安倍晋三の少子化高齢化・生産年齢人口減少に触れないトンチキな施政方針演説「世界一」

2013-03-04 10:52:56 | Weblog

 安倍晋三は2月28日の施政方針演説で、勇ましくも「世界一」という言葉を8回も使っている。「世界一を目指す」という意味の「世界一である」

 志は高く持つべきである。叶うなら、天高く、宇宙に届く程に高く、あるいは宇宙を大風呂敷に見立てて宇宙一杯に志を広げるのもいいだろうが、それが大言壮語化しては困る。

 施政方針演説から、「世界一」に触れた個所を拾い出してみる。

 安倍晋三「沖縄の地に、世界一のイノベーション拠点を創り上げます」

 これが最初。

 安倍晋三「(世界一を目指す気概)

 小さな町工場から、フェラーリやBMWに、果敢に挑戦している皆さんがいます。

 自動車ではありません。東京都大田区の中小企業を経営する細貝さんは、仲間と共に、ボブスレー競技用「そり」の国産化プロジェクトを立ち上げました。

 『世界最速のマシンをつくりたい』

 三十社を超える町工場が、これまで培ってきた、ものづくりの力を結集して、来年のソチ五輪を目指し、世界に挑んでいます。

 高い技術と意欲を持つ中小企業・小規模事業者の挑戦を応援します。試作品開発や販路開拓など、新しいチャレンジを応援する仕組みを用意します。

 ひたすらに世界一を目指す気概。こういう皆さんがいる限り、日本はまだまだ成長できると、私は、確信しています。

 今一度、申し上げます。皆さん、今こそ、世界一を目指していこうではありませんか」

 ここで3回、合計4回。

 安倍晋三「(家計のための経済成長)

 なぜ、私たちは、世界一を目指し、経済を成長させなければならないのか。

 それは、働く意欲のある人たちに仕事を創り、頑張る人たちの手取りを増やすために他なりません。

 このため、私自身、可能な限り報酬の引上げを行ってほしいと、産業界に直接要請しました。政府も、税制で、利益を従業員に還元する企業を応援します。

 既に、この方針に御賛同いただき、従業員の報酬引上げを宣言する企業も現れています。うれしいことです。

 家計のやりくりは、大変な御苦労です。日々の暮らしを少しでも良くするために、私たちは、『強い経済』を取り戻します」

 合計5回。

  安倍晋三「四 世界一安全・安心な国

 経済だけではありません。様々なリスクにさらされる国民の生命と財産を、断固として守る、『強靭(じん)な国づくり』も急務です。

 旅行で、仕事で、普段何気なく通るトンネルで、その事故は起きました。笹子トンネル事故です。

 私の育った時代、高速道路が次々と延びていく姿は、『成長する日本』の象徴でありました。しかし、あの頃できたインフラが、老いつつある。人の命まで奪った現実に、向き合わなければなりません。

 命を守るための『国土強靭(じん)化』が、焦眉(び)の急です。首都直下地震や南海トラフ地震など、大規模な自然災害への備えも急がなければなりません。徹底した防災・減災対策、老朽化対策を進め、国民の安全を守ります。

 治安に対する信頼も欠かせません。ネット社会の脅威であるサイバー犯罪・サイバー攻撃や、平穏な暮らしを脅かす暴力団やテロリストなどへの対策・取締りを徹底します。

 悪質商法によるトラブルから、消費者を守らねばなりません。地方の相談窓口の充実や監視強化などによって、消費者の安全・安心を確保します。

 『世界一安心な国』、『世界一安全な国、日本』を創り上げます」

 これで計8回。終わり。

 項目として、「経済成長を成し遂げる意志と勇気」を掲げ、「家計のための経済成長」、「子どもたちが主役の教育再生」、「子育て・介護を支える社会」、「女性が輝く日本」、「誰もが再チャレンジできる社会」、「持続可能な社会保障制度の構築」等々掲げているが、基本は“人”である。人が築く日本の社会の数々の姿であろう。

 各制度も経済も人によって支えられる。人なくして国は成り立たない。社会も成り立たない。社会が成り立って、国は成り立つ。国が成り立って社会が成り立つ。国と社会は相互関係性にあり、それを支えるのは人である。

 当たり前のことを言ったが、特に国の経済が支える各制度であろう。

 いくら立派な警察制度を確立していたとしても、国の経済が低迷し、国民の生活を直撃したなら、生活苦から犯罪に走ったり、自殺で人生にケリをつける国民が多く出てくる。

 日本の社会保障制度は世界に率先して優秀だと胸を張ったとしても、国の経済が衰退し、財源不足に陥ったなら、経済衰退で生活の打撃を受けている多くの国民に社会保障制度の持続性維持の名目で消費税増税という追い打ちをかけなければならず、「持続可能な社会保障制度」自体が半ば意味を失う。

