◆F-4後継機にF-2の英断が必要か
戦闘機の生産技術のあり方に関する懇談会の第三回会合が9月16日に行われ、その概容が発表された。概容を俯瞰した印象は、F-2生産継続を含め英断が必要というもの。
防衛省で実施された戦闘機の生産技術のあり方に関する懇談会では、航空機用エンジンやアビオニクスの生産基盤の概況が、日本航空宇宙工業会より説明されたとのこと。状況はかなり悲観的なものであり、戦闘機の現在の国産能力や稼働率を維持するためには、黙示的になんらかの決断が必要ということになる。
さて、F-35であるが、資料に関して必要ならば10億円が必要であるとのアメリカよりの返答を得た。資料のほか、ステルス性については調達が決定した後での資料提供となる見込み。今だ完成せず、参入すればどれだけの予算を必要とするか分からない航空機に参入するのは、F-22に固執する以上に時間の無駄である。日本仕様輸出型のF-35Dを独自に製造できるのならば話は別なのだが、それは無理だろう。航続距離、武装搭載能力その他で、F-Xとしては、かりに調達価格が暴落してF-2よりも安くなるでもしなければ、必要な機体ではない。
話題を懇談会に戻そう。F-2支援戦闘機用のF110エンジンが再来年の平成23年5月の出荷を最後に新造がゼロとなり、再来年までに戦闘機用エンジンの再生産の見通しをつけなければ、自動的に戦闘機エンジンの生産技術は失われる。蛇足ながら、ビジネスジェットの生産などでは、戦闘機用エンジンに転用可能な技術を維持することは出来ず、台湾の経国などがその困難さを端的に示している。
戦闘機用レーダーについても、問題があり、戦闘機そのものは定期整備で、エンジンも耐用年数限界に伴う追加発注を行う余地があるのとは対照的に、戦闘機用レーダーに関しては定期整備という重要がないことから、生産終了はそのまま生産能力の喪失につながるという大きな問題がある。
戦闘機用レーダーは、地方レーダ装置や民生品などのレーダーとは事成る特性があり、加えてエンジンと共に戦闘機の中核部分であることから、他の業種に転用することで生産基盤を持することは非常に難しいということを戦闘機の生産技術のあり方に関する懇談会では、発表されているとのことだ。
他方で、防衛産業の需要では企業の存続が不透明な状況にあっては、特に防衛産業を支える下請けの中小企業が、防衛産業分野からの撤退を検討しているという事になり、部隊運用支援能力、有事の際の緊急増産、新機種のライセンス生産に問題が生じるであろうと結論付けられている。
ただし、戦闘機の有事における緊急増産は、戦争期が発注されてより完成し引き渡されるまでに一年半から二年の時間を要し、どういった有事を想定するのかにもよるが、本土直接武力侵攻のような状況では、二年間戦闘機が完成するまでの前線維持は非現実的と言わざるを得ない。他方で、部隊稼働率という面では、NATOのように周辺に支援する国があるという立地は無く、周辺諸国で整備基盤を有するのは、米本土のみとなってしまい地理的に不利である。
最終的に現在の機数で防空体制を維持するには、国産能力の維持が不可欠である。もっとも、イスラエル空軍並に機数の充実にシフトし、F-4戦闘機90機をF-16Cの250機程度で代替するのならば別の話だが現実的ではない。米国で生産されているF-2の部品を国内生産に、生産設備ごと買い取るか、企業買収などで吸収合併するなどして、F-2支援戦闘機の生産を維持し、戦闘機の国産技術を維持する選択肢を、模索してはどうかと思った次第。
HARUNA
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