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陸上自衛隊 春日井駐屯地創設42周年記念行事 観閲行進

2009-03-10 23:31:30 | 陸上自衛隊 駐屯地祭

◆春日井駐屯地祭[2009.03.08]

 春日井駐屯地祭2009、詳報の第二回は、観閲行進についての特集である。後方支援連隊、施設大隊、偵察隊の様々な装備が行進する姿は、多種多様な状況に対応するべく努力する陸上自衛隊の意気込みが伝わってくるものだ。

Img_2475  観閲行進の先頭は、連隊長を支える第10後方支援連隊の幕僚たちが車両から観閲台の司令に向かい敬礼するところから始まる。春日井駐屯地の観閲行進は、駐屯地の装備が機械化されていることから、普通科部隊のような徒歩行進は行われず、すべてがテンポの速い車両行進により進められる。

Img_2474  観閲台と行進部隊。観閲台の周囲は、スタンド席となっており、スタンド席は、観閲台寄りの場所が招待席。その左右が一般席となっている。スタンド席はもうひとつあり、小生一行は、そのもう一つのスタンド席より撮影した。観閲行進を正面から見ることができる好位置にあり、眺望は抜群だ。

Img_3743  観閲行進の先頭を行くのは、第10後方支援連隊の車両。第10後方支援連隊は、第10師団隷下にある東海北陸地方の6県へ配置された部隊に対して、整備や補給、輸送に衛生などの後方支援の面を担当する部隊である。写真は、第1整備大隊の火器車両整備中隊に所属する車両。後部のコンテナにて、精密部品の整備や修理を行う。

Img_2512  後方支援連隊は、連隊本部・司令部付隊を筆頭に、全般的な整備を行う第1整備大隊、部隊に随伴して整備支援を行う第2整備大隊の二つの大隊と、補給隊、衛生隊、輸送隊より成る。写真は、補給隊の73式3トン半燃料輸送車。補給隊の編成は、需品補給小隊、部品補給小隊、業務小隊より成る。

Img_3747  第1整備大隊本部付隊の重レッカー車。故障車両のけん引や重車両のエンジン交換などに用いられる。この重レッカー車が二台協力することで、96式装輪装甲車などの回収も可能となっている。なお、第1整備大隊の編成は、大隊本部付隊、火器車両整備中隊、工作回収小隊、通信電子整備隊、施設整備隊より成る。

Img_2537  輸送隊の中型セミトレーラ。後部には、74式特大トラックが載せられている。なお、第2整備大隊は、四個普通科直接支援中隊、戦車直接支援中隊、特科直接支援中隊、高射直接支援隊、偵察直接支援隊が配置されており、今津駐屯地や金沢駐屯地、豊川駐屯地、守山駐屯地に展開し、装備の整備などを直接支援するという形を採っている。装甲車の増強やミサイル装備の充実などを背景に行われた措置だ。

Img_2547  衛生隊の観閲行進。衛生隊は、本部、治療中隊、救急車小隊より成る編成を採っている。後方に野戦病院を設置し、負傷者の救命などにあたるとともに、第一線から野戦病院への負傷者の搬送を行う。負傷者に救命措置を施し、迅速な治療を行うことで、戦線復帰を早めるとともに、負傷しても命は助かるという体制を組むことで、士気を高揚させることができる。

Img_3774  73式中型トラックを用いた救急車。車体後部を救急車とした車両で、用途は一般の救急車と同じである。ただし、救急車は不整地に対しても一応の走行能力を維持できる73式中型トラックを用いているため、通常の救急車では入れないような場所に対しても出動することができる。可能なら、より不整地突破能力の高い高機動車や弾片に対する防御力を有する軽装甲機動車を元にした救急車も必要なのではないか、とおもうのだが。

Img_2551  野外手術システム。手術車・手術準備車・減菌車・衛生補給車を連結させて手術を野外にて行うためのシステムで、執刀医と助手、麻酔要員、器械要員、X線要員、臨床検要員、準備要員など7名が勤務する。戦闘により負傷した者に対して、初期外科手術を一日当たり10~15名、こなすことができる。

