総務相の右翼政治家高市早苗が11月28日の記者会見でNHKや日本民間放送連盟に対して慎重な当確放送を要請する方針であることを明らかにしたというマスコミ記事を読んで、どういったことなのか、報道への政治の介入と言うことなら問題だと思って、総務省のサイトにアクセスしてみた。記者会見の概要が記載されていた。
読みやすいように段落を変えた。文飾は当方。
《高市総務大臣閣議後記者会見の概要》(総務省/2014年11月28日)
上出義樹フリーランス記者「フリーランス記者の上出と申します。実績が無くて申し訳ありません。二つ質問させてください。何れも関連あることなのですが、今日の朝刊に新聞に出ている問題です。
自民党が選挙報道に対して、民放、東京の民放各社にですね、公平中立にやってほしいというような要請を出したんですが、大変細かく街頭インタビューの方法とか、ゲスト出演のこととか、そういうことについても気を付けなさいというような趣旨で、新聞によっては批判的に取り上げているところがありました。識者の方からですね、政権与党がこういうようなものを出すということは、それだけで圧力になるという見解です。これが一つの質問です。
もう一つはですね、これとは違うんですけれども、総務省が平成7年からですね、当選確実の報道で誤報があるということで、そういうことがないようにという、要請という、これは、形ですけども、行っております。
ずっと行っていたんですけど、民主党の政権の時は二回の国選でこれをやらなかった。これは、そういうことが圧力になったためだということらしいんですけども、で、去年の参議院選挙で復活しまして、公示日の7月8日に2行ほどで簡単ですけども、そういうことをやっています。
これ、今度の公示については、12月2日どうするか、まだ決まってないという担当課の話ですけども、もしこのことをご存知でしたら、総務省としての考え方、政権与党とか総務省がそういった要請をするってことは、非常にデリケートな、言論の自由にとってデリケートな問題ですので、どのようにお考えかってことを、ちょっと長くなりましたがお願いします。
高市早苗「私も朝刊、それから、また、ネットニュース、各社のですね、ニュースなどで拝見いたしました。
与党からも野党からも、選挙報道の公正・中立を求めるものが放送事業者に届いているといった報道になっておりました。
ただ、申し訳ございませんが、その内容、事実関係詳細については、私はまだ承知をいたしておりません。
いずれにいたしましても、総務省としての考え方を申し上げますと、これは放送事業者におかれまして、放送法の規定にあるとおり、政治的に公平、報道は事実を曲げないといった原則に従って、放送番組を編集することになっているということでございます。
ですから、特に選挙期間中の報道、解散になってから公示日までの報道について、何か総務省から申し上げるということはございません。
2点目の、その当確放送のことなんですけれども、これは、お願いをしたいと思います。
やはり投票日の当確放送、これを間違えることによって、相当大きな混乱が生じます。ですから、これはまた、NHK及び民放連に対して、当確放送については慎重にお願いしたい旨を、要請したいと考えております」
上出義樹フリーランス記者「ちょっとよろしいでしょうか。実際の文章はそんな、今回の自民党のようにですね、事細かく書いているわけじゃなくて、抽象的な形で国民の信頼を得るようにと言っているんですけども、これを書くこと自体がプレッシャーになったりとかですね、公的な権力と言ったらあれですが、そういう政党の与党とか、そういうところが出すこと自体が圧力になるんだという考え方の意見も聴かれます。それについては如何でございますか。
高市早苗「やはり、報道の自由、国民の知る権利というところには十分配慮しているからこそ、番組の個別の内容に立ち入ることなく、ただ、当確放送については過去に間違いが、残念ながらございまして、それは本当に大混乱を生じさせる結果となりました。
