◆春日井駐屯地祭[2009.03.08]
春日井駐屯地祭2009、詳報は、駐屯地の部隊が整列しての式典編、各種装備が行進曲と共に進む観閲行進編に続いて、今回で第三回目にあたる。
観閲行進の後に行われるのは、訓練展示である。訓練展示は、第10偵察隊によるオートバイドリル展示と、後方支援連隊に偵察隊、施設大隊が参加して行われた訓練展示模擬戦と、分けて実施された。既に訓練展示模擬戦の準備として、軽装甲機動車や偵察警戒車などが並んでいるのがみえる。
第10音楽隊による音楽演奏。第10音楽隊は、第10師団の直轄部隊で、守山駐屯地に駐屯しているが、この春日井駐屯地祭のような、第10師団隷下の部隊が駐屯する駐屯地の創設記念行事では、重厚な式典の演奏から、軽快なマーチまで演奏して式典に華を添える部隊である。
音楽演奏が終了すると、73式大型トラックが二台、式典会場の中心に入場してきた。これから何が始まるのか分からない人たちは首をかしげるところであるのだが、大型トラックの荷台からエンジン音が聞こえてくると、察しのいい人が気付きだすのだが、気づかない人は双発車?などと考えているのかもしれない。
エンジン音と高まりが頂点に達するとともに、開始の合図が春日井駐屯地いっぱいに響き渡り、勢いよく、73式大型トラックの荷台の幌が取り払われ、オートバイが次々と飛び出してくる。これが師団の目、第10偵察隊の精鋭、オートバイ斥候部隊によるオートバイドリルが開始された瞬間だ。
斥候部隊がトラックの荷台から次々と飛び出してくるという、意表を突く登場を果たしたオートバイは、そのまま一隊に集うと、駐屯地司令が座る観閲台に向けて整列。基本的に市販のオフロードバイクを元にした斥候オートバイなのだが、並ぶと、いきなり迫力が増して見えるのが凄いところだ。
こうした中、背景では第10偵察隊の隊員によるロープ降下の実演が行われていた。かなり、貴重な瞬間なのだが、実施した時間帯が悪かった。オートバイが飛び出す合図に使われた擬爆筒の煙が、まだ漂っており、悲しいかな、迫力の瞬間は白煙の向こう。隠密行動を旨とする斥候の象徴のような一コマになった。
オートバイドリルの開始。偵察隊の任務とは、実際に師団主力部隊に先んじて前進し、最初に敵対勢力と接触、戦闘を交わしてその総力を推し量り、抵抗が弱ければ偵察隊が撃破して前進し、堅固な抵抗に面した場合、偵察隊が戦闘により得られた情報を元に、師団が火力戦闘を展開することにある。
偵察部隊は、もともと軽戦車、今日的には中隊規模の戦車部隊を中核として編成されることが多いのだが、陸上自衛隊は、世界でも珍しく、オートバイによる偵察と斥候を重視している。この背景には、冷戦時代、陸上自衛隊が想定していた勢力が強力な機械化部隊と機甲部隊を有しており、この方式を行うのが非常に困難であったため、という点があるのではないかと思う。
偵察隊には、可能ならば斥候要員を多数乗せることができる89式装甲戦闘車や、チェンタウロのような強力な火力を搭載した戦車駆逐車を装備して威力偵察を行うことが望ましいのだが、他方で、オートバイ斥候は極めて素早く軽快に移動することができ、戦車でも撃破することが難しく、この方式も、日本本土への師団規模の直接武力侵攻を想定するならば、妥当なのかな、とも思える。
オートバイ斥候は、極めて厳しい状況に際しても確実な情報を得るために、厳しい訓練を続けており、この技術は、災害派遣に際しても、通常では考えられないような地域に進出して、情報収集や情報伝達を行うことができる。他方、一つ必要な装備ではないかと考えるのは、情報を画像も含めリアルタイムで上級司令部に送信する手段の搭載であろう。
物凄いスピードにて、ジャンプ台を飛び跳ね、高速で行き来し、低速でも確実な運転をこなした第10偵察隊のオートバイは、最後には見事なウィリーにより、会場から去っていった。オートバイドリルが終了すると、今度は、空包が弾ける迫力の模擬戦へと展開する。この様子は、次回お伝えしたい、お楽しみに。
HARUNA
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