◆原子力推進にも応用される技術
戦闘機の生産技術の基盤について、今後戦闘機の生産が縮小される関係上、その維持が危機に曝されていることは、何度かお伝えした。
しかし、現在、別の技術が、技術革新に伴う方式の転換により消失されようとしている。その技術は、水上戦闘艦の技術に関しては、転換することでの欠点よりも技術革新に伴う利点の方が大きいが、海上自衛隊が将来、潜水艦の方式に新しい選択肢を加えようとした時に、大きな問題が生じる可能性がある。
アメリカ海軍のロスアンジェルス級攻撃型原潜。攻撃型原潜は、敵の戦略ミサイル原潜や空母戦闘群への脅威となる巡航ミサイル原潜を駆逐し、原子力機関による実質的に無限の推進力を以て、艦隊の前哨を司り、必要に応じて巡航ミサイルによる対地攻撃も担う艦隊の重要な役割を担っている。
原子力推進方式は、原子炉を利用しているものではあるのだが、同時に原子力により得られる熱エネルギーは、蒸気タービン方式のシステムを利用して、推進エネルギーなどに転換している。蒸気タービン方式といえば、水上戦闘艦としてはガスタービン方式と比べた場合、非常に古い印象がある。
現在、海上自衛隊の蒸気タービン推進艦は、はるな型ひえい、しらね型しらね、くらま。そしてミサイル護衛艦たちかぜ型さわかぜ、の四隻のみ。はるな型のネームシップはるな、は3月18日に除籍され、先ごろ、ひえい、後継となるヘリコプター護衛艦いせ、が進水式を迎え、ガスタービン化がさらに一歩進む。
ガスタービン推進方式やディーゼル推進方式に完全に転換した場合、海上自衛隊が有する蒸気タービン推進方式の教育システムがその価値を失い、さらに整備関連技術も自動的に喪失してしまう。陸上の設備に転用して技術維持を図ろうとしても、艦艇技術に再び普及させるには、大きなコストを要する。
もちろん、海上自衛隊が、ガスタービン方式とディーゼル推進方式に転換し、潜水艦の推進技術に関しては、ディーゼル方式、スターリング機関や将来的には燃料電池方式を含めた蒸気タービン推進方式以外のAIP方式に特化するのならば、蒸気タービン技術の喪失は大きな問題とはならないかもしれない。
他方で、廃棄原子炉と放射性廃棄物の問題を除けは、もちろん、これが問題としては一番大きいのだが、大型水上艦、もちろん、22DDHよりもおおきなものを示すのだが、また、潜水艦の推進方式としては魅力的な点が多い。AIP方式に応用できる面もあるのだが、そういった検討はあまり為されていないようで、間もなく、海上自衛隊の蒸気タービン推進技術は大きな、そして最後の転換期を迎えることとなろう。
HARUNA
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