安倍晋三の自衛隊の戦闘行為を否定しながら、無理矢理集団的自衛権行使に持っていく支離滅裂な論理性の実態

2015-01-24 09:17:47 | Weblog
                                             
 最初に集団的自衛権武力行使の新3要件を挙げておく。

 自衛の措置としての武力行使の新3要件(2014年7月1日閣議 決定)

①我が国に対する武力攻撃が発生したこと、又は我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること

②これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないこと

③必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと


 要するに「国家存立」と「国民存立」が「根底から覆される明白な危険」が生じた場合は集団的自衛権行使は容認されるというわけである。この「国民存立」なる概念には日本に関しては日本国憲法が規定している基本的人権、その他の権利に基づいた「国民の生命、自由及び幸福追求の権利」に関わる保障が組み込まれていて、それらを基盤とした「国民存立」であることは断るまでもない。

 北朝鮮の国家権力が保障する「国民存立」とは明らかに条件が異なる。

 安倍晋三が集団的自衛権行使のケースを説明するとき、常にこの3要件、特に最初の「国家存立」と「国民存立」の危機を条件として持ち出す。

 以前ブログに取り上げたが、昨年末の総選挙前の2014年12月1日の日本記者クラブでの発言から、安倍晋三の考えを見てみる。

 《日本記者クラブ8党8党首討論会》(2014年12月1日)  

 安倍晋三「集団的自衛権につきましては、これはわれわれ、先般、7 月1 日に閣議決定を行ったところでありまして、一部容認をいたしました。しかし、その際、われわれは厳しい3 要件をつけたわけでありまして、その3 要件とは、『我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由、及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること』ということがちゃんと入っているわけでございまして、事実上、先ほど山口代表が示されたように、他国のいわゆる一般的な集団的自衛権全部を認めることとは違うわけでございまして、そのままにしておきますと、まさにわが国が大変な状況になってくるという状況において行う。集団的自衛権という武力行使においては、そういう歯どめがしっかりとかかっているわけであります。

 来年、法整備を行うわけでありますが、当然、自衛隊を動かしていくときには国会の承認というのは当然必要になってくるだろうと、このように考えております」


 ここに地理的要件が絡んでくる。 

 「国家存立」と「国民存立」が脅かされたとき、脅かす原因を成している事態の沈静化のために自衛隊はどの地域にまで出動が許されるのか。

 これもよく知られていることだが、安倍晋三は一つの例としてペルシャ湾に機雷が敷設されて石油の輸送がストップした場合を3要件に当てはまる事例としている。

 同じく2014年12月1日の日本記者クラブでの発言から見てみる。

 安倍晋三「これは個別の状況、世界的な状況で判断をしなければいけません。ホルムズ海峡が完全に封鎖をされているという状況になれば、これはもう大変なことになって、油価は相当暴騰するということを考えなければいけないわけでありますし、経済的なパニックが起こる危険性というのは世界的にあるわけでありまして、そこでこの3要件とどう当てはまるかということを判断していくことになります。3要件に当てはまる可能性は私はあるとは思います」

  
 ホルムズ海峡がテロ集団や敵対国によって機雷敷設等で完全に封鎖され、石油の輸送がストップした場合は3要件に該当すると発言している。

 当然、そういった状況になったとき、自衛隊がホルムズ海峡迄出動して、米軍等と共に、あるいは単独で機雷除去の作業を行い、タンカーの安全な通行を可能としなければならない。

 但し安倍晋三は自衛隊を出動させる場合の戦況にも条件をつけている。再度日本記者クラブの発言から見てみる。

 安倍晋三「戦闘行為が行われているところに、普通、掃海艇は行きません。掃海艇というのは木でできていますから、そもそも戦闘行為が行われているところに行ったら一発でやられてしまうわけであります。