当該選挙区の有権者の方にとっても、それは大変なことでございますし、特に立候補された御本人やその支援者にとっては、バンザイをした後に、残念だったということでお詫びに回られたり、反対に、落選をされたといったことの中で、皆さんが、がっかりしてお帰りになって、その後、そうではなかったことが判明したり、そういったことがありましたので、あくまでも放送法第4条の公平であること、また、報道は事実を曲げないということ、これに従って、しっかりした報道をしていただくことを要請する、特に当確放送については、慎重にすることを要請するといった趣旨でございます」(以上)
上出義樹氏が最初に取り上げたのは自民党が11月20日、「自由民主党 筆頭副幹事長 萩生田光一/報道局長 福井 照」の差出し人名で在京テレビキー局の編成局長、報道局長宛てに、各政党からのテレビ出演者の発言回数や発言時間、ゲスト出演者の選定、「テーマごとの議論に関して特定の立場から特定政党出演者への意見の集中」と街角インタビューや資料映像等使用に関しての一方的な意見の偏り、あるいは特定の政治的立場の強調等々に留意し、公平中立・公正を期すよう、文書で要請したことを指す。
このことは明らかに政治的介入だと、11月28日の当ブログ記事、――《安倍晋三と側近たちのテレビ局にアベノミクスを評価する声をもっと出せと情報操作を要求する時代錯誤な圧力 - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》に書いた。
上出義樹氏は総務省が平成7年からマスコミの選挙時の当選確実報道に誤報があるからと、要請という形で誤報がないように求めていたが、民主党政権時代に中止していた要請を自民党は去年の参議院選挙から復活したと言い、今回の総選挙でも要請するのかと、言論の自由に対する政治の圧力に当たるのではないかという文脈で尋ねた。
対して高市早苗は、我々は「報道の自由、国民の知る権利というところには十分配慮しているからこそ、番組の個別の内容に立ち入ること」はないと断言しながらも、「当確放送については過去に間違いが、残念ながらございまして、それは本当に大混乱を生じさせる結果とな」った、「あくまでも放送法第4条の公平であること、また、報道は事実を曲げないということ、これに従って、しっかりした報道をしていただくことを要請する、特に当確放送については、慎重にすることを要請するといった趣旨」でテレビ局にお願いをすると答えている。
確かに当選もしていないのにテレビ局から当確を伝えられて支持者共々バンザイしたところ、後になって当選は幻で、落選が現実だと知らされたなら、当の候補者から見たなら非常に大きなショックを伴う悲劇、第三者から見たら喜劇となる。
しかし外部の人間に対して大きな迷惑を掛けたとしても、これは放送局内の選挙速報チームの責任問題である。迷惑をかけた相手に対して何らかの謝罪をし、問題を起こしたチームに対しては原因を究明して、そこに重大な間違いがあったなら、局側が何らかの懲罰を与えて、二度と間違いを犯さないような体制を取ることがテレビ局としての責任の取り方であるはずである。
また、間違えられた方も一つの局の報告だけではなく、他の局の報告まで待つ慎重さが必要である。当選したい一心から、つい信じてしまうのだろうが、そうだとしても、「原発神話」ならぬ「報道神話」に陥っていることになる。特に過去に間違いがあるなら、尚更慎重な姿勢が必要となる。
もし精神的な被害を受けたということなら、当確を間違えられた候補者が抗議するなり、精神的苦痛を被ったといった損害賠償の裁判を起こすなりして、報道の責任を追及すればいい。
投票用紙の数え方は各投票所の投票箱を体育館等の広い場所に集めて、中の票をそれぞれの候補者に仕分けて、テーブルの上に候補者ごとの山にし、その山が全て同一候補者の投票用紙であるか間違いがないかを再度読み直す確認をしてから、候補者ごとの票を機械にかけて票数を読み取る方法を取ると聞いたことがある。
各陣営の関係者がその投票所に出張って、山ごとに候補者名を記したカード立てがテーブル上に置いてあるか、名前を書いた紙をテーブルの端にセロハンテープで貼ってあるかして、自分の候補者の山を確認して、その大きさで当落の検討をつけるそうだ。
