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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

10月14日は鉄道の日 1872年新橋~横浜間の開通を祝う

2009-10-14 23:29:08 | コラム

◆鉄道の“余裕”を考える

 1872年10月14日に新橋と横浜の間を日本最初の鉄道が開通したことを記念し、10月14日は鉄道の日、ということになっている。そこで、本日は鉄道に関する話題。

Img_5468  本日は鉄道の日。チャックイェーガーが初めて有人機として音速を越えた記念日でもあるとのことで、音速の日でもあるのだが、個人的に関心事は鉄道の日に向いているので、冒頭に音速は出せないが、なんとなく一番速そうな車両、500系のぞみ号京都駅到着を掲載することで、折衷案としたい。

Img_2795  鉄道に関しては、近年余裕が無くなってきているようにも思うのが残念な次第。かつては、名鉄7000、阪急6300などなど、特急料金を必要としない車両であっても2扉クロスシートなどの車両が運行されており、通勤通学の時間にもゆとりを感じることが出来たように思うのだが、今日、輸送需要と省エネの観点から、こちらが犠牲にされている。

0810img_5639_1  更に付け加えれば、機能的に特化し過ぎているのが今日の趨勢か、前面展望車、ハイデッカー展望車は、いまや観光特急であっても新造されることは稀有であり、流線形の車体は単に空気抵抗低減が目的となった。鉄道の旅に、車窓、というもの、風景というもの、時間を愉しむという余裕も消えつつあるようにも思う次第。

Img_3500  もっとも、機能重視の権化といえた国鉄時代、特急は485の派生で占められ、新幹線は0系のみ、0系という名称ものちに取って付けられた、という時代を振り返れば、特にJRの特急体系に関してだけは、国鉄民営化に伴う観光特急の増発時代こそが例外的だった、というべきなのかもしれない。

Img_0437  他方、会社によっては精力的に観光特急を開発する鉄道会社もあり、鉄道友の会によるブルーリボン賞受賞車両や、ローレル賞受賞車両などをみると、なるほど鉄道車両というものは、無機質な車両群が増える中でも、これは!という逸品、失礼、車両は、誕生してくるものなのだ、と救いはあると安心する。

Img_4016  速度が重視されたためか、特にこの分野は寝台特急にも顕著だ、時間をゆったりと楽しむ風習が、交通文化から失なわれているようで、寝台特急は、高速化する新幹線に完全にとってかわられつつある。寝台特急もブルートレインという老舗旅館のような格式と風格から機能性重視か、敷居が高くなっているのも今日の特色。

Img_9090  探せば、数多く運行されていたブルートレインは、ごく少数の豪華寝台特急に置き換えられているようなのだが、寝台特急という、非有効時間帯を運行される列車には、相応の夜間人員を確保する必要があり、本数そのものが淘汰されている今日、寝台特急に流れる時間というものは決して長くないといえよう。

Img_4560  もうひとつ、そのむかしは安く移動することのできる代名詞であった夜汽車、つまり夜行列車であるが、こちらも高速バスに追い詰められるように月滅寸前で、定期運行されるものに関していえば壊滅状態だ。夜行列車を運行するだけの鉄道会社の余裕についても、無くなってきているというのが実情だ。

Img_6318  鉄道と余裕、という点に立てば新幹線も、ダブルデッカー車、そして東海道新幹線からは個室が消え、食堂車はおろかバービッフェについても全般的に廃止され、今日に至る。東京~大阪間の所要時間を考えれば必須ではないにしても、やはり座席だけの新幹線というものは味気ないと思うのは当方だけなのだろうか。

Img_7658  鉄道に関して、近年は、新型車両が導入されると、一部ではあるのだが、もの凄い量産速度でもって、旧型車を代替する。これまで日常の一つであった車両が、ほんの少しの間をおいて久々に足を運んでみると、いつの間にか淘汰されていた、ということは、近年、確かに起こるようになってしまった。

Img_1180  そして、鉄道車両メーカーの基本系をもとに開発される各鉄道会社の車両は、共通部品により運用上の利点は非常に多いのだけれども、個性のない車両、それも塗装さえステンレス車として地金がむき出しのどれもよく似た印象を与えてしまう車両が次々に増えているようでこちらも残念至極。

Img_4420  順次、旧国鉄型は消え、私鉄が運行する旧型の車両についても、上記のような新型車両に代替されてゆくこととなろうが、現政権が打ち立てた2020年までに1990年から25%のCO2削減という目標を達成するには、それこそ、日本中の旧型車両を最新の省エネ車両に代替させる必要が生じるだろう。

Img_8212  しかし、難しいことなのかもしれないが、新型のステンレス車両に置き換えられつつも、これまで個々の鉄道会社が培ってきた車両のイメージは、一種のブランドとして、なんとか受け継いでほしい、少なくともそれくらいの余裕を会社は残してほしい、と思うのは当方だけなのだろうか。

Img_8751  だが、一つの光明は、鉄道という交通機関は自動車や航空機と比べれば、もちろん乗車率にもよるのだが、CO2排出量が少ない、という点である。現政権が打ち立てた2020年までに1990年から25%のCO2削減という目標が、単なる政治的スローガンでないのならば、ある分野では鉄道のポテンシャルは大きくなろう。

Img_3621  公共事業として、例えば廃止路線や非採算路線の活性化、郊外と都市中心部との輸送手段への自動車の利便性をうわまある程度までのライトレールなどの鉄道交通に関する公共投資を重点的に行えば、もしかしたらば、再び鉄道に関する分野での規模を依拠とした余裕というものが生まれてくるのかもしれない。

Img_7900  とはいいつつも、無理な政策公約を実現するために、なりふり構わず積立金などを流用し、そして手段ありきの結果や事業評価を無視した現在の行政府を見る限り、難しいのだろうか・・・。現政権が打ち立てた2020年までに1990年から25%のCO2削減という目標は、第二の日本列島改造論ともなり得るのだが。

Img_0551  しかし、ハブ空港問題で、羽田か、成田か、関空か、の話題ではないが鉄道関係についても、CO2削減という観点からは確たる戦略、これは高速道路についても渋滞解消のための車線増加を無視して無料化を提唱するなど、長期的展望に立つ戦略というか、プランがみえてこないことが気になる次第。

Img_2042  移動時間短縮、そして経営効率のための余裕の減退が本日のお題な訳であるが、もうひとつこの余裕を将来左右するであろう鉄道行政について、いま一つビジョンが明確にならない、というのも、本日の関心事として挙げたい。一つの懸案、高速道路無料化を行えば鉄道体系は計り知れない打撃をうけるが、それが日本全体にとり国民福祉の向上につながるのか、明確ではない。

Img_46481  鉄道のみならず、新政権は、長期的に観た場合の、広義の意味での国民福祉の面での事業評価では、マイナス点の方が大きくなるようにも見える。それとも、これも民主党政権が批判した自民党政権時代のような、改革に伴う痛み、として押し付けるのだろうか、それとも移行期に伴う混乱として片付けるのだろうか。

Img_3961  と、まあ、鉄道に関する話題は、鉄道が日本に開業した日を祝う鉄道の日ながらも、どうしても暗い方向にばかり考えが及んでしまうのだが、そうした反面、更に最高速度・評定速度の高速化と輸送需要合致に向けた混雑緩和の措置とともに、さらに洗練され、且つその枠内で個々の民鉄、鉄道会社が最大限の個性が発揮されるであろう事を祈念して、本日の記事としたい。

HARUNA

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