NHK籾井会長1月8日定例記者会見発言要旨情報隠蔽と会長の思想・言論の自由無視の時代遅れの差別と排除

2015-01-10 10:08:32 | 政治


 2014年1月25日のNHK会長就任記者会見で記者の質問に対して「従軍慰安婦の問題はどこの国にもあった」とか、竹島や尖閣の領土問題について、「日本の立場を国際放送で明確に発信していく、国際放送とはそういうもの。政府が『右』と言っているのに我々が『左』と言うわけにはいかない」と発言して一躍時の人となった籾井勝人がそれ以来何度目かを経て、今回再び時の人となっている。

 発端はお笑いコンビの爆笑問題が1月7日(2014年)未明放送のTBSラジオで、NHKのバラエティー番組に出演した際、用意していた政治家についてのネタをNHK側から却下されたことを明かしたことから始まっている。

 《NHK:お笑い番組で「政治ネタ却下」 爆笑問題明かす》毎日jp/2015年01月08日 01時34分)

 1月3日の放送前の打ち合わせで当日のネタのチェックがあり、「プロデューサーに却下され」

 田中裕二「政治家さんのネタがあったんだけど全部ダメって言われた。あれは腹立った」

 太田光「誤解しないでもらいたいんだけど、政治的圧力は一切かかってない。テレビ局側の自粛というのはあります」

 田中裕二「それは色濃くなっているのは肌で感じる」

 太田光代・爆笑問題所属事務所社長(毎日新聞の問合せに)「NHKとの話し合いで、時間調整のためにネタの一部を落としただけだ」(以上参考引用)

 NHK広報局「放送にあたって娯楽番組の通常の打ち合わせを出演者と行った。その中身については普段から答えていない」(コメント)

 太田光代とコンビ側の見解が異なっている。コンビ側が納得していない以上、時間調整が理由であるなら、他のネタを落としてもよかったはずだ。

 太田光が言っている「政治的圧力は一切かかってない」はNHK側から所属事務所に公の形で政治関連のネタは今後一切遠慮して貰いたいといった通知、もしくは要請はなかったという意味なのだろう。

 当然である。もしそんなことをして、事実と証明されたなら、NHKは放送免許取消しに発展しかねない問題を抱えることになる。もしNHK側が政治ネタで問題を起こしたくないという触らぬ神に祟りなしの状況に支配されて、自分たちでそういった放送は控えようという危機管理に囚われていたとしたら、公の形を取った政治的圧力が危険なのは百も承知していて、残された自粛という形で現場現場で個々の問題に対処する方法を選択、危険を嗅ぎ取った政治ネタを放送に乗らない前に芽の内に摘み取っていく手に出るはずだ。

 勿論、自粛するについては国家権力に対する忖度の意思を前提としていることになる。

 もしこういった経緯を取った爆笑問題の政治家ネタのボツであったとしたら、2013年10月のNHK経営委員国会同意人事で安倍晋三は与党多数の力を以って再任の1人を除き新任の4人全てを自身に近い人物を通して、この4人で安倍政権下で任命された経営委員は10人にのぼることから、4人が全て安倍晋三に近い人物ではなかったかという事実を以ってすると、10人全員が同じ類いだとすることが可能となって、そのことが功を奏した経営委員12人のうち9人同意を以てして選任した安倍晋三に近い籾井会長選任と言うことができるし、安倍晋三にとってこのことがなおさら幸いしたNHK放送現場での国家権力の意思忖度を通した自粛である可能性と言うこともできる。

 籾井勝人が今回時の人となったのは1月8日の会長定例記者会見での爆笑問題のラジオ発言に関した発言による。

 実際にどう発言したのか、詳しいことを知りたいと思ってNHKのサイトにアクセス、検索してみたら、見つけることができた。《1月会長定例記者会見要旨》NHK広報局/平成27年1月8日) 

 だが、マスコミが伝えている爆笑問題のラジオ発言もサザンオールスターズがNHK紅白で歌った「ピースとハイライト」の歌詞の政権風刺問題も、一切触れていない。

 記者の質問を並べてみる。

 Q.新年にあたって
 Q.8Kスーパーハイビジョン 今年の取り組みについて
 Q.年末年姑の主な番組について
 Q.全豪オープンテニスの放送について
 Q.第44回番組技術展について
  Q.現在のメディアのあり方について
 Q.国際放送の強化に対する理解について

 NHKの経営そのものに関係しない記者の質問だから省略したという理由も成り立つ。だが、厳密に言うと、NHK会長の主義主張、あるいは歴史認識は経営方針に影響しないとも限らないのだから、どんな発言も経営そのものに関係しないとすることはできない。

 大体が、《籾井勝人会長就任記者会見要旨》NHK広報局/平成26年1月26日)では、一見してNHKの経営そのものに関係しないよう見えても、慰安婦発言も竹島・尖閣の領土発言も記載している。 