もし間違えるとしたら、似た大きさの山があって、どちらが多いか少ないかの判断を取り違えたといったことから起きるのかもしれない。
候補者を確認する目印が何もなければ、開票に関わる市町村職員に渡りをつけておいて、指で差して貰うかして確認できるはずだ。
テレビ局にしても世論調査や出口調査だけではなく、投票用紙の山を見て当落を予想する同じ方法を取るはずだ。なぜなら、すべての投票所で出口調査を行っているわけではないし、世論調査で支持政党や候補者を決めていない有権者が殆どの場合、最も多い数を占めているから、誰に投票するのか、棄権するのか、世論調査だけでは判断がつかないからだ。
当確の間違いが、間違えられた当人にとっては大きな間違いであったとしても、当確の最終判断は報道機関が握っているわけではないのだから、政治的な意味合いを持っているわけではなく、あるいは政治的な意味合いから故意にそうすることもできないはずで、単なる手続き上の過ちに過ぎない。
にも関わらず、総務省の方から当確放送は間違いないように慎重に報道するように要請する方針だという。
その理由として、過去の間違いを挙げた。
一見、正当性ある理由に見えるが、報道に対する個々の報道人の責任感からの自己規律に対してそこに政治がさざ波を立てることになる。このさざ波が当確放送に限るならまだしも、過去に於いてNHKが安倍晋三や中川昭一などの政治家の意図を忖度してテレビ番組の内容を変更したと高裁が判決したことは政治介入に等しい何らかの接触の存在があったからこそのNHKの政治家の意図の忖度であり、安倍晋三が11月18日、TBS「NEWS23」に出演したとき、景気の実感を街行く人にインタビューした際のアベノミクスに否定的な街の声に対してテレビ局側が人を選んだのではないかと情報操作を疑う言葉を発信したことは政治家の側から番組の手続きを規制したい欲求があったからであり、その2日後に、上出義樹氏が高市早苗に対する質問で指摘していた、安倍晋三側近名で在京テレビキー局の編成局長、報道局長宛てに出した放送内容についてのこまごまとした要請は、公平中立・公正を期すことを要請すると称しているものの、明らかに安倍晋三のテレビ番組に対する政治家側からの規制欲求を具体的な形に現した要請であり、政治介入以外の何ものでもない。
そしてこのような度重なる情況から考えると、安倍晋三とその同類たちは公平中立・公正の名の下、自分たちに都合の良い報道を欲し、都合の悪い報道は規制したい政治介入の欲求を体質として抱えていると判断しないわけにはいかない。そうである以上、当確放送程度の要請であっても、他との関連から報道側は政治介入の思惑を忖度せざるを得ないことになる。
忖度は報道機関側の自己規律が報道に対する自身の在り様の模索であるのに対して自然と政治の意思に対する自己の在り様の模索へと変質しかねない危険性を抱えることになる。
前者の自己規律は自発的・内発的であるが、後者は他発的・外発的となる。ジャーナリストとして、あるいはジャーナリスト集団(=各テレビ局)として、自らの判断で立たずに政治の判断で立つことになる。
勿論、報道機関側が如何なる政治介入をも跳ねつける強い意志を持っているなら、問題は生じない。
だが、この程度なら政治介入に屈したことにはならないとほんの小さな妥協を行った場合、それが小さな妥協に応じた小さな自己規制であったとしても、自己規制であることに変わりはなく、そういったことが誘因となって度重なることになり、自己規制を常態化させた場合、政治家側が自分たちの要求は何でも通ると受け止めることになって、政治家側と報道機関側双方から政治介入のさらなる常態化を誘導することになって、民主主義にとって非常に危険な状況に陥ることになる。
例えそういった危険な状況に陥らずとも、政治家側の政治介入こそ、自己規制すべきだろう。自己規制できない状況を見かけたなら、特に安倍晋三とその同類たちが政治介入の体質を抱えている以上、国民の側が厳しい自己規制を求める声を上げる必要がある。
生活の党 2014年総選挙公認候補予定者