衆議院選挙は12月2日公示、12月14日投投開票と決まった。11月19、20両日、「共同通信社」が有権者の選挙動向に関する全国電話世論調査を行っている。
「比例代表の投票先政党」
自民党 25・3%
民主党 9・4%
まだ決めていない 44・4%
「望ましい衆院選結果」
与党野党伯仲 51・4%
「安倍晋三の衆院解散表明について」
「理解できない」 63・1%
「理解できる」 30・5%(以上)
有権者の半数以上が次期衆議院の勢力図を与党野党伯仲であって欲しいと望みながら、比例代表の投票先は民主党の3倍近くの25・3%も自民党が占めている。
比例代表投票先は合計79・1%。他の5野党(みんなの党は11月19日解党して、議員の多くは現在無所属となっている。)合わせて20・9%となり、民主党を加えると30・3%となって自民党を超えることができるが、立候補区を住み分けた場合、各野党に対する個々の政党支持率は自民党と比較して少ない数字となって、その影響を受けるだろうし、住み分けずに乱立の形を取った場合、お互いが食い合って自民党を利することになり、合計しただけの力は反映されないことになる。
与党野党伯仲を51・4%の有権者が意志している以上、比例代表の投票先が自民党と民主党が拮抗して初めて理想的な意志の整合性を見ることができるが、そうはなっていない矛盾を抱えている。
「asahi.com」の《緊急世論調査―質問と回答〈11月19、20日実施〉》を見てみる。
(数字は%。小数点以下は四捨五入。質問文と回答は一部省略。丸カッコ内の数字は11月8、9日の調査結果)
◆安倍内閣を支持しますか。支持しませんか。
支持する 39(42)
支持しない 40(36)
◆今、どの政党を支持していますか。
▽自民32(33)
▽民主 5(6)
▽維新 1(1)
▽公明3(2)
▽次世代0(0)
▽共産3(2)
▽生活0(0)
▽社民0(1)
▽大地0(0)
▽太陽0(0)
▽改革0(0)
▽その他の政党1(0)
▽支持政党なし40(48)
▽答えない・分からない15(7)
◆仮に今、衆議院選挙の投票をするとしたら、比例区ではどの政党に投票したいと思いますか。次に挙げる政党の中から一つだけ選んで下さい。
▽自民37
▽民主13
▽維新 6
▽公明 4
▽次世代0
▽共産 6
▽生活 1
▽社民 1
▽大地 0
▽太陽 0
▽改革 0
▽その他の政党 2
▽答えない・分からない30(以下略)
比例区投票先は自民37に対して野党合計33で、かなり拮抗した姿を取るが、これを個々の選挙区に振り分けた場合、やはり多くの選挙区で全体的な政党支持率の影響を受けるだろうから、以上の世論調査の結果からは「与党野党伯仲」といった勢力図を望むことは現状では難しいのではないだろうか。
共同世論調査で有権者が勢力図を与党野党伯仲と望んだ理由は安定多数とか絶対安定多数といった与党圧勝の場合に現出しかねない与党の独裁的な政策遂行の恐れを頭に置いているからだろう。
これは経験で知ったことであるはずである。2012年総選挙で自民党は絶対安定多数の269議席を25議席も上回る294議席を獲得、公明党の31議席と合わせて憲法改正の発議に必要な3分の2の320議席に迫る300議席に達して、議会運営を恣(ほしいまま)にすることのできる切り札を手に入れた。
勿論、切り札として使うかどうかは与党の姿勢にかかっている。使うことによって、独裁的な政策遂行の姿が露わとなる。
「asahi.com」記事によると、2013年11月7日、「特定秘密の保護に関する法律」(特定秘密保護法)は衆議院特別委員会で審議入りし、11月26日まで約45時間の審議を行った。
参議院に移り、2013年11月28日に参議院特別委員会で審議入りし、2013年12月5日まで約22時間の審議を行っただけで強行採決に入って可決、翌日の12月6日に参院本会議で与党賛成多数で可決・成立させた。
記事は次のように解説している。
〈衆院の45時間という数字だけでみると、消費増税関連法案(昨年8月成立)の約129時間▽郵政民営化関連法案(2005年成立)の約120時間▽教育基本法改正案(06年成立)の約106時間――に遠く及ばない。〉――
短時間の審議時間と強行採決を可能としたのは委員会と本会議での与党の圧倒多数という議席数であることは断るまでもない。
但し特定秘密保護法が国民の支持を受けていて、野党のみが反対しているなら、短時間の審議時間に基づいた強行採決は独裁的な政策遂行とはならない。だが、世論調査では賛成を反対が大幅に上回っている。
2013年12月7日実施の朝日新聞の世論調査から主なところを拾ってみる。
「特定秘密保護法の賛否」
賛成 24
反対 51
「国会での議論は十分か否か」
十分だ 11
十分ではない 76(以上)
ついでに「NHK」の世論調査を見てみる。
「特定秘密保護法の評価」
▽「大いに評価する」6%
▽「ある程度評価する」27%
▽「あまり評価しない」35%
▽「全く評価しない」23%
「国民の知る権利侵害の可能性」
▽「大いに不安を感じる」27%
▽「ある程度不安を感じる」46%
▽「あまり不安を感じない」15%
▽「全く不安を感じない」5%
「国会で議論が尽くされたか」
▽「尽くされた」8%
▽「尽くされていない」59%
▽「どちらともいえない」27%
「自民1強体制の是非」
「よいことだ」19%
「よくないことだ」68%
「自民支持層の是非」が
「よくない」56%
「安倍内閣や自民党に国民の声を聞こうとする姿勢を感じるか否か」
「感じる」16%
「感じない」69%(以上)
この結果が当然そうさせたのだろう、両方の世論調査とも内閣支持率を下げている。朝日新聞の場合、前月比49%から46%だが、NHKの場合は前月比マイナス10ポイントの50%となっている。
朝日の世論調査では一強多弱体制に多くの国民が危惧を抱いていることを示している。当時のこの危惧が記憶に残って、今回の共同新聞の世論調査の「与党野党伯仲」願望となって引き継がれたはずだ。
だが、そのように意志しながら、「比例代表の投票先政党」では圧倒的に自民党が占めている。
国民の「与党野党伯仲」願望は集団的自衛権問題に対しても現れているはずだ。世論調査は集団的自衛権の行使に反対が50%を上回り、賛成は40%前後、憲法改正ではなく憲法解釈の変更での対応にしても、同じく反対が50%を上回り、賛成は40以下といった傾向を見せているが、この状況に反して安倍内閣は今年7月に集団的自衛権の行使容認の閣議決定を行い、その行使容認の安全保障法制関連法案を来年2015年5月頃に審議入りする方針でいる。
選挙の結果、自民党の勢力が現状を引き継ぐようなら、国民の反対は無力の状態に置かれる。
「与党野党伯仲」願望を願望のまま終わらせたのでは同じ轍を踏んで、安倍内閣の独裁的な政策遂行を許すことになる。願望を投票行動で実態的に示して初めて、願望は実際の姿を取ることになる。
安倍内閣の独裁的な政策遂行をストップさせるためにも、次の総選挙では自民党の安定多数は阻止し、可能な限り与野党伯仲状態に持っていくべきだろう。