安倍晋三の尖閣諸島周辺海域に於ける対中国「冷静かつ毅然とした対応」は真っ赤な虚偽答弁だった

2013-03-23 06:34:10 | Weblog

 〈沖縄県・尖閣諸島周辺の領海に中国公船が近づいた際、海上保安庁の巡視船が領海内で操業している日本の漁船に対し、領海外へ待避するよう勧告していることが20日、明らかになった。〉と次の記事が伝えている。

 《海保、日本漁船に退避勧告 尖閣、苦肉の安全策》MSN産経/2013.3.21 01:30)

 漁船の安全確保を図るための苦肉の策だそうで、地元の漁業協同組合も巡視船の勧告に従っているという。

 第11管区海上保安本部(那覇)の巡視船による日本漁船への領海外退避勧告は中国公船が領海侵入を繰返し始めた昨年9月以降だそうだ。2012年12月26日まで続いた野田政権時代から始まった対応ということになる。

 記事のどこにも安倍政権になって改めたとは書いてないから、現在も継続中の退避勧告ということになる。

 このような現在進行形の状態を以って、〈中国公船による断続的な領海侵犯で異常事態が生まれている形だ。〉と解説している。

 海上保安庁関係者「正確な数は把握していないが、複数回行っていることは事実だ」

 記事は日本の漁船に対する領海外への退避勧告の狙いを中国公船が漁船を逮捕して尖閣周辺での「管轄権行使」を既成事実化することへの防御だと伝えているが、と同時に自国の領海からの退避勧告は極めて異例だとしている。

 海上保安庁幹部「過去のケースでは記憶にない」

 上原亀一八重山漁業協同組合組合長「組合員がトラブルに巻き込まれては困るので、(領海内からの退避は)仕方がない。

 本来、こういうことがあってはならない。政府は毅然と対応しつつ、新政権同士の話し合いで安心して操業できる環境を整えてほしい」

 そして記事は最後に昨年9月以降の中国公船による尖閣周辺の領海侵入回数を伝えている。

 今年3月18日現在で計34件延べ109隻。

 昨年9~11月は3~5件だったのに対し、12月は8件、今年2月は7件。

 侵入時間は昨年9月の最長6時間54分に対して今年2月は最長14時間16分。

 この記事を読んだとき、いくら日本漁船の安全確保とは言え、また、勧告という形を取ったとしても、漁船が勧告に従っている以上、海上保安庁による日本漁船に対する一時的な領海放棄ではないかと思った。日本漁船は海上保安庁の指示を受けて、自国領海でありながら、領海を一時的に放棄する。

 他の「MSN産経」記事は「国家主権の放棄」だと批判している。〈「漁船の安全確保のため」と海保は説明するが、一時的であれ日本の領海内で日本漁船が操業できないのは、国家主権の放棄につながる。〉と。

 何れにしても日本の領海であることを常に守って、日本漁船が安全に操業できる状態を常に保障しなければならない併行義務を負う海上保安庁という国の機関が一時的であっても日本漁船を領海外へ退避させるというのは漁船を守ることにはなっても、領海を常に守っていることにはならない併行義務の破綻を意味するはずだ。

 問題はこのような対応が野田政権時代に決められたことではあっても、尖閣周辺海域に於ける野田政権の対中国公船対応を批判した、2012年12月26日発足の安倍内閣でも、批判しながら継続させていることである。

 このことは明らかにウソつきと言われても仕方のない有言不実行に当たる。

 3月7日(2013年)の衆院予算員会での安倍首相による野田政権の対中対応批判は2013年3月11日当ブログ記事――《3月7日の午前中の衆院予算員会3月7日衆院予算委、岡田克也の頭の悪い追及が頭の悪い安倍晋三を助けている - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》で既に取り上げているが、再度批判個所を掲載してみる。

 3月5日(2013年)付「MSN産経」記事が、野田前政権が海自艦艇が中国軍艦に対する場合は15カイリ(約28キロ)の距離を置き、中国側が近づくと後退することと領海侵犯の恐れがあっても先回りして警戒することを禁じる、中国側に過度に配慮した指示を岡田克也前副総理が中心となって出していたと複数の政府関係者の話として伝えた。

