政治資金に関わる様々な疑惑に応じて大臣たちの資格を問う野党の国会での追及が連日続いている。ご存知のように江渡聡徳(えと あきのり)防衛相も政治資金に関わる疑惑が持ち上がって、同じく追及の矢面に立たされている。マスコミが伝えている疑惑からは錬金術の腕前しか見えてこない。
資金管理団体からの寄付が違法であるにも関わらず、江渡聡徳が代表を務める資金管理団体「聡友会」が代表の江渡氏への2009年と12年、4回計350万円の寄付を政治資金収支報告に記載してあった。それを入閣直前に訂正したという。
れっきとした政治活動であるなら、「組織活動費」等の名目であるなら、資金管理団体から資金を政治家に移せるということだから、そのカネをいつも懐に大枚用意していて、その時々でかかったカネを支払って、支払いに応じて発行された領収書の金額を使途目的と共に政治資金収支報告書に出し入れの形で記載するのが正規の一般的な事例であるはずだ。
勿論、れっきとした政治活動ではなく、例えばSMバーで愉しんで、それに必要としたカネを資金管理団体からの支出とし、使徒目的をれっきとした政治活動に見える名目に付け替えて政治資金収支報告書にその出し入れを記載するゴマカシもできる。
そのようなゴマカシをするようになったら、おしまいだが、にも関わらず政治家を続けている政治家はゴマンと存在するかもしれないが、このことは置くとして、「組織活動費」等の名目であるならカネを移すことができるにも関わらず、自身が代表を務める資金管理団体から自身に寄付する必要がどこにあるのだろうか。
当然、寄付したとするカネが使途の付け替えだけでは収まらない、表に出すことができない合計350万円ではなかったのかと疑いたくなる。
「毎日jp」記事によると、江渡聡徳は国会で資金管理団体の事務員から2人分の人件費名目でカネを預かって、毎回「仮の領収書」を渡していたが、この4枚の領収書を事務所が会計処理する際、「管理団体から江渡氏への寄付」と誤解して記載したと説明したという。
ところが、江渡氏は支払った相手の一人が資金管理団体の会計責任者である私設秘書だったと明かした。
つまり資金管理団体の会計責任者である私設秘書が資金管理団体の資金から江渡聡徳に対して人件費名目のカネを2人分支出し、その金額分の仮領収書を受け取り、その1人分のカネをカネの出し入れを担当した会計責任者である当の私設秘書が人件費として受け取り、会計処理の際、その仮領収書の金額と但書に基いて資金管理団体から江渡聡徳への寄付として政治資金収支報告書に記載した。
収支報告書に記載したのが会計責任者ではなかったとしても、最終チェックは会計責任者が領収書や仮領収書と照らし合わせながら行うはずだから、その段階で仮領収書の但書の「人件費」が収支報告書では「寄付」となっている間違いに気がつかなければならなかったはずだ。
いやそれ以前の問題として、収支報告書の使途目的は仮領収書の但書の欄の文字に基づいて記載するはずだから、実際に「人件費」と書いてあったなら、「寄付」と書き間違えることは考えにくい。
しかも資金管理団体であるにも関わらず、2人の勤務実態を示す勤務表や源泉徴収票等の書類は作成されていないという。
また、政治資金規正法の対象となる「政治団体」の届け出がない任意団体「政経福祉懇話会」が、会の実態が江渡氏個人の支援団体なのに、政治資金規正法の対象となる「政治団体」の届け出がないことが脱法行為と疑われる状態で同じ住所にある江渡聡徳代表の「自民党青森県第2選挙区支部」に対して2012年までの11年間で3285万円の寄付をしていたことが10月31日、国会で問題視されたという。
同じ住所にある二つの団体がカネの遣り取りをする。一方は収支報告書の作成と提出の義務付けがない任意団体。と言うことは、マネーロンダリングに利用できるのではないのだろうか。表に出すことのできないカネ、あるいは汚れたカネであったとしても、寄付という名目で「自民党青森県第2選挙区支部」に渡った途端、正規の政治資金として使途可能となる。
このようなカネの出し入れからは、巧妙な錬金術の腕前しか見えてこない。こういった腕前が資金管理に必要なのだろうか。政治家がそのような資金管理を必要不可欠な作業としていたとしたら、その手の価値観からは政治的才能を見い出すことはできない。
今井雅人維新の党衆議院議員が10月30日の衆院予算委で江渡聡徳の政治資金規正法違反疑惑を追及した後、自らの政治団体が2007~09年にパチンコ店経営外国人男性から計115万円の寄付を受けていたことが判明した大塚高司国土交通政務官と、同じく外国人から献金を受けていた宮沢洋一経産大臣の問題が、台湾人飲食店経営者の会社から計42万円の企業献金を受けていたことが法務大臣就任直後に判明、就任3週間の2012年10月23日に体調不良を理由に辞任した民主党政権時の田中慶秋法務大臣と、同じく民主党政権時に外相だった前原政治が外国人献金問題受けて辞任した例に当たるとして、次のように安倍晋三に質問した。
今井雅人「当時自民党のみなさんは大臣辞任すべきだと要求されましたので、総理、基本的には同じ考え(辞任すべきという考え)と言うことで宜しいでしょうか」
