安倍晋三は二邦人拘束で判明、リスクを恐れないこととリスクに備えることの違いに気づかない底なしの大バカ

2015-01-28 09:57:14 | 政治


 第189回通常国会が2015年1月26日に召集。安倍晋三の所信表明演説は行われなかった。与党絶対安定多数の奢りからだろう。参院与野党逆転状況だったり、衆院与野党勢力伯仲の状況にあったりしたら、野党に対して腰を低くして相対するだろうからである。

 状況の変化に関係なしに一貫した態度を取らずにその時々の状況に応じて態度を変える。軽い人間のすることだ。

 翌1月27日、前日の26日に行われた麻生太郎の平成26年度補正予算の財政演説に対する代表質問という形で安倍晋三にその政治姿勢を問い質す変則的な質疑が衆議院本会議で行われた。民主党の前原誠司が「イスラム国」の人質事件に関わる安倍晋三のリスク管理について追及している。



 前原誠司「『イスラム国』を主張するテロ集団ISIL(アイシル)への対応と中東情勢について伺います。1月20日、ISILによって拘束された湯川遥菜さん後藤健二さんの殺害予告がインターネット動画で配信され、その後湯川さんが殺害された主旨の動画が流されました。事実だとすれば、許し難い暴挙であり、強い憤りを禁じ得ません。

 政府が今、どのような交渉をしているかを問う時期ではありません。人命最優先、そしてテロには屈しない日本としての毅然とした態度を示しながら、政府にはあらゆる努力を行った上で、人質の救出に全力を挙げることを強く求めます。

 もとより、人の命が関わる問題に与野党の違いはありません。政府の懸命な努力に対してできる限りのサポートを行います。

 但し野党第一党として、日本国民の生命と安全を守るため、今後のためにどうしても伺わなければならないことについて伺います。

 湯川さんが拘束されたのは昨年の8月。また11月にはISIL側から後藤さんのご家族に約20億円の身代金を要求するメールが届いたと言われています。他国に於ける自国民保護は国家の大切な仕事の一つであります。湯川さんの拘束が発覚したあと、現地対策本部を設置したと承知をしておりますが、他に報道されている日本人はいないでしょうか。

 同時にこれまでの数カ月、お二人の解放に向けて政府は何を行ってきたのかお答え下さい。

 安倍総理はエジプトでISILと戦う周辺各国に総額で2億ドル支援すると発表し、これが結果として犯行声明に引用されました。イラクのアルカイダを起源とし、現在ある国境を無視し、テロ、殺戮、略奪を繰返すことで新たな国家を建設しようとするISILを到底認めることはあり得ません。

 しかし現に二人の日本人が拘束され、パリではイスラム過激派による許し難い悲惨なテロが新年早々にあったばかりです。ISILと対峙する国々は自国治安レベルを引き上げて警戒を強めている状況にあります。そのタイミングで、ISILと戦う周辺各国に対して支援表明するリスクについてどのように想定していたのか、総理に伺います。

 また戦闘に加わっていない避難民に対する人道支援である日本の中東支援をテロ集団は捻じ曲げて犯行の理由としていますが、テロ集団の意図についてもどう分析しているのかについてもお答え下さい」

 安倍晋三「ISILが拘束する他の日本人の有無、及び邦人人質事件への政府の対応についてお尋ねがありました。ISILによる卑劣なテロは言語道断の暴挙であり、強く非難する。

 湯川遥菜さんのご家族のご心痛は察するに余りあり、言葉もありません。現在、映像が公開された二人の他に人質となっている日本人の情報には接しておりません。

 昨年8月及び11月にそれぞれの行方不明事案発生を把握した直後に官邸に連絡室、外務省に対策室を立ち上げると共に、ヨルダンに於いて現地対策本部を立ち上げ、あらゆるルートや人脈(?)を通じて情報収集や協力要請を行ってまいりました。