Img_2557  第10施設大隊の大隊長田平秀晴2佐が観閲台の間瀬駐屯地司令に向けて、敬礼。ここから、第10施設大隊の観閲行進である。第10後方支援連隊は、後方部隊であるが、施設部隊は、後方での任務とともに、最前線での戦闘支援任務にもあたる部隊であり、その運用の一端が観閲行進にあたる装備からも見て取れる。

Img_3794_2  発煙機3型、施設科部隊の任務は、戦闘支援であるため、作業中は脆弱な部分を曝している。このため、攻撃を避けるべく発煙装置により、広範な地域を多い、作業を行う。本部管理中隊に所属しており、中隊には交通小隊、渡河器材小隊、通信小隊、衛生小隊、補給小隊、偵察班などが編成に盛り込まれている。

Img_3802  第10施設大隊の観閲行進、大型の車両の一団が行進する。車両は、81式自走架柱橋。本部管理中隊に所属し、74式戦車をはじめとする師団のすべての装備を渡河させることが可能な橋梁を迅速に設置するための装備である。河川の多い日本の国土を防衛する上で、重要な装備である。1台で10㍍の橋を架けることができ、繋ぎ合せて長い橋梁を構築する。

Img_2603 渡河ボート。架橋装置は最前線では使い難く、特に架橋作業は多くの車両が終結して行われるため見つかりやすく、夜間に無灯火で行われる。この渡河ボートは、架橋作業に先んじて、必要な装備を対岸に輸送する等の用途に用いられるほか、洪水などの災害時にも威力を発揮する。二つに分解して、このように牽引輸送。

Img_3813  グレーダー。地均しをする為の装備である。施設大隊の任務は、師団が必要とする補給路を航空攻撃や砲撃による損傷から復旧させ、後方支援の拠点までの兵站線を維持すること、そして、攻撃前進の際には敵が構築した障害を除去すること。防御の際には野戦築城を行い、敵の前進を阻む障害や味方の陣地を構築することにあり、グレーダーも必要な装備の一つである。

Img_3820  83式地雷敷設装置。トラックから牽引し、対戦車地雷を迅速に敷設するための装備。対戦車地雷は、戦車に対して有効な打撃を加えることが可能な装備であり、同時に、地雷原を迅速に構築することで、わが方が状況を有利に打開するまでの必要な時間を稼ぐための装備である。

Img_3833  道路障害作業車。第2中隊の所属車両。この車両は、73式大型トラックの後部に、クレーンやコンクリートカッター、ドリル、ウインチなど六種類のアタッチメントを装備することができるもので、これを駆使して、例えばアスファルトで舗装された道路や建築物などを障害物に置き換える、もしくは作り変えることができる装備。

Img_3835  トラッククレーン。第1中隊の所属と書かれている。20㌧の重量を有するものを吊り上げることができる装備。この種の装備品は、塗装こそ違えど、民間の企業が行う工事現場でも見られるものが多く、流用されているものが多い。この点、防衛装備品というと特殊なもののような響きがあるのだけれども、民生品との垣根が有って無いようなものも多いのだな、という印象だ。

Img_3843  ダンプカーの行進。各施設中隊から集められた装備のようだ。第10施設大隊は、四個施設中隊より成る編成を採っている。ダンプカーは、兵站線に用いる道路などが航空攻撃や砲撃で破壊された際に、土砂などを運搬し、復旧させるために用いられる。また、陣地構築などにも用いられる装備である。

Img_3852  ダンプカーが後部を高く上げて観閲行進に参加。大久保駐屯地の名物(?)、春日井で、ダンプがこのように行進するのは今回が初めてなのではないだろうか。ダンプカーも、日常よく見かける車両なのだが、このように多数のダンプカーが、後部を高く上げて集団で走行する姿は、駐屯地でなければ見ることが出来ない。

