◆アフガニスタンはリスク、苦悩の民主党新政権
インド洋海上阻止行動給油支援が来年一月で特措法の期限切れに伴い終了する。これに続く日本の対テロ任務での国際貢献はどうなるのか、これについて新しい模索が始まっているようだ。
海上自衛隊のインド洋での海上阻止行動給油支援は、民主党鳩山政権では、当初の延長しないから、単純延長は無い、とニュアンスが変化しつつあった一方、インド洋給油支援に代えて当初考えられていたアフガニスタンでの復興人道支援任務への自衛隊派遣が、戦闘地域の拡大とISAF部隊の損耗激増などの事案が生じた。
以上のように困難な点が多く指摘されるようになり、事実上頓挫している状態となった自衛隊の派遣が難しい戦闘地域への民間人の派遣、タリバン兵士への就職支援など、滑稽ともとれる提案がインド洋への派遣に代えて提唱される中、安全性や交戦規定の問題、集団的自衛権の問題で不安の残るアフガニスタンへの派遣は難しい。
それでは、どのような代案があり得るのかとの疑問に対して、一つの視点が供されたようだ。以下産経新聞記事から引用する。インド洋からの海上自衛隊補給艦の撤収に伴い、同艦をソマリア沖で海賊対処にあたる外国艦艇の補給に活用する案が政府内で検討されていることが18日、分かった。
インド洋でテロ対策にあたってきた米欧艦艇の多くが現在は海賊対策でソマリア沖に展開しており、補給支援打ち切りの穴を埋める国際貢献策になりうるとの見方が出ているためだ。自衛隊の海外派遣に慎重な社民党や、米欧などの理解が得られれば有力な給油代替策の一つとして浮上してくる可能性もある。
政府はインド洋補給活動について「単純延長はしない」(鳩山由紀夫首相)と強調してきた。代替案として民生分野でのアフガニスタン支援を検討中だが、同案だけで人的貢献を期待する米政府の理解を得られるかは不透明だ。自衛隊は海賊対処に護衛艦2隻、インド洋の補給活動に補給艦と護衛艦各1隻を派遣している。
インド洋からの撤収で浮く補給、護衛各艦をソマリア沖に振り向ければ海賊対策でより実効的な活動が可能となる。ソマリア沖には現補給活動の給油ポイントの一つがあり、テロ対策と海賊対処など複数任務を兼ねた艦艇も少なくない。(引用ここまで)http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/091019/plc0910190136001-n1.htm
海上自衛隊も、海賊対処任務での護衛艦派遣に際して、当初からインド洋海上阻止行動給油支援の派遣補給艦から支援を受ける前提での舞台を派遣しており、現在の海賊対処任務を継続するのであれば、インド洋での任務が終了したのちでも補給艦をインド洋からアラビア海にかけての海域に展開させる必要性はあった訳だ。
付け加えれば、アフガニスタン派遣よりは、現時点では再度イラクに復興人道支援のために派遣した方が安全といわれる状況であることから、タリバンとの彼我混交の競合地域が続くアフガニスタンよりも、洋上での補給支援の方が間合いを採ることが出来ることも確かで、政治的に自衛官の犠牲を避けたいという観点からは洋上補給支援が遥かに安全ともいえる。
他方で、海賊対処任務給油支援、これは韓国海軍などからも要望されていた点ではあるのだが、単純に移行するということが政治的に可能かは一考の余地があり、現時点で“単純延長は無い”という点、“インド洋給油は国連決議に基づかず憲法上も問題が指摘される”という論点に着目すれば、アメリカが政治的にインド洋海上阻止行動を国連決議に盛り込むことが出来たならば、海上自衛隊の給油支援を単純ではなく延長させることもできよう。
しかし、どちらにしても海上自衛隊は、本土の弾道ミサイル防衛任務、そしてインド洋での任務と必然的に平時ながら2方面作戦を強いられており、東西冷戦時代と比べれば確実に任務は増大している一方で、護衛艦数は削減されている。もちろん護衛艦は大型化しているのであるが、ローテーションの観点から、護衛艦定数について、上方修正の決断が必要な時ではないかとも考える次第。
HARUNA
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