 今月20日に湯川遥菜さん、後藤健二さんの両名が拘束された動画を確認した直後に官邸に対策、外務省に緊急対策本部を設置すると共に、中山外務副大臣をヨルダンに派遣し、両名の解放のため最大限の努力をしてまいりました。極めて厳しい状況でありますが、政府としては後藤健二さんの早期解放に向けて全力を挙げてまいります。

 (首相官邸サイトに〈本日(1月20日)15時00分、シリアにおける邦人拘束事案に関し、総理官邸内危機管理センターに、官邸対策室を設置した。〉とある。)

 ISILと戦う周辺各国への支援を表明するリスクについてお尋ねがありました。中東地域の平和と安定は我が国にとりエネルギー安全保障や国際的課題への貢献等の観点から極めて重要です。私の中東訪問の際に1千万人以上の避難民の命を救うため周辺各国に対して人道支援を表明致しましたが、これは国際社会の一員として当然の責務を果たしたものであります。

 リスクを恐れる余り、そのようなテロリストの威しに屈すると、周辺国への人道支援はおよそできなくなってしまいます。我が国は決してテロに屈することはありません。今後共日本ならではの人道支援を積極的に推進してまいります。

 テロ集団の意図についてお尋ねがありました。そもそもテロ集団の意図がどうあれ、彼らの行動については全く正当性がありません。その上で彼らの意図の分析についてこの場で申し上げることは適当ではないと思います」
 

 この両者の遣り取りと他の報道から、政府が湯川遥菜さんと後藤健二さんの拘束情報を把握してから、以後の事態の推移を時系列で振返ってみる。

 2014年8月、湯川遥菜さん行方不明事案発生を把握、首相官邸に連絡室、外務省に対策室を設置。ヨルダンに現地対策本部設置。

 2014年11月初旬、後藤さんの妻の携帯電話に約20億円の身代金を要求するメール。

 2014年11月、後藤健二さん行方不明事案発生を把握、首相官邸に連絡室、外務省に対策室を設置。ヨルダンに現地対策本部設置。

          警察が単発殺人事件だと思ったのが連続殺人事件と判明して、「××連続殺人事件捜査本部」と看板を掛け替えるように両名分の連絡室と対策室を設置した
          ということなのだろう。

          後藤健二さん関する設置は後藤さんの妻へのメールを政府が知らされて拘束を知ったことによる対応ということであるはずだ。

 2015年1月17日、安倍晋三、訪問中のエジプトで開催した日エジプト経済合同委員会で、「中東政策スピーチ」を行う。

 2015年1月20日、両名の拘束動画を確認後、首相官邸・危機管理センターに官邸対策室を設置、外務省に緊急対策本部を設置。中山外務副大臣をヨルダンに派遣。

 確かに連絡室設置だ、対策本部設置だといった規則に則って行う機械的な危機管理対応に不手際はない。多分、完璧にこなしたのだろう。

 但しリスク管理(=危機管理)とは、対策を議論したり、指示したり、情報を収集する場を物理的に用意すればいいわけではないことは断るまでもない。リスク管理の本質は効果ある対策を創造する思考力と、実行する決断力にあるはずだ。

 いわば安倍晋三以下、湯川遥菜さん、後藤健二さん、日本人両名の「イスラム国」拘束からの早期解放のための効果ある対策を創造し、実行することを担った。 

 この役割の遂行こそが、国民の生命・財産を守るということであろう。

 安倍晋三はこの役割を担いつつ2015年1月16日、エジプトを訪問。まさか外遊の間は役割を肩から降ろしていいと勝手に決めていたわけではあるまい。どこにいようと、政府トップの立場で自身も担っている役割を、最低限、少しでも心に留めていなければならなかったはずである。

 翌日の2015年1月17日、日エジプト経済合同委員会で中東政策スピーチ行った。イスラム国を身近にしたエジプトでのスピーチであり、役割を心に留めながらの発言でなければならなかった。

 安倍晋三「中東の安定は、世界にとって、もちろん日本にとって、言うまでもなく平和と繁栄の土台です。テロや大量破壊兵器を当地で広がるに任せたら、国際社会に与える損失は計り知れません。