 明日の安心よりも今日の安心にすがって生活している国民が無視できない数で存在するからだ。

 安倍晋三は「三本の矢」と名付けた経済政策を掲げ、経済成長を約束しているが、現状に於いては経済の作り手となる人、経済の担い手となる人は目先だけのことを考えるならそれ相応に足りるし、目先だけのことを視野に収めた施政方針演説なら、問題外とすることができるとしても、「世界一」を目指す壮大な夢を追うには、それが例え大風呂敷であっても、作り手・担い手たる人の数も無視できないはずだ。

 景気が良くなって各企業が雇用を増やすのは、好景気に従って拡大していく経営規模に応じてその企業固有の経済の作り手・担い手たる人をより多く必要とするからだろう。

 この関係は国に於いても同じはずだ。国の経済規模が拡大すればする程、働き手は必要となる。

 逆に国の経済規模が縮小すればする程、働き手は不必要となり、失業者が増えることになる。

 いわば景気、もしくは経済はより多くの人を必要とする、人との関係にある。

 ということなら、安倍晋三は「なぜ、私たちは、世界一を目指し、経済を成長させなければならないのか」と、「世界一」の日本の経済規模拡大を目指しているのであって、当然、「世界一」を目指すに応じた人の数を必要とするはずだ。

 にも関わらず、日本は人口減少社会に突入している。人口減少は当然のこととして生産年齢(15~64歳)人口の減少を伴う。

 このことは「世界一」を目指すことと相矛盾しないだろうか。

 既に触れたように目先だけのことを考えた施政方針演説なら、とやかく言っても始まらない。

 昨日の3月1日(2013年)金曜日、テレビ番組で安倍晋三の「世界一」を目指す壮大な政治目標との関係で興味を引くデーターを取り上げていた。

 日テレ「ネプ&イモトの世界番付!鉄道&未来予測図」で、 2011年国別人口ランキング

 1位 中国     13億4413万人
 2位 インド     12億4149万人
 3位 アメリカ    3億1159万人
 4位 インドネシア  2億4233万人
 5位 ブラジル    1億9666万人

10位 日本      1億2782万人 

 2100年人口予測

 1位 インド    15億5090万人
 2位 中国      9億4104万人
 3位 ナイジェリア  7億2989万人
 4位 アメリカ    4億7803万人
 5位 タンザニア   3億1634万人

27位 日本       9133万人 

 世界人口

 2011年 約70億人 → 2100年 約101億人
 
 日本人口

 2011年  約1億3000万人 →  2100年  約9000万人

 2011年GDPランキング(購買力平価をベースに換算)

 1位 アメリカ    1206兆円
 2位 中国       904兆円
 3位 日本       355兆円
 4位 インド      354兆円
 5位 ドイツ      249兆円

 2050年GDPランキング(購買力平価をベースに換算)

 1位 インド     7573兆円
 2位 中国      7049兆円
 3位 アメリカ    3442兆円
 4位 インドネシア  1227兆円
 5位 ブラジル    1020兆円

 9位 日本       571兆円 

 日本は順位を下げても、355兆円から571兆円に増えているが、現在でもそうであるように、主として中国、アメリカ等に牽引された伸びということであろう。

 但しGDP2011年3位から、人口減少に伴って、2050年9位と名誉の位置につける予想となっている。 

 とても「世界一」を目指すといった状況には見えない。安倍晋三の2月28日の施政方針演説を聞いてから、上記テレビ番組を視聴した者には志高く掲げた政治目標というよりも、まさしく大風呂敷と受け取ったに違いない。

 国を支え、経済を支える人を必要とする以上、現在の人口減少社会に歯止めをかけなければならないはずだ。施政方針演説で何か手を打つ政策を掲げているのだろうか。

 「持続可能な社会保障制度の構築」の項目の中で次のように述べている。

 安倍晋三「しかし、どんなに意欲を持っていても、病気や加齢などにより、思い通りにならない方々がいらっしゃいます。

 こうした方々にも安心感を持っていただくため、持続可能な社会保障制度を創らねばなりません。少子高齢化が進む中、安定財源を確保し、受益と負担の均衡がとれた制度を構築します」――

 「少子」と言う言葉に関しても、「高齢化」という言葉に関しても、これだけで、「人口」という言葉や「減少」という言葉は一切触れていない。

 しかも持続可能な社会保障制度創設の文脈で「少子高齢化」を取り上げたのみであって、人口増加政策の文脈とはなっていない。

 「出産」という言葉もなく、「出生」と言う言葉も、「出生率」という言葉もない。「待機児童の解消」だ、女性の育児と仕事の両立だと、目先のことだけを並べ立てているに過ぎない。

 要するに「世界一」は口先だけの大風呂敷で、目先の景気回復だけを狙っているとしか見えないトンチキな施政方針演説に見えたが、どんなものだろうか

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