 そこで、通常は、停戦が完全に行われている状況で、停戦が行われた後、行きますが、しかし、事実上の停戦が行われていても、実際に停戦がなされていなければ、要するに国際法上、機雷を掃海することは集団的自衛権の行使に当たりますから、そういう状況、これはなかなか起こり得ないのですが、想定外ということは許されませんから、そういうときのために、事実上、今回閣議決定を行っている、ということであります。

 事実上、戦闘行為はほとんど行われていませんが、完全な停戦合意は国際条約として結ばれていないという状況というのはあり得るわけでありまして、数カ月間、その間も、しかし、しっかりとやっていかなければいけないという考えでありますが、当然その間、その決定するうえにおいては、三要件に適合しているかどうか、そのうえにおいてさらに国会で判断もいただくことになります」


 論理立った説明が行われていない。危険な臭いを少しでも消そうとするゴマカシの意識を働かせているから、こういった意味がはっきりしないくどくどしい言い方になるのだろう。

 安倍晋三は四つの状況を挙げている。

 ①「戦闘行為が行われている」状況。

 ②「停戦が完全に行われている状況」

 ③「事実上の停戦が行われていても、実際に停戦がなされていない」状況」

 ④「戦闘行為は殆ど行われていないが、完全な停戦合意は国際条約として結ばれていないという状況。

 ①の状況の場合は、自衛隊は出動させない。②の状況の場合は自衛隊を出動させる。③の状況の場合は出動させるとも出動させないとも明言せずに、「そういうときのために、事実上、今回閣議決定を行っている、ということであります」と言っている。

 明言しないところに誤魔化そうとする意識を見ることができる。

 2014年7月1日の閣議決定を見てみる。

 《国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について》 http://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/pdf/anpohosei.pdf

 (ア)我が国の支援対象となる他国軍隊が「現に戦闘行為を行っている現場」では、支援活動は実施しない。

 (イ)仮に、状況変化により、我が国が支援活動を実施している場所が「現に戦闘行為を行っている現場」となる場合には、直ちにそこで実施している支援活動を休止又は中断する。


 ③の「事実上の停戦が行われていても、実際に停戦がなされていない」状況とは、戦闘が現に行われている状況のことだから、「(ア)」の状況に該当させることができるはずである。

 そして④の「戦闘行為は殆ど行われていないが、完全な停戦合意は国際条約として結ばれていないという状況」についても明言がないが、「(イ)」の状況に該当させることもができるはずである。

 要するに停戦合意が国際条約として結ばれていようがいまいが、戦闘が現在進行形の地域には自衛隊を派遣せず、戦闘が過去形の地域のみか未来形の地域(戦闘が将来発生の可能性のある地域)に派遣する。過去形が覆って現在進行形化した場合は、一時撤退か完全撤退させる。

 このことは未来形に関しても同じである。

 これらのことを全てひっくるめて言い替えると、自衛隊に戦闘行為をさせないと言っていることになる。戦闘行為の否定である。

 安倍晋三はシリアでの邦人拘束を受けて訪問先イスラエルで行った内外記者会見でも、このことを裏付ける発言を行っている。
  

 《安倍晋三内外記者会見》首相官邸/2015年1月20日)
 
 古谷日本テレビ記者「少し話題は変わりますが、今月末に開会されます通常国会では安全保障法制が最大のテーマになると予想されますが、総理は、いみじくもヨルダンのアブドッラー国王に対して、「現在作業を進行中だ」とお話されていました。この鍵を握る与党協議はいつから再開されるかとお考えなのか。

 また、公明党の中には集団的自衛権の行使に地理的制約を課すべきだという考えもあるようです。正に、地理的な範囲を広げれば、それだけテロや戦争に日本が巻き込まれる可能性が増えると言えるかもしれません。この論点について、どのようにお考えでしょうか。よろしくお願いします」

 安倍晋三「政府としては、先の閣議決定に基づきまして、安全保障法制の速やかな整備に向けて、精力的に現在準備を進めているところであります。また、自民党と公明党は、新たな連立政権合意の中で、安全保障関連法案を速やかに成立させると改めて確認をしています。

