北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

小笠原諸島へ防空識別圏設定と警戒管制網整備へ、対領空侵犯対処部隊配置も検討

2013-11-27 22:59:46 | 防衛・安全保障

◆太平洋上への周辺国航空母艦勢力整備へ対応

 将来想定される小笠原諸島への国籍不明機接近へ、警戒監視部隊等の配置の必要性は北大路機関でも繰り返し指摘してきましたが、いよいよ実現に向け検討が開始されました。

Oaimg_2791 小笠原諸島は、太平洋戦争中を除き戦後自衛隊が創設され今に至るまで、国籍不明機による領空侵犯の可能性は、北方の防空識別圏を通る必要があり、これにより北日本等の防空監視網により南下する航空機を未然に捕捉することができますので警戒監視部隊の配置は防空識別圏の設定は為されていませんでした。

Oaimg_1994 しかし、近年、中国海軍による航空母艦戦力の整備が本格化し、ソ連製廃棄空母ワリャーグを空母遼寧として再整備し、更に新造航空母艦の建造へ着手するなど、太平洋上への展開が本格化しつつあり、我が国としても空母艦載機による小笠原諸島への領空侵犯事案を考慮しなければならない現実を突き付けられたわけです。

Gimg_7252 基地を置く必要はあるのか、という問いはありそうですが、警戒監視網については暫定的に移動監視隊を展開させるとしても長期的には台風に耐える恒久設備が必要になりますし、小笠原諸島南端は最寄りの百里基地から距離が大きすぎ、空中給油機などの支援が無ければ即応性はもちろん、十分な戦闘空中哨戒も出来ません。

Img_6543 緊急発進件数の将来脅威予想についても、中国航空母艦の実任務へ対応可能な水準への整備はまだまだ先の話となるところでしょうが、水上戦闘艦部隊の太平洋における活動は活発化しており、回転翼機等による領空侵犯事案の可能性もあるため、実のところ回数として少ない水準での緊急発進で済むという楽観論は必ずしも妥当ではありません。

Oaimg_1233 防衛省によれば、東京都小笠原諸島へ、防空識別圏を設定するとともに、周辺の自衛隊基地へ緊急発進のための戦闘機部隊配置も検討しているとされ、これが実現すれば、レーダーサイト等の防空監視所配置や、飛行場設備を有する基地などへの戦闘機部隊展開が行われることでしょう。

Oaimg_1683 東京都の一部でありながら、防衛上の空白として懸念されていたこの海域ですが、海上航空自衛t来の訓練海域や訓練空域が設定されており、防衛力のポテンシャルとしては充分なものが整備されています。この海域は同時に我が国排他的経済水域の非常に広い部分を構成する部分でもあり、海洋開発の面からもポテンシャルに頼らない制度としてのプレゼンスを確保する必要は大きい。

Oaimg_0266 小笠原諸島における自衛隊基地は、海上自衛隊父島基地、滑走路を有する南鳥島航空派遣隊基地、海上自衛隊硫黄島航空基地があり、父島基地は艦艇や飛行艇の寄港拠点ではありますが島内には東京都が第三種民間空港への転用を検討している海軍飛行場跡地があります。

Oaimg_0154 レーダーによる警戒監視網整備は広大な小笠原諸島ではありますが、硫黄島の擂鉢山や父島のJAXA宇宙航空研究開発機構小笠原追跡基地、南鳥島ロランC局跡地など、自衛隊の施設やその周辺施設を活用することで防空識別圏と警戒監視網を整備することが可能と考えます。

Oaimg_1118 最も現実的な案は、既に飛行場設備を有する硫黄島への基地機能整備ですが、真水確保や接岸能力等で長期的に見た場合は問題があります。すると、将来的には父島が現実的かもしれません。父島への飛行場整備は、現在小笠原諸島への民間航路が数日を要する旅客船のみであることから住民の悲願とされているため、将来的に父島空港を官民両用空港として整備し、航空自衛隊父島基地として運用する選択肢もあるやもしれません。

Oaimg_1736 一方、小笠原諸島は非常に広大であり、警戒監視網を設定した場合の任務範囲は現在の中部航空方面隊管区全域に匹敵するものとなります。島嶼部ということで那覇基地の南西方面航空混成団へ統合し、南西方面航空混成団を太平洋航空団へ拡大改編し対応するのか、入間基地の中部航空方面隊管区へ含めるのか、新たに中部太平洋航空混成団を新編するのかについては議論の余地があると思います。

Oaimg_0063 ともあれ、防衛上の空白地帯が解消されると共に、冷戦時代でも想定されなかった太平洋上からの脅威の出現に対し、我が国としては防衛力全体をどのように取り組んでゆくのか、これは政治だけではなく防衛力の水準を如何に維持するかの負担についても、国民的議論として考えてゆく必要があるでしょう。

北大路機関:はるな

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コメント (2)
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