安倍晋三「よく整理をしていく必要があります。外国人であるかどうかと言うことを認識していたかどうかですね。外形的に外国人であるかどうか分かること、また、それが違法であるかどうかということ。また、あるいはそれこそ外国人であるということを認識していて献金を受けた、外国人として認識をしていて、献金を受けたということは明確に違反するわけでございます。
今(大塚高司国土交通)政務官も答弁されました。そして宮沢大臣も答弁されておりましたが、田中(慶秋)議員との違いについては、田中議員についてはお付き合いがあった。当該人物とお付き合いがあった。そして法人の代表者が外国籍名であることから、(外国人であることが)明らかであった。そして田中大臣自体が外国人だということを認識したという、認識していたけど、その後訂正をしていなかった。(だから、辞任に当たる。)
前原大臣の場合は外国人であるということは承知をしていたということでありますが、寄付がなされていたと言うことは少額であるということから認識していなかったということであります。
そこで宮沢大臣でありますが、宮沢大臣はそもそも当該人物を殆ど知らないということでございました。それは第三者が紹介をして入会したということなんだろうと。そして事実2年で退会をされているわけでございますが、日本法人でありそして法人名からは外国人が過半数を、過半数の株式を保有することは分からない。
また、経営者は日本名を使っていたこともあって、ですね、そこからは類推することはできないということでございました。
問題の本質は(田中慶秋や前原誠司の場合と)随分違うんだろうと、このように思います。ですから、そうしたことを防ぐためにはどうしたらいいかということでございますが、例えば私の場合はですね、私の場合は類推できない方からですね、寄付がある場合も、まあ、あります。その場合は入会のシオリを渡しまして、そこに日本国籍を有する者ということを一応念のためにですね、書いているわけであります。
その方一人ひとりにですね、ある意味そう言うことを問い質すのは失礼にもなり、実際問題として難しいわけでありますから、それをお渡しをしております。
しかし勿論渡しているにも関わらず、偽って寄付をされたら、それは分からないわけでございますが、そう言うことをしているということであります」
今井雅人「総理はそうやって気をつけてやっているということは分かりました」――
今井雅人は在特会幹部との交際の有無について追及先を山谷えり子に変える。
要するに安倍晋三は田中慶秋や前原誠司と違って大塚高司国土交通政務官に関しても宮沢洋一経産相に関しても外国人からの献金は辞任には当たらない問題だと答弁し、認識困難な外国人からの自身の献金防止策として外国籍を有する者等の献金をお断りするシオリを渡すことにしているという危機管理を披露した。
実際にそうしていたのか、外国人献金問題が浮上してから創作したのかどうかは分からない。根拠は問い質すことは失礼に当たると言っているところにある。「寄付を受ける場合は政治資金規正法や公職選挙法は次のような禁止事項を定めています」という前置きの言葉を使いさえすれば、個人的な嗜好ではなく、決まり事として直接伝えることになって、失礼を避けることができるだろうからである。
大体が安倍晋三のようなシオリであっても、政治資金規正法や公職選挙法に関わる禁止事項を分かりやすく一覧表にしたパンフレットであったとしても、単に手渡ししただけでは済まない場合があるはずだ。手渡した相手から説明を求められたり、秘書の方から説明しなければならない場合も生じるはずだ。
今井雅人は安倍晋三の答弁に対して安倍晋三式の外国人献金防止策としての危機管理に理解を示すのみにとどめた。
なぜ安倍晋三と大塚高司国土交通政務官や宮沢洋一との危機管理の違いを追及しなかったのだろう。
10月30日(2014年)当ブログ記事――《安倍晋三の宮沢洋一外国人企業献金問題、「実態を承知していなかった」からと言って免罪されるわけではない - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》に、〈問題を起こす前に寄付を受けた時点で一社ずつ政治資金規正法の禁止事項に抵触するかしないか照会しなかったのだろうか。「補助金等を受けている会社であるかどうか」、「赤字会社であるかどうか」、「日本の企業であっても、外国人もしくは外国企業が株式の過半数を保有する企業であるかどうか」等々、秘書等が寄付を受ける都度照会しなかったのだろうか。
寄附に関するだけではなく、政治資金収支報告への記載その他を含めた秘書等の仕事上の対応のルールを一覧表等に作らせて厳格に守るよう指示するのは政治家・議員の責任であって、政治家・議員の指示に応じて厳格に仕事をこなしていくのが秘書等の責任であり、両者間にそのような関係構造を築くことができて初めて政治家・議員は人事管理上の責任を果たすことができるし、政治資金管理の点に於いても責任を果たすことができる。〉と書き、〈この点に政治資金に関わる政治家の危機管理の欠如とその責任の欠如を見ない訳にはいかない。〉と書いた。
安倍晋三は自身の危機管理を当然のこととして披露することによって、結果的に大塚高司国土交通政務官や宮沢洋一の当然のこととしていない危機管理欠如を曝け出したのである。
危機管理欠如は責任欠如と相互対応の関係にある。政治家として政治資金に関わる責任を果たしていなかったということである。そのような政治家に大臣だ政務官だを努める資格はない。