北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

護衛艦くらまに関門海峡で韓国コンテナ船カリナスターが追突

2009-10-28 22:12:04 | 防衛・安全保障

◆くらま火災、艦首部分が中破

 アフガニスタンでは、米軍の戦死者が今月だけで55名と過去最悪、首都カブールで国連施設などが襲撃され、イギリスでは空母艦載用のF-35Bの調達計画が大幅削減となった。

Img_5756  しかし、最も大きな防衛関係のニュースは、くらま、へ韓国コンテナ船が衝突し、火災が発生したことだろう。事故は関門海峡、27日1956時に発生、リベリア船籍で韓国の海運会社が運行するコンテナ貨物船カリナスターが、前方の船舶を追い抜こうと転舵、反航する護衛艦くらま、に衝突した。艦首部分が破壊され、塗料などが炎上したものの、消火活動により鎮火、くらま、は艦首が大きく抉られるなど中破したものの、自力航行は可能で、門司港に緊急入港した。負傷者は3名。

Img_5368  くらま、は艦長柏原正俊1佐とともに、相模湾で実施された自衛隊観艦式2009を観閲艦として参加し、横須賀から母港佐世保に帰港中に事故に遭った。カリナスターは、釜山から大阪にコンテナを輸送中で、門司沖の追い越し危険海域で前方の低速船を追い越すために反対側の航路に入り、関門橋を越え危険海域を出たところで、前方の、くらま、に衝突した。コンテナ船長は、くらま、を確認していたものの、よけきれなかったとのことだ。

Img_5810  関門海峡は、S字状に船舶航行が可能な幅が500㍍程度と狭い海域が続く難所で、日本海側の入口にあたる台場鼻信号所沖は、追い越し禁止海域に指定、最初に山口県の彦島をほぼ直角に曲がる最初の難所があり、巌流島沖を通過し、門司沖に下関との最狭部を越える海域が、関門橋までのあいだ、追い越し危険海域に指定されている。なお、追い越し禁止海域と関門橋付近は、衝突及び乗揚げ事故が多い警戒海域として設定されている。

Img_6843  言い換えれば、狭い相互通行の海域で、無理な追い越しを行おうとしたコンテナ船が、海上のセンターラインにあたる海域を追い越すために乗り越え、このため反対側を航行する護衛艦に衝突するという結果に至った、と簡略すればこうなる。くらま、は回避すれば座礁するため、敢えて艦首に点けることで、船体への打撃を最小限に抑えた、ということなのだろうか。

Img_6870  火災事故に見舞われた、しらね、とともに二番艦くらま、は追突され、残念な結果ではあったのだが、CICや集中された戦術コンピュータ、機関や推進設備、レーダーなどの電装品や航空関連設備には損害は無く、艦首が抉れたという一点に被害は局限することができた。51番砲に引火すれば第三次となっていたため、ダメージコントロールに成功したと言える。ただし、艦首のOQS-109大出力ソナーが無事であるかには配慮が必要である。この一点を除けば、修理は充分可能であろう。なんとなれ、くらま、は第一次インド洋給油支援旗艦、中国原潜南西諸島領海侵犯海上警備行動などに対処した殊勲艦であるとともに、DDHとしてはまだ新しい艦であるため、早急な修理が望まれる。

HARUNA

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コメント (4)
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