◆軽量・機動性から重装備・大火力へ回帰なるか
政府筋の発言として、北朝鮮のミサイルが発射されても、日本の迎撃システムでは撃墜出来ない、これまで憲法問題を含め放置してきたことを悔やんでみているしか無い、との発言が行われたとのこと。技術は、可能にするために行われるものであり、国民保護の具体案の提示はもとより、その努力も放棄した発言者は、すぐに辞職するべき、と思う今日この頃。
閑話休題、本日は、陸上自衛隊の装備体系の展望について、軽量化と普通科重視、機甲科特科軽視の風潮があるが、もうひとつの視点を提示してみたい。AH-64D戦闘ヘリコプター。高性能と鳴り物入りで導入されたものの、日本の複雑な地形と陸上自衛隊の運用体系では合致せず、高い調達価格と相まって、少数機を教育部隊、恐らく将来的には一部の飛行隊に集中配備するほかなくなった装備である。
しかし、陸上自衛隊では、現在、国際人道支援任務に対応させるべくCH-47JA輸送ヘリコプターに対してエンジンの高出力化と防弾板の配置、衛星電話の装備に加え、チャフ・フレアディスペンサーの追加などを行っている。これは、繰り返し、派遣を求められているアフガニスタンへのヘリコプターの派遣に備えているのではないか、という視点がある。
これまで、自衛隊の派遣任務は、非戦闘地域への派遣という前提のもと行われてきたが、彼我混合の錯綜した地域の通行を想定し、これまでも、重機関銃を装備した装甲車などの派遣を行ってきているが、武装勢力が再び台頭しイラク以上に混迷の度合いをみせているアフガニスタンに対して、輸送ヘリコプターを派遣するということは、将来的にAH-64Dの派遣を行う必要も出てくるかもしれない。高山地帯では、既存のAH-1Sでは対応できないためだ。
現在、アフガニスタンは、地上の補給路が武装勢力の攻撃にさらされ、危険性が高まっているということもあり、ヘリコプターによる輸送が重視されるようになってきており、対して、4000㍍級の峰々の上空で、実用上昇限度すれすれの高度を飛行するヘリコプターに対して、重機関銃や携帯ロケット砲は、極めて深刻な脅威として捉えられている。
このため、必要性として、陸上自衛隊がAH-64D戦闘ヘリコプターを護衛のために派遣する、という必要性が生じることも考えられる。もちろん、現時点では、“強力な装備”である戦闘ヘリコプターの派遣には、感情論を含めた問題が生じそうではあるが、現実的に必要性が生じれば、終了予定である調達計画に対しても再検討の機会が生じてくるかもしれない。
また、防衛大綱改訂のたびに、定数が削減される戦車であるが、今後、陸上自衛隊も国際貢献任務、特に国際平和維持活動における停戦監視などで、強力な監視装置と、充分な防御力、万一の際の不整地突破能力に加えて、充実した火力を有しているため、戦車という重装備が再評価されることもあるかもしれない。
加えて、テロとの戦い、ゲリラコマンド対処などで普通科重視が叫ばれながらも、高い調達費用により、配備が広範には実現しなかった、重装甲で大火力の装軌式装甲戦闘車についても、再評価される可能性も生じてくる。アフガニスタンでは、軽装備の車両が、RPGのような携帯対戦車兵器に対して十分な防御力を有しない、ということから、戦車や装甲戦闘車などの配備を行う国が増加している。
もちろん、重装備軽視、装輪式装甲車重視の調達体系が間違っていたのかと問われれば、違う。軽装甲機動車は全国の普通科部隊を軽装甲ではあるが、大きく装甲化し、96式装輪装甲車は60式装甲車や73式装甲車の後継として十分な数を、他の装備調達と両立して一気に進めることができたことを忘れてはならない。求められている任務が変わりつつあるなか、再び、“重い強力な”装備が再評価されるかもしれないだろう。
HARUNA
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