   ・・・・・・・・・・

 イラク、シリアの難民・避難民支援、トルコ、レバノンへの支援をするのは、ISILがもたらす脅威を少しでも食い止めるためです。地道な人材開発、インフラ整備を含め、ISILと闘う周辺各国に、総額で2億ドル程度、支援をお約束します」――

 イスラム国を身近にしてテロの脅威を肌に感じていたはずだが、中東に於けるテロの根絶と大量破壊兵器の拡散阻止を訴え、「イスラム国」そのものの脅威の食い止めを呼びかけ、そのための総額2億ドルの支援だと宣言した。

 果たしてこの箇所の発言が2名の日本人解放というリスク管理上の役割を担った、あるいはその役割を少しでも心に留めた発言と言うことができるだろうか。

 小沢一郎「生活の党と山本太郎となかまたち」代表が1月25日のNHK「日曜討論」で、「安倍さんが,わざわざ中東まで行って『イスラム国』にとっては宣戦布告と言える記者会見をした」と批判したが、日本人2名を拘束して、身代金を要求している最中の「イスラム国」がこの個所の安倍発言を以って彼らに対する宣戦布告と見做したとしても不思議はない。

 いわば身代金要求に応じないで、「イスラム国に対する十字軍に進んで参加した」という表現で逆に宣戦布告で応じたと見做した。

 そこで「イスラム国」は強攻策に出ることになったはずだ。1月20日近辺で釈放条件として2億ドルの要求と、要求に応じない場合は72時間の期限を設けた殺害予告の動画をネット上に配信した。

 首相官邸と外務省は規則に則って物理的な行動を実行に移すリスク管理については卒なく発揮することはできたが、効果ある対策を創造する思考力と実行する決断力等のインテリジェンスの面でのリスク管理能力を欠いていた。

 もし安倍晋三一人が欠いているなら、周囲が注意すれば、それなりのリスク管理ができたが、全員が欠いていたから、こういった結果を招いたということなのだろう。

 安倍晋三が一国のリーダーでありながら、そのリーダイにふさわしくなく決定的にリスク管理を欠いている証拠が今回の代表質問での次の遣り取りに如実に見て取ることができる。

 前原政治は次のように質問した。「ISILと対峙する国々は自国治安レベルを引き上げて警戒を強めている状況にあります。そのタイミングで、ISILと戦う周辺各国に対して支援表明するリスクについてどのように想定していたのか、総理に伺います」

 この発言を言い替えると、二邦人解放に関わるリスク管理上の役割をどう想定し、どの程度踏まえて発言したのか、いわばどの程度心に留めていたかを尋ねた。

 対して安倍晋三は、「リスクを恐れる余り、そのようなテロリストの威しに屈すると、周辺国への人道支援はおよそできなくなってしまいます。我が国は決してテロに屈することはありません」と答弁した。

 この答弁は自身の役割を二邦人解放というリスク管理上の役割を脇に置いて、テロリストの脅しに屈しない周辺国への人道支援のみにに置いた発言ということになる。リスクを恐れないこととリスクに備えること(=リスク管理)の違いに気づいていなからこそ口にすることができる発言である。

 なぜなら、リスクに十二分に備えた上でリスクを恐れない行動や発言を順番としなければならないからだ。

 だが、リスクに何も備えずにリスクを恐れない人道支援表明を行った。そしてその後の経緯がこのことを証明している。

 もし攻守交代させていたなら、いわば二邦人解放というリスク管理上の役割を少しでも心に留めておくことを最初の順番に持ってきていたなら、こういった発言にはならなかっただろうし、心に留めていなかった以上、「湯川遥菜さんのご家族のご心痛は察するに余りあり、言葉もありません」は単に儀礼的に発した形だけの言葉でしかないことになる。

 安倍晋三はリスクを恐れないこととリスクに備えることの違いに気づかない底なしの大バカだとしか言い様がない。

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