 午前中の審議。

 萩生田光一自民党議員「産経新聞の報道は事実か」

 安倍晋三「前の政権では、過度に軋轢を恐れるあまり、領土・領海・領空を犯す行為に対して、当然行うべき警戒・警備の手法に極度の縛りがかけられていた。相手方に誤ったメッセージを送ることになり、不測の事態を招く結果になると判断したので、安倍内閣が発足した直後から、前の政権の方針を根本から見直し、冷静かつ毅然とした対応を行う方針を示した」(NHK NEWS WEB

 「極度の縛り」の中に海上保安庁の日本漁船に対する領海外退避勧告が入っているのか、後で検討するが、野田政権発信の「極度の縛り」によって「当然行うべき警戒・警備」を行ってこなかった。だから、「安倍内閣が発足した直後から、前の政権の方針を根本から見直し、冷静かつ毅然とした対応を行う方針を示した」と言っている。
 
 午後に入って、岡田克也民主党議員が、野田政権が海上保安庁に対して極度の縛りをかけていたという事実はないと追及した。

 安倍晋三「私はですね、総理になってから、まさに事務方から態勢について聞いた結果、今、個々のことについては敢えて申し上げませんよ、そこまでは。

 いわばこちらの手の内を明かすことになりますから、過去のことは申し上げませんが、私は事務方から態勢について聞きました。防衛省と海上保安庁から聞きました。で、その態勢はですね、明らかに、過度な配慮をした結果であろうと思って、ですね、致しました」――

 事務方から直接聞いた判断だと言っている。岡田克也はなお追及した。

 安倍晋三「これはですね、私は実際に確認しているから、この場で述べているんですよ。しかし、それは敢えてここのことについてはですね、手の内に関わることですから、申し上げませんよ。

 しかし別に民主党を非難するためにだけで、えー、申し上げているわけではありません。いわば対応についてはですね、いくつかの対応、これは海上に於ける対応もそうですし、えー、上空、航空識別圏に於ける対応もそうですが、これも含めて全面的に対応を見直し、そして然るべき対応に変えたわけであります」――

 午前中の答弁では「前の政権の方針を根本から見直し」たと言っているのに対して午後の答弁では「全面的に対応を見直し」たと言っている。

 “根本的見直し”だけでは必ずしも前の事柄に対する全面否定とはならないが、そこに“全面的見直し”が加わると、前の事柄に対する全面否定を確実に意味することになる。

 当然、安倍晋三が言った「極度の縛り」の中に海上保安庁の日本漁船に対する領海外退避勧告も入っていなければならない。そうでなければ、“根本的見直し”+“全面的見直し”の全面否定とはならない。

 そして安倍晋三は全面否定による「極度の縛り」の解除・是正によって中国に対して「冷静かつ毅然とした対応」に改めたという経緯を取ったと宣言した。

 だが、実際には全面否定したはずの「極度の縛り」の中に入れていなければならない野田政権による海上保安庁の日本漁船に対する領海外退避勧告は安倍政権になっても継続させていた。

 いわば、“根本的見直し”言っていたことも、“全面的見直し”と言っていたことも虚偽答弁に過ぎなかったことになる。

 当然、対中国「冷静かつ毅然とした対応」にしても虚偽答弁――口先だけの真っ赤なウソに過ぎなかったということになる。

 3月18日にも尖閣周辺日本領海に中国の海洋監視船3隻が侵入、3時間航行している。中国の継続的な領海侵犯を停めることができない「冷静かつ毅然とした対応」などというものは大体が逆説かつ倒錯そのものである。

 安倍晋三は自民党政策の公約を語るとき、「できないことは言いません」を口癖にするが、国会で答弁したことも広い意味での公約である。

 一旦口にして公約としたことを実行しなかったこともできなかったことに入る。

 口先のウソ・ゴマ化しに類する虚偽答弁でその場を凌ぐことができたとしても、そのウソ・ゴマ化しはいつかわ現れることになる。

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