安倍晋三の「被災地の心に寄り添う」と「チャレンジ」をウソとする被災地「グループ補助金」

2014-11-14 08:34:14 | Weblog


 東北経済産業局が6月から7月(2014年)にかけて青森、岩手、宮城、福島の被災3県の「中小企業等グループ施設等復旧整備補助金」交付先各企業の経営状況を調査し、その結果を公表したことを「NHK NEWS WEB」で知って、東北経済産業局のサイトにアクセスしてみた。

 「中小企業等グループ施設等復旧整備補助金」(以下「グループ補助金」)が「復旧整備補助金」を謳っている以上、被災した中小企業の復旧整備を目的としていることになる。

 《第3回グループ補助金交付先アンケート調査(平成25年6月実施)の結果について》(平成25年9月東北経済産業局) 

 調査対象――平成23年度及び平成24年度グループ補助金の交付先7,577社
 回答企業――5,445社(71.9%)

 〈雇用の動き〉

 「震災直前の水準以上まで雇用が回復している」60.8%(前回調査比+2.7ポイント)
 
 県別
 青森県(70.9%)
 岩手県(62.1%)
 福島県(61.9%)
 宮城県(59.3%)

 業種別
 建設業(76.1%)(震災直前比+10.7%ポイント)
 卸小売・サービス業(64.4%)
   ・・・・・・・
 運送業(44.6%)
 水産・食品加工業(37.8%)

 「震災直前の水準よりも雇用が減少している」39.2%

 業種別
 水産・食品加工業(21.6%減少)
 旅館・ホテル業(13.1%減少)

 4県全体の雇用
 震災直前比-6.5%

 建設業のみが復興需要の恩恵をより多く受けているようだ。

 〈売上げの状況〉

 「震災直前の水準以上まで売上げ回復事業者」36.6%

  県別
 青森県(51.3%)
 岩手県(42.2%)
 宮城県(36.9%)
 福島県(32.9%) 

 業種別
 建設業(66.0%)
 運送業(42.3%)
   ・・・・・・・    
 卸小売・サービス業(30.6%)
 水産・食品加工業(14.0%)

 「震災直前の水準以下に売上げ減少事業者」63.4%(以上)

 この「63.4%」は各業種に分散していて、その合計ということなのだろうが、「売上げ回復事業者」の36.6%と比較して、倍近くにのぼることになる。

 「NHK NEWS WEB」記事――《被災した水産・食品加工業 回復19%》(2014年11月11日 18時58分)は、〈水産・食品加工業に売り上げが回復していない要因を聞いたところ〉と書いているから、東北経済産業局に問合せたのだろう、次のようになっている。

 「顧客の喪失」34%
 「風評被害」26.5%

 このことは上記アンケート調査には出ていないが、なぜなのだろう。「顧客の喪失」は兎も角、「風評被害」という言葉を入れたくなかったのではないかと勘繰りたくなる。安倍晋三が何度も被災地に足を運んで、風評被害の払拭ということで被災地の農水産物を何度も試食のパフォーマンスを繰返していながら、今なの風評被害が復興の足枷のの大きな要因の一つとなっていたなら、格好がつかなくなるからだ。

 ご存知のように「NHK NEWS WEB」記事はNHK総合テレビで発信したニュースに基いて記事にする。以上のことを伝えたNHKのテレビニュースでは回復遅れの要因をもう一つ挙げていた。

 補助金は震災前と同じ水準の生産設備の導入が交付対象となっているために、売上が伸びないことから新たな商品開発を試みたとしても、その開発に必要な生産設備の導入にかかる経費が補助金の交付対象外となっている、それがネックとなっているとのことである。

 ネット上の「グループ施設等復旧整備補助金交付要綱」には次のような趣旨のことが書いてある。〈交付対象経費は被災した場所での事業再開が困難な場合、県内の他の場所に施設及び設備を新たに整備するための経費を加えることを妨げないとしているものの、東日本大震災により損壊若しくは滅失又は継続して使用することが困難になった施設及び設備に対し交付する。〉としてあって、要するに震災前の施設及び設備に戻す援助・支援となっている。

 と言うことなら、震災前と同じ状態に戻すお手伝いはしましょう、その状態から震災前と同様に前に進みさえすれば、どうにかなるはずです、あとはご自分でやって下さいと言うことでグループ補助金を始めたことになる。

 顧客の喪失や風評被害、あるいは人手不足による雇用困難まで考えず、新たな試みが必要となることなど想定外としていたということである。

 いわば震災前の生産設備に戻せば、復旧・復興はどうにかなると考えていた。

 上記「NHK NEWS WEB」記事は、政府が震災前と同じ水準の生産設備を導入しても売り上げの回復や事業の再開が難しい場合、これまでは補助の対象外だった震災後に開発した新商品を生産する設備の導入に対しても支援できるようにすることを検討していると解説している。

 グループ補助金の第1次公募は民主党政権下の2011年6月13日から6月24日の間に行っている。だが、安倍政権となってから、2年近く経過する。被災地の中小企業の多くがグループ補助金に不足や不備を感じていることを2年近くも放置してきた。そして2年近くの放置の末に、今後運用の改善を検討することにした。

 この取組みの遅さは安倍晋三が機会あるごとに口にしている「チャレンジ」なる政治理念をウソにする事態ではないだろうか。

 「安倍内閣の目指す、何度でもチャレンジできる社会であります」

 「『チャレンジ、オープン、イノベーション』。これが私の成長戦略の一貫した基本理念です」
 
 「成長戦略のコンセプトを、私は、チャレンジ、オープン、イノベーションという、3つの言葉に託しました」等々。

 「被災地の心に寄り添う」と言い、「チャレンジ」可能社会を謳いながら、被災地の中小企業が生き残りをかけて新しい商品開発にチャレンジしようとする動きを阻害してきた。

 2014年3月7日から10日にかけたNHKの全国世論調査。

 「被災地の復興は進んでいると思うか」

 「かなり進んでいる」1%
 「ある程度進んでいる」22%
 「あまり進んでいない」 56%
 「ほとんど進んでいない」16%

 安倍晋三の威勢のいい言葉に誤魔化されてはいけない。政策の不備が復興を遅らせている。

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