鳩山辞任/死者に鞭打つ

2010-06-03 04:53:42 | Weblog

   ――民主党に衆・参両院過半数のチャンスを与えよう――

 鳩山首相が辞任した。ある意味、死者となった。死者に鞭打つこととした。鳩山首相が辞任表明した5月2日午前開催の民主党両院議員総会での発言の中での言葉。

 《国民が聞く耳持たなくなった…鳩山発言全文2》YOMIURI ONLINE/2010年6月2日13時11分)(参考引用)

 様々な変化が国民の暮らしの中に起きている。水俣病もそうだ。さらには医療崩壊が始まっている地域の医療を何とかしなきゃいけない。厳しい予算の中で医療費をわずかですが増やすことができたのも、国民の意思だと、私はそのように思っている。これから、もっともっと人の命を大切にする政治、進めていかなければならない。

 ただ、残念なことにそのような私たち政権与党のしっかりとした仕事が必ずしも国民の心に映っていない。国民が徐々に徐々に聞く耳を持たなくなってきてしまった。そのことは残念でなりませんし、まさにそれは私の不徳の致すところと、そのように思っている。

 その原因、二つだけ申し上げる。やはりその一つは、普天間の問題でありましょう。沖縄の皆さんにも(鹿児島県の)徳之島の皆さんにもご迷惑をおかけしています。ただ、私は本当に沖縄の外に米軍の基地をできる限り移すために努力をしなきゃいけない、今までのように沖縄の中に基地を求めることが当たり前じゃないだろう、その思いで努力をして参りましたが、結果として県外にはなかなか届きませんでした。これからも県外にできる限り、彼ら(米軍)の仕事を外に移すよう努力をして参ることは言うまでもありませんが、一方で北朝鮮が韓国の哨戒艇を魚雷で沈没させるという事案も起きている。北東アジアは決して安全安心が確保されている状況ではない。その中で日米の信頼関係を保つと言うことが、日本だけではなく、東アジアの平和と安定のために不可欠なんだという、その思いのもとで残念ながら、沖縄にご負担をお願いせざるを得なくなった。そのことで、沖縄の皆様方にもご迷惑をおかけしています。

 「国民の心に映っていない」とは、理解されない状況を言うはずである。また、“聞く耳を持たない”とは、『大辞林』(三省堂)によると、「これ以上聞く気がしない」という意味で、ここでは耳に入ってくる政策・言葉に対しての不同意行為を示す。不同意とは理解に関わる反応を言うのだから、「国民の心に映っていない」と同様、「国民が徐々に徐々に聞く耳を持たなくなってきてしまった」も理解されない状況を言っているはずである。

 鳩山首相はその原因を普天間移設等に関わる「私の不徳」としているが、実際には国民の不同意行為の対象を「私たち政権与党のしっかりとした仕事」に置いている。自身の指導力欠如、発言の不信用性に置いているわけではない。

 「国外、最低でも県外」と言っておきながら、「できる限り、県外」と言ったと言い直したり、あるいは自身が先頭に立って発言した言葉でありながら、「民主党自身も野党時代に県外、国外移設を主張してきたという経緯がある」と民主党発の発言であるかのようにすり替えたり、相変わらずゴマカシがある。

 何よりも問題なのは、責任主体をどこに置いているかである。「私たち政権与党のしっかりとした仕事」という正当事項と対比させた「国民が徐々に徐々に聞く耳を持たなくなってきてしまった」ということだから、不当事項と看做していることになる。

 「私たち政権与党のしっかりとした仕事」の素晴らしさを国民に理解させるもさせないも偏に首相を筆頭とした閣僚、その他の指導力、実行能力にかかっているはずだが、「国民が徐々に徐々に聞く耳を持たなくなってきてしまった」と、理解しなくなったのは国民だと、国民に非を置いている。

 決して、「国民に聞く耳を持たせなくさせてしまったのは(=国民に聞く耳を失わせてしまったのは)私自身の指導力、その他の資質だ」と、このような状況に至らしめた主体を自身には置いてはいない。

 ここに首相自身の狡さを見る。

 首相は5月2日夕方の首相官邸ぶら下がり記者会見でも「聞く耳を持たぬ」発言をしている。

 《「身を引くことが国益につながると判断」2日の鳩山首相》
asahi.com/2010年6月2日20時57分)(一部抜粋参考引用)

 【議員の進退】

 ――去年7月、首相を終えた後は、政界に残ってはいけないと発言した。議員辞職する考えは。

 「私は国会議員としてのバッジを与えて頂いた、有権者が選挙で選んで頂いた。それを途中で投げ出すべきではないと。しかし総理たる者、その影響力をその後、行使しては、行使しすぎてはいけない、そのように思っています。従って私は、次の総選挙に出馬はいたしません」

 ――すぐに辞職するわけではないと。

 「次の総選挙には、出馬をいたしません」

 ――菅副首相から代表選出馬の意向が示された。菅氏を支持するか。

 「影響力をあまり行使してはいけないと、今申し上げた通りでありまして、私から誰かを指名するとかいう意図はありません。菅副総理には、当然今まで一番近くで、行動をしてくださっておった方でありますから、まず、がんばってくださいということは申し上げました」

