイデンティティを置いている人数が41.6%、沖縄人であることを主体として日本人でもあることをアイデンティティとしている人数が29.7%。両者を合わせると、濃淡の差はあっても、沖縄人であることを意識している人数が70%を超える。

 「日本政府の沖縄に対する姿勢」

 「友好的」            ――15.3% 
 「どちらかというと友好的」    ―― 6.7%
 「友好的ではない」        ――64.7%
 「どちらかというと友好的ではない」――10.9%
 「どちらとも言えない」      ――15.3%

 「政府の沖縄施策に満足しているか」

 「満足」             ―― 9.9%
 「どちらかというと満足」     ―― 8.0%
 「どちらとも言えない」      ―― 8.5%
 「満足していない」        ――56.5%
 「どちらかというと満足していない」――11.8%

 過去2年の調査も踏まえた林准教授の分析。

 「時には沖縄人と日本人の間に葛藤(かっとう)する姿も見られるが、沖縄人はあくまで日本人という枠組みの中で存在することで安心感を覚えているようだ」

 記事は最後に沖縄県民の独立意識に関して次のように解説している。

 〈沖縄独立の是非をめぐっては独立に否定的な人は64・7%に上るが、一方で20・6%が独立を支持している。否定派は経済的理由を最大理由に挙げ、独立派は「政治的・経済・社会的、歴史的経験が本土と違う」ことを挙げた。〉――

 例え「独立すべきではない」が64.7%の大勢を占めていたとしても、あるいは林准教授が言うように、「沖縄人はあくまで日本人という枠組みの中で存在することで安心感を覚えているようだ」としても、日本政府に関する調査結果は何かしらのキッカケによって独立への期待を十分に抱かせることになる、日本及び日本政府に対して否定的意思の表れを示している。菅直人の「沖縄独立論」が独立への期待に火をつけるキッカケにならないとは限らない。

 少なくとも音楽家としても平和運動家としても他の沖縄人にそれなりの影響力を持っているだろう喜納議員をして、「菅さんなら、沖縄県民が望む未来像を描いてくれるかもしれない。一国ニ制度も含めて、沖縄の自立、独立を国民的に議論する時期がきたのだと思う」と言わしめているのである。

 問題の二つ目は、菅新首相の「沖縄独立論」が沖縄の新たな進路へのアプローチとして沖縄住民に期待を抱かせた場合、菅直人が総理大臣就任後も自身の「沖縄独立論」を沖縄の将来性に関わる自らの確固たる思想・信条として受け継ぐかどうかである。

 「ジョークだ」と逃げた場合は何をか況(いわん)やであるが、昨日のブログに書いた、6月14日の衆議院本会議代表質問で、社民党重野議員から首相の過去の安全保障観の追及を受けて、「国際状況の変化」と「内閣総理大臣として就任し責任を持った立場」上の変化を口実に安全保障観の変化に整合性を持たせたように、「国際状況の変化」が沖縄に独立問題が持ち上がった場合、東アジアの安全保障に悪影響を与える要因になるからと、立場に関しては総理大臣になったからと自らの「沖縄独立論」を封印する可能性を捨て切れない。

 安倍晋三自民党元首相のように国家主義者でありながら、首相に就任するや自らの国家主義的主張を封印し、その象徴行為となっている靖国参拝まで封印したようにである。

 菅新首相が自らの「沖縄独立論」を「国際状況の変化」と総理大臣という立場を口実に封印した場合、鳩山前首相が米軍普天間飛行場の移設を「国外、最低でも県外」と言って沖縄県民に期待を持たせながら、「国外、最低でも県外」は党の公約ではなく、自身の党代表としての発言に過ぎないと変節を演じて県内移設に舵を切り、沖縄県民を失望させのと同じく、同じ打っちゃりを食らわすことになるだろうことは容易に想像できる。

 そうなった場合の沖縄県民の政治不信はこれまでの政治不信に屋上屋を架すことになって、測り知れない無力感を与えるに違いない。

 民主党で2代続いた総理大臣がそれぞれに沖縄県民の政治不信を高めることを功績としたといったことになりかねない。

 もしもそういった大記録を樹立することになったなら、日本の政治史に記録し、後世の記憶としなければならない。

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