北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

台風18号は伊勢湾台風の経路に沿って東海地方に接近中、明日未明上陸

2009-10-07 23:18:21 | 防衛・安全保障

◆半世紀の防災努力とともに台風を警戒

 台風18号が日本本土に接近している。九州、四国では本日1900時時点で暴風圏に入っている地域もある。

Img_4717  台風18号は、中心気圧945ヘクトパスカルと、やや勢力を弱めたものの、中心付近の瞬間風速は60㍍、中心から半径220km以内が暴風域となる。また、地域によっては一時間当たり80㍉を越える猛烈な雨の可能性もあり、台風が接近する地域にあっては突風とともに河川の増水にも警戒が必要だ。

Img_2390  第10師団管区にあたる愛知県、岐阜県、三重県の東海三県、そして北陸地方は、今回の台風が直撃するかたちとなっており、特に注意が必要となる。これは、今回の台風は進路が変化しており、先日50周年を迎えた伊勢湾台風と非常によく似た進路にて、伊勢湾に進む可能性が生じたためである。

Img_0884  8日未明には日本列島に上陸、紀伊半島から中京地区に接近するとみられており、伊勢湾では満潮時刻と重なることから、名古屋地方気象台は厳重な警戒を呼び掛けている。名古屋港の満潮時刻は明日8日で0818時。今回の台風は風が強いことが特徴で、愛知県の場合、海上で30㍍、陸上で20㍍に達するとみられている。

Img_2287  交通の面では、特急ワイドビューひだ、ワイドビューしなの、の運行が中止となるほか、寝台特急サンライズ出雲、サンライズ瀬戸の運休が決定しており、紀伊半島を中心に特急などが軒並み運休となる予定。現段階では新幹線は運行する予定であるものの、第三セクター鉄道などでは明日の運休を決定しているところもある。

Img_2606  鉄道のほか、中部国際空港や県営名古屋空港を発着する空の便、そして太平洋上などを航行するフェリーを中心に海上交通、そして夜行バスなどでも運休措置がとられており、明日、台風が本格的に上陸した場合、JRや名鉄、近鉄などの路線にも運休や運転見合わせなどの影響が考えられる。

Img_5949  過去十年間では最大、というのは今回の台風の突風に関して用いられている表現で、瞬間最大風速は海上で40㍍、陸上では35㍍に達するものとみられている。伊勢湾を進んだ場合、湾の最狭部にあたる地域が名古屋港となるため、満潮時刻に名古屋港を通過する大型台風は脅威だろう。

Img_9439  しかし、伊勢湾台風が襲った半世紀前の東海地区と比べれば、現在の名古屋を中心とする大都市は、災害への守りはかなりの面で進んでいるので、避難勧告に従い、低い土地では浸水の心配のない二階以上の家屋に避難すれば、台風の脅威が過ぎるまでの安全は確保することができるのでは、と考える。

Img_0593  伊勢湾台風の際には、ほとんど奇襲に近い状態で台風が伊勢湾に侵入した。伊勢湾台風が1959年。他方で、富士山レーダーとして本州の気象レーダー網が完成したのが1964年であるから、当時と比べれば、台風の進路を含め、地上から空から、宇宙から監視体制が確立しており、正確な情報を得ることが出来るという一点。

Img_2644  名古屋の場合は、伊勢湾台風の教訓から、伊勢湾から名古屋港への洋上に高潮防波堤が構築されており、伊勢湾台風レベルの高塩が発生しても持ち堪えることが出来る点、そして防潮扉も閉鎖されており、伊勢湾台風において大きな犠牲者を出した高潮への対策がかなり進んでいるという一点。

Img_6544_1  加えて、当時と比べれば木造家屋の割がいが相対的に低下しており、万一、高潮が防潮扉や防波堤を乗り越えたとしても、臨海地域での家屋被害は局限化させることも可能なのではないか、といえる。もちろん、河川のそばなどではこの限りではないものの、半世紀にわたる防災への取組は如実に効果を示すこととなろう。

Img_8310  更に付け加えれば、伊勢湾台風の際に開庁を迎えたばかりの航空自衛隊小牧基地は、今日では広域防災の中枢としての機能を有するに至り、加えて当時の第10混成団は、第10師団として、その能力を大幅に強化して、防衛警備とともに災害派遣に万全の体制で待機している点を特に強調したい。

Img_0623 他方で、名古屋市の臨海地区など一部では既に避難勧告が出されており、不用意な行楽は、台風通過と被害状況が収束するまでは断念するべきであろう。また、避難勧告が発令されていても、河川の氾濫に関して兆候がある場合に避難を開始すると遭難する可能性が高く、この点留意するべきである。

Img_9337  現時点からは、万一の停電に備え、非常食糧、これは御飯を一合多めに炊く、などの方法でもいいのだが、確保する。携帯電話など充電できるものは停電の前に充電を済ませておく、浸水の危険のある一階を除けば、土砂崩れさえなければ、都市部は基本的に安全な地域が多いことを念頭に置いて行動することが重要なのだろうか。

Img_2590_1  半世紀前の伊勢湾台風は、第二次世界大戦を除けば、文字通り未曾有の災害であり、その被害を念頭に今回の大型台風、というと、どうしても身構えてしまうものではあるが、台風の被害ももちろん考えられる一方で、防災への準備は、半世紀の蓄積がある、ということを念頭に構えるべきである。

Img_4702  他方で、都市の防災機能が高まり、必然的にその防災機能を上回る被害が生じた際の災害時における、防災文化、というようなものは、年々、大規模地震への被害の過小評価などで生まれてしまうようなものではあるのだが、改めて、今回の災害とともに次の災害も見据え、継続した準備が必要になるといえよう。

HARUNA

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