 【同時辞職】

 ――首相から幹事長に一緒に辞めようと言ったそうだが、それは月曜の会談の際に段階で言ったのか。小沢氏の反応は。

 「月曜(5月31日のこと)、火曜(6月1日のこと)とお会いしました。月曜(5月31日)の時には私の方から身を引きたいと、辞したいと申し上げました。その翌日(6月1日)、3人でお会いした時に、私も辞めますが、先ほど両院総会で申しあげましたように、一番求められているのは、政治とカネにおけるクリーンさだと、やはりクリーンな民主党に戻さなきゃいかんと、そのために幹事長にも身を引いて頂きたいということは申し上げた。『分かった』ということでありました。そして改めて、小林千代美さんにも引いてもらいたいということを私から申し上げた。幹事長が、『それは私がやろう』と申されました」

 【「親指」の意味】

 ――昨日(6月1日のこと)3人でお話しになった後に、我々の「続投か」の問いに、首相は親指をあげた。その意味は。

 「自分が心に決めていても、それを表したときに、どのようになるか、それはおわかりでしょう。ですからそれは、自分の心というものを、外には一切出さないように努めました」

 【首相の言葉】

 ――聞く耳を持たなくなったというが、なぜか。言葉をどう大切にしてきたか。

 「私は自分なりに大切にしてきたつもりです。ただやはり、聞く耳を持たなくなったのは、一番は政治とカネ。そして2番目はやはり、普天間における、県外といったじゃないかと、連日のようにそのことが喧伝(けんでん)をされて、県外に最終的に十分にならなかったと、これは約束が違うではないかと、いうことです。その二つを私は例示いたしましたが、基本的にはこういったことが、国民の皆さんが私に対して、あるいは政権に対して、聞く耳を持たなくなった原因だと思ってます」

 意図してのことかどうか分からないが、ここでは両院議員総会で発言した正当事項と対比させた「聞く耳を持たなくなった」の不当事項としてではなく、直接的に普天間問題や「政治とカネ」の問題を不当事項とした「聞く耳を持たなくなった」の正当事項に変えて、両院議員総会での発言の解説で終わらせる、一種の使い分けを働かせている。

 ここにも首相の狡猾な巧妙さを見てしまう。

 【同時辞職】に関して、首相は5月31日の月曜日に首相の方から辞任を申し出たとしている。自発的申し出ということなら、十分に考えた末での決意のはずだが、ではなぜそのとき一緒に幹事長の同時辞任を申し出なかったのだろうか。申し出たのは次の日の6月1日としている。1日置かなければ、思いつかなかった同時辞任だったということなのだろか。

 その日の会合を終えた部屋から出てきたとき、記者の「続投か」の問いに首相は左手の親指をそれとなく突き上げるポーズを取ったが、そのことに関して首相は尤もらしげに小難しいことを言っているが、自身が意図した同時辞職が成功したそれとないサインだったことになる。

 だが、指導力がないと言われ、支持率を危険水域にまで下げての辞任なのだから、口許に笑みを漂わせたり親指を突き立てるポーズは不謹慎を超えて、神経が緩んでいるのではないのかとテレビを見ていて、そう思った。

 その上、辞任の経緯については鳩山首相が言っていることと違って、《「解任動議通る」早朝電話で引導=自信の親指立てで情勢一変-小沢氏》時事ドットコム/2010/06/03-00:34)によると、6月2日の朝、小沢幹事長が首相に電話を入れて、「両院議員総会で代表解任動議を出せば通ってしまうよ」と辞任を迫ったところ、首相は「分かりました」と同意したことになっている。

 と言うことは、記事には書いてないが、首相が言っていることと違って、そのとき小沢幹事長との同時辞任を申し出たことになる。

 親指を立てたことについて、記事は、〈◇「ちゃめっ気」が命取りに

 首相の姿をとらえた映像は1日夜、幾度となくテレビで流れ、首相秘書官の1人は「辞める気がないということだ。ちゃめっ気だ」と解説した。しかし党内の受け止めは冷ややかだった。「自分の進退問題なのだから神妙にするものだ。首相のやることじゃない」。首相続投もやむを得ないと、比較的冷静だった衆院側にも怒りと反発の声が広がり、首相の運命は暗転した。〉と、不用意・不謹慎な親指のポーズが首相の辞任という運命を決定づけたとしている。

 〈党規約によると、両院議員総会は全議員の半数の出席で成立し、その過半数の賛成で党の意思決定がなされる。〉そうだ。

 最後に記事は首相の発言の信用のなさを解説している。

 〈首相は2日夜、記者団に、小沢氏らに辞意を伝えたのは5月31日の3者会談と主張、「自分が身を引くのが国益につながる」と辞任はあくまで自身の判断と強調した。しかし、首相はこの会談の直後、「厳しい局面だが、3人で頑張ろうということになった」と説明。続投は「当然だ」とまで語っていた。首相の発言は最後の最後まで、猫の目のようにくるくると変わった。〉

 事実はまだ闇の中だが、鳩山首相という人間の発言が信用されていないという“事実”は広く事実とされていることだけは間違いない。

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