 政府としては、引き続き、部内で十分な検討を行った上で、与党と御相談したいと考えておりますが、与党間の協議については、政府の立場として、コメントすることは差し控えさせていただきたいと思います。

 集団的自衛権の行使については、「新3要件」が判断基準であります。これは国会等でも再三お話をしてきている通りでありまして、武力行使の目的をもって武装した部隊を他国の領土・領海・領空へ派遣する、いわゆる『海外派遣』は、一般に憲法上許されないものと考えており、この考え方には一切変更はありません」


 「武力行使の目的をもって武装した」自衛隊の派遣は行わない。つまり自衛隊に戦闘行為は行わせないと、自衛隊の戦闘行為を否定している。

 であるなら、「国家存立」と「国民存立」が「根底から覆される明白な危険」が生じたとしても、1991年6月5日から9月11日まで行ったペルシャ湾の機雷除去の根拠を自衛隊法の84条の2、「海上自衛隊は、防衛大臣の命を受け、海上における機雷その他の爆発性の危険物の除去及びこれらの処理を行うものとする」の規定に置いて海上自衛隊の通常業務としたように、機雷除去ばかりか、如何なる自衛隊派遣も集団的自衛権行使とは無縁の通常業務とすることができるはずである。

 個別的自衛権の発動すら必要ないことになる。

 ところが安倍晋三は集団的自衛権の行使が必要だと矛盾した言っている。その例の一つを2014年5月28日の国会答弁から見てみる。

 《第186回国会 衆議院予算委員会 第16号》衆議院)  

 安倍晋三「例えば、機雷によってホルムズ海峡が封鎖された場合、ここを通るいわばタンカー等によって日本のエネルギーは供給されているわけであります。つまり、海洋国家である日本が海洋の航行を脅かされたときに、これは、死活的な利益が失われると言ってもいいんだろう。国民の命を守る上において、平和な暮らしを守る上において、重大な影響があります。

 そして、我が国の商船隊の九五%は外国船籍でございまして、当然、外国船舶が攻撃を受けた場合に個別的自衛権の行使で対処することはできないということは、今までの議論の積み重ねによって明々白々であるわけでございます。

 そこで、今委員が御指摘になったように、機雷が敷設され、危険に遭う可能性が高い中、各国が協力して機雷掃海を行っているにもかかわらず、その能力に秀でる我が国が機雷掃海をできなくてもよいのか、各国が共同で我が国の船舶を含む船舶の護衛を行っているのに、そして、その船舶はまさに日本のエネルギーを供給しているものであるにもかかわらず、我が国が護衛に参加しなくていいのかという課題であります」


 集団的自衛権とはある国家が武力攻撃を受けた場合に直接に攻撃を受けていない第三国が協力して共同で防衛を行う国際法上の権利を言う以上、その行使はそのような条件下で武力を行使することを言う。

 集団的自衛を目的に地理的制約もなく自衛隊を出動・派遣するということは「武力行使の目的をもって武装した部隊を他国の領土・領海・領空へ派遣する」ということに他ならない。

 いわば安倍晋三が憲法違反だと言っていることを行うことを意味する。

 そして一方で、安倍晋三は自衛隊の戦闘行為を否定し、尚且つ記者会見で、「武力行使の目的をもって武装した部隊を他国の領土・領海・領空へ派遣する、いわゆる『海外派遣』は、一般に憲法上許されないものと考えており、この考え方には一切変更はありません」と集団的自衛に関わる武力行使を憲法違反だと否定している。

 では、何のための安倍晋三の集団的自衛権行使渇望なのだろう。

 安倍晋三のこの支離滅裂な論理で成り立たせている集団的自衛権行使容認論に整然とした論理を与えるとしたら、自衛隊の戦闘行為の否定は国民向けの架空の説明に過ぎず、「武力行使の目的をもって武装した部隊を他国の領土・領海・領空へ派遣する、いわゆる『海外派遣』」を実態とした集団的自衛権を想定しているとすることしかできない。

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