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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

北朝鮮、衛星搭載の長距離弾道ミサイル発射試験実施を公表 自衛隊の迎撃準備進む

2009-03-29 23:51:41 | 防衛・安全保障

◆日本への落下を警戒

 本日は、北朝鮮が4月上旬に行うとしている長距離弾道ミサイルに試験に伴う落下物への警戒にあたる自衛隊について、幾つかの誤解を防ぐための視点を提示したい。

Img_9940  北朝鮮の長距離弾道ミサイルにも転用可能なロケットによる人工衛星発射試験について、日本への落下の危険性が生じた際に備えての破壊措置命令が政府から自衛隊に発令、市ヶ谷の防衛省本省ではペトリオットミサイルPAC-3の展開状況が報道陣に公開され、浜松基地からは高射教導隊のPAC-3が60台、秋田と岩手の自衛隊施設にて展開するべく陸路と海路で出発した。ただ、このミサイルは、誤解が無いよう特記すると、ミサイルが落着する地域に展開し、迎撃するためのものであり、ミサイルが日本に落下せず、高高度を通過した場合、迎撃は行われない。

Img_71891  1998年のミサイル発射実験では、日本本土上空を通過されたことが問題となったが、今回は、落下を防ぐのが目的なので、もしかしたらば、通過されたことでもって、迎撃出来なかったという報道が日本メディアにより、なされる可能性もあるが、失敗ではなく、日本で被害が出なかった(風評被害(?)を除く)時点で、成功である。昨日には、横須賀基地から弾道ミサイルを撃墜することが可能なスタンダードミサイルSM-3を搭載したイージス艦、こんごう、ちょうかい、が佐世保基地から日本海へ出航。同じく弾道ミサイルを追尾することが可能なようにシステムを改良した、きりしま、が警戒任務を受けて横須賀基地を出航し、太平洋に向かった。

Img_84542  しかし、臨戦態勢!というような印象は受けるものの、米軍を見るとそこまでの緊張感は伝わってこない。昨日のアメリカ海軍厚木基地さくら祭りは予定通り行われている。地上展示機は、当たり年といわれ、ミサイル発射による、日本本土への被害を想定し、虎の子、第五空母航空団が警戒態勢に入っている、という状況ではなく、艦載機も通常通り。海上自衛隊のUP-3Cも、基地の隅にて翼を休めていた。厚木基地さくら祭りは、ご覧のとおり、なかなかの盛況で、こうした米軍の様子も、メディアは報道するべきなのではないかな、とも思う。弾道ミサイル試験の最大の脅威は、報道により、自衛隊の能力が過小評価されて伝わるという、一種の“被害”の方が大きいのかもしれない。

Img_7131  横須賀基地の空母ジョージワシントンも、弾道ミサイルの接近を警戒して太平洋に一時避難、ということはなく、横須賀基地のアメリカ海軍施設に停泊している。みたところ、発艦に必要な蒸気カタパルトの整備に入っているようだ。第七艦隊のイージス艦も、かなりの数が停泊しており、警戒態勢という印象からはほど遠いものだ。写真は水曜日撮影。テレビ報道を前にすると、次々と出航するイージス艦や長躯展開するペトリオットミサイルの車列を前に、とうとう始まったか!、遂に来た!と、熱くなりそうだが、横須賀と厚木はご覧の様子である。

Img_7126  北朝鮮は、長距離弾道ミサイルに人工衛星を搭載した、人工衛星の試験である、と発表しているようだが、一方で、短距離弾道ミサイルや中距離弾道ミサイルの試験も同時に行われるのでは、との声もあるようだ。中距離人工衛星、短距離人工衛星というものはあり得ないので、もし行われれば、最初の長距離のものも、人工衛星の実験という偽装のもとで実施された弾道ミサイルの試験であった、と自ら公表することにもなる、もっともこの情報の信憑性のほどは定かではない。少なくとも米軍をみたところ、そこまでの警戒態勢という印象はない、自衛隊の展開は、日本の国内世論を意識したものなのかな、とも思えた次第。ただし、日本本土への被害が万が一でも想定されるならば、万全の準備を行う、という姿勢には敬意を表したい。一方、浜松基地を出発するペトリオットの車列には、本体が内蔵されたペトリオットの中に、報道映像を見る限り、米軍迷彩のものが混じっており、急遽、自衛隊に供与されたものがあったというのが見て取れた。やはり、同盟国ということで、困っている時には手を差し伸べてくれるのだな、と心温まる情景でもあった。

HARUNA

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コメント (7)
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