Img_2568  観閲行進の際に、当然ながら写真には音は写らないのだけれども、長い観閲行進の間、音楽隊の隊員が、勇壮な行進曲の演奏を続けている。写真も背景に少し写っているだけであるが、守山駐屯地の第10音楽隊の隊員たち。公式行事の度に音楽演奏のために参加しており、日曜日という単語から最も遠い部隊、大変な仕事であり頭が下がる。

Img_2578  ブルドーザーを運搬する中型セミトレーラー。兵站線の維持から野戦築城まで、不可欠な装備であると同時に、工事現場でも見かけるような、“はたらくくるま”と同じく、この種の車両は、自走して長距離を移動することができないため、セミトレーラーのような輸送車両を用いて移動することは不可欠だ。

Img_2587  掩体掘削機。一瞬、油圧ショベルにみえるのだが、アームの中央部分が回転して、バケット部分を横向きにして穴を掘ることができる。陣地構築には不可欠な装備品だ。また、傾斜地でも作業ができるようになっており、個人用掩体などはもちろん、掩砲所の構築にも用いることができる。欠点は、特殊な機構をアームの中央に有するため、バケットの容量が同種の油圧ショベルと比して少ないことだ。

Img_2597  施設大隊の観閲行進が終了。第10施設大隊には、このほか、敵弾下での作業を可能とした、75式装甲ドーザーや、広範囲の地雷原を強力な爆導索で一度に無力化する92式地雷原処理車などが装備されているのだが、観閲行進には参加しなかった(75式装甲ドーザーは装備品展示にて紹介されていた)。

Img_2613_2  第10偵察隊の観閲行進。82式指揮通信車の車上から、第10偵察隊長の荒井正芳2佐が敬礼している。春日井駐屯地は、後方支援部隊の駐屯地、というイメージがあるのだが、機関銃を装備する指揮通信車を先頭にした第10偵察隊の観閲行進をみると、その印象は変わってくる。

Img_2613  師団の先頭に立ち、情報収集を行う第10偵察隊の観閲行進。偵察とは、相手の勢力を推し量ることを意味し、普通科連隊や戦車大隊の本部にある情報小隊が行う斥候とは敵の有無を調べるもの。偵察隊は、敵対勢力と最初に接触し、その規模を反応から調べる任務にあたる。もちろん、抵抗が弱ければ、偵察隊が撃破して、次の敵を探すべく前進する。

Img_2628  82式指揮通信車。通信機を搭載し、指揮命令を行うための車両。12.7㍉重機関銃M2と、7.62㍉口径の62式機関銃を搭載して運用されていたが、今回の観閲行進では、作動不良や部品脱落などが多いとされる62式機関銃に代えて、信頼性が高いとされる5.56㍉機関銃MINIMIが搭載されていた。

Img_2636  偵察オートバイの一群が目の前を爽快に走り去ってゆく。背景に見えるオートバイは、即応予備自衛官が搭乗している。オートバイ斥候は、その速度を活かし、敵に忍び寄り、情報を収集する。なお、第10偵察隊は、隊本部、本部付隊、電子偵察小隊と、三個偵察小隊より編成されている。

Img_2658  偵察隊が威力偵察を行うための装備が、この87式偵察警戒車。六輪式の装輪式装甲車で、25㍉機関砲を搭載した砲等を有し、相手に攻撃を加えて、その反応をみることで、勢力の規模を計る為の装備。砲塔には微光倍増式暗視装置も搭載されているほか、対地レーダーなども搭載ができる。

Img_2673  88式鉄帽とともに、旧型の66式鉄帽を被った隊員が車上に立つ。即応予備自衛官とは、12年前に開始された制度で、自衛官経験者から希望者を募り、年間30日程度の訓練を行うことで、高い練度を保ち、防衛出動や災害派遣の際に召集を受ける。通常の予備自衛官制度よりも、訓練期間が長い。こうして、偵察隊の殿のもと、観閲行進は終了、訓練展示の準備へと移行した。

HARUNA

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コメント (2)
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