 2014年1月26日の就任から2015年1月8日の記者会見までの間に安倍晋三と自民党側からの選挙に関わるマスコミ報道の側に対する政治的圧力が存在した経緯や世の中の右傾化などを考えると、NHKが国家権力の意思を忖度して、1月8日の記者会見要旨に爆笑問題の政治家ネタのボツやサザンオールスターズの政治風刺に関してこれ以上問題を大きくしたくないという自粛の力が働き、一切要旨に加えない情報隠蔽を謀ったと疑うこともできる。

 仕方がないから、マスコミ報道から籾井発言を見てみることにする。

 《爆笑問題の政治ネタ没でNHK籾井会長「個人に打撃、品性がない」》The Huffington Post/2015年01月08日 21時51分 JST)   

 籾井勝人(お笑いコンビ「爆笑問題」が政治家ネタをNHKのお笑い番組で没にされたとラジオ放送で明らかにした件について一般論として)公共放送で、視聴者もいろんな方もいる。お笑いの人のギャグで、ある個人に打撃を与えるのは品性がないと思う。やめた方がいい。

 (記者が政治風刺と表現の自由の問題について考えを問うと)ケース・バイ・ケースだ。

 (サザンオールスターズが紅白で歌った「ピースとハイライト」の歌詞を政権風刺と受け取る見方があることについて)初めて聞いた。歌詞の一つ一つまでは全然聴いておりません。歌合戦ですからね。そもそもサザンの歌って『わーわーわーわー』って歌じゃないですか。言葉よりも、リズムと激しい歌い方が持ち味ですから」(以上参考引用)

 相変わらず頭の悪い品位のない感覚を曝している。

 籾井勝人はNHK会長という公人の立場で記者会見に臨んでいるのであって、私人の立場で臨んでいるわけではない。にも関わらず、NHK会長という公人としての自身の立場を一切弁えずに個人の趣味が分かれるサザンの歌に関する好みを公人として発言する愚昧さを見せている。その頭の悪さ、品位のなさは底知れない。

 記者はサザンの歌詞を政権風刺と受け取る見方があることについて聞いたのである。自分は歌詞を聴いていなくても、政治風刺が風刺として効果を上げるかどうかは、政治家の得意のポーズを滑稽に真似る風刺もあるが、主として言葉に如何にワサビを利かすか、言葉の使い方にかかっている。

 当然、政治風刺として歓迎するサザンのファンは「わーわーわーわー」というだけの歌とは決して受け止めていない。歌う言葉を理解して、それに喝采しているのである。

 政治風刺のみならず、愛の歌であっても何であっても、サザンのファンの多くは言葉を問題にしている。言葉と歌う声の質のマッチに心地よさを感じる。 

 そういった諸々のことを理解できないなら、できないでいい。もし籾井勝人が政権風刺と受け取る見方があることを「初めて聞いた」ということなら、あるいは「歌詞の一つ一つまでは全然聴いておりません」ということなら、さらに「『わーわーわーわー』って歌」としか理解していないなら、「政権風刺かどうかについて答える材料を私は持っていません」と答えるのが公人としての務めであろう。

 そういった務めさえ見せることができない愚かさに取り憑かれている。

 爆笑問題の政治家ネタのボツの問題にしても、政権風刺は風刺の対象(者)に対して何らかの打撃を与えたいという意図の下に行う。例えばその政治家や政党の支持者を一人でも減らしたいとかの意図を込める。

 だが、意図に反して政権風刺を以てして打撃を与えたいと思う政治家程、安倍晋三のようにツラの皮が厚く仕上がっていて、なかなかどうして打撃を与えることができない。何だかんだと言い抜けて、効果を殺してしまう手管に長けている。

 だとしても、どのような政権風刺であっても、思想・言論の自由に基づいて発信される。

 勿論、何でも許されるというものではない。最低限の品位を保っていなければならない。

 逆説するなら、政権風刺が思想・言論の自由として許されている以上、最低限の品位を保っているかどうかを基準にその発信の妥当性は判断させるべきを、頭の賢い籾井勝人は個人としてもNHK会長としても何ら基準を設けず、何ら判断する頭を持たず、政権風刺一般を「品性がない」と決めつけ、排除している。

 この場合の排除は差別を意味する。

 籾井勝人の政治風刺なるものを思想・言論の自由の面から理解するまでに至っていないこの頭の悪さが見せることになっている排除と差別の心理は、ホステスという職業がまだ市民権を得ていない時代、その職業の女性たちを賤しい職業に従事していると蔑んで差別し排除した理由が、あるいは性同一性障害者が社会的認知を受けていない時代、彼ら・彼女たちを奇異な目で見て差別したり排除したりした理由が時代的に理解するまでの能力を持つに至っていなかったことが原因していたのと同じ経緯に基づいて成り立たせているはずだ。

 NHKの自粛と疑われる姿勢も問題だが、サザンの歌を「『わーわーわーわー』って歌じゃないですか」としか評価できない籾井勝人の感覚一つ見ても理解できることだが、こういった思想・言論の自由無視の時代遅れの人間がNHKの会長を務めている。

 
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