◆四万人が参加、島嶼部防衛を想定
防衛省によれば、11月5日から11日までの期間、平成21年度自衛隊統合演習を実施するとのことだ。
自衛隊統合演習は、統合運用に関する練度向上と、参加部隊の能力向上を図る陸海空三自衛隊が参加する日本最大級の演習だ。今回の自衛隊統合演習は、九州周辺を演習地とし、南西諸島や対馬など、日本の島嶼部に軍事的圧力がかかったとの想定の下で、島嶼部防衛を想定した実動演習を実施する。
演習統裁官に折木統合幕僚長があたり、九州周辺海域、空域と演習場、飛行場を演習地とする。この演習に参加する部隊は、陸海空自衛隊幕僚監部、陸上自衛隊西部方面隊、中央即応集団、海上自衛隊より自衛艦隊、航空自衛隊からは航空総隊、航空支援集団、航空教育集団が参加する。
これらの部隊には、隊員4万1800名が所属しており、車両1170両、艦艇6隻、航空機約300機が参加する演習規模となる。演習は、島嶼部への三自衛隊協同での部隊輸送、そして武装工作員浸透や工作船への対処などが実施され、即応能力を高め、有事に際しては事態が拡大する以前に対処する要領となる。
かつての北方重視時代に際しては、機甲戦力と地皺を活かした遅滞戦術に重点を置いた編成を採用していたが、今日では西方重視の時代となり、空中機動による島嶼部への緊急展開や、自衛隊が培ってきた野戦能力と同様にゲリラコマンドー対処能力がこの達成に求められる時代となっている。
しかし、重視するべきヘリコプターが、戦車などと比して高価であり、財政悪化に伴う防衛予算削減も相まって防衛大綱改訂に伴う戦車定数削減に対し、ヘリコプターについては戦車定数の削減で浮いた分の予算をヘリコプターの調達に回すなどの抜本的な勢力向上に政策が繋げられないのが現状だ。
他方、即応性は太平洋戦争に際して、広い島嶼部を広範に守備隊を置いたことにより各個撃破されるという状況に陥ったこうして、島嶼部限定侵攻を受けては、迅速な航空優勢と制海権の確保を背景に、陸上部隊を揚陸させ、これを排除するという即応性が重視される手法が基本概念となっている。
例えば警備隊を置く対馬でも、基本的に西部方面隊からの支援を前提とした司令部機能重視の編成となっているし、那覇の第1混成団も、旅団として拡大される際に、島嶼部への分駐ではなく、現在の混成団隷下の比較的充実した航空部隊が駐屯する那覇駐屯地を基幹とした配置となる計画という。
加えて協同転地演習では北方重視から西方への他方面隊からの展開も想定した訓練を行っているのだが、問題となるのは長大な南西諸島に対して、やはり那覇や九州本島の西部方面隊部隊や佐世保地方隊や護衛艦隊、航空集団など海上自衛隊が担当するには、どの程度の部隊規模が妥当か、ということだろう。
北方重視時代に際しては、津軽海峡を除けば、本土部隊の支援にはある程度鉄道や道路を利用することが出来たが、九州と種子島を結ぶ大隅海峡でさえ、津軽海峡よりも大きく、他方、輸送機、輸送艦などの勢力は、もちろん質的向上はあるのだが、充分とは言い難く、初動で対処できなかった場合には如何に対応するのか、こちらは演習での問題点なども踏まえ、検討してゆく必要があるだろう。
HARUNA
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