北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

榛名防衛備忘録:高等練習機再導入と教育戦闘機部隊再編、要撃飛行隊増勢の早期解決案

2013-11-28 23:18:26 | 防衛・安全保障

◆高等練習機配備で第21・第23飛行隊を第一線へ
 戦闘機部隊の不足にどう対応するのか。ビック自衛隊のマキシマム防衛計画についてエターナル語る! 。という、本日の話題は、まあ少々肩の力を抜いた形の話題ではありますが。
Img_9151a 航空自衛隊の戦闘機部隊は明らかに不足しつつあります。南西諸島の那覇基地では既に限界に近い規模での対領空侵犯措置任務を展開中で、更に太平洋上の小笠原諸島への航空脅威の現出元々“榛名防衛備忘録:T-4練習機には厳しい戦闘機操縦基礎過程(FTB)教育 ”、という話題を展開るべく備忘録記事を作成していたのですが、将来脅威への対応を念頭に、現在の航空自衛隊戦闘機部隊を如何に数的充実を図るか、という視点から命題を検証してみました。大元として亜音速機での戦闘機戦闘訓練は限界がある、という声も踏まえています。
Img_0355 戦闘機部隊を急ぎ増強するにはどうすればよいか、という視点ですが、次期戦闘機F-35は完成までに時間を要し、他の候補機を暫定戦闘機として導入しようにもコスト面の問題が大っく、そして戦闘機としての作戦運用可能な水準までの部隊練成など、運用基盤構築までの時間を考えると余裕等ありません。しかし、F-2支援戦闘機やF-15J戦闘機の生産ラインは既に閉鎖され、増強は出来ないというのが厳しい現状です。そこで提案として、航空自衛隊に廃止した高等練習機を再配備する、というものを考えてみました。

Nimg_9072 即ち、高等練習機を再度整備することにより、一種教育戦闘機部隊というようなかたちで教育訓練部隊所要となっている二個飛行隊の戦闘機部隊を第一線に戻すのです。海上自衛隊が護衛艦不足から、比較的新しい練習艦を護衛艦へ復帰させたものと考え方は同じです。高等練習機とは戦闘機に準じた超音速性能や火器管制装置を搭載するもので、機種候補としては米次期高等練習機選定を参考とし、特に米空軍のT-38練習機後継機はかなり喫緊の課題ですので遠からず決定されるでしょうが、JAS-39複座型、T-50練習機、他には再生機として状態の良いF-16Bがあれば、候補となるでしょう。
Img_8645_1 なお、冷戦時代には松島基地にT-2の第21飛行隊、第2飛行隊からなる第4航空団が、高等練習機部隊として要員養成に当たっていましたが、T-2練習機後期型は火器管制装置と20mm機関砲を搭載しており、短射程空対空ミサイルを運用することは可能でしたので、有事の際にはソ連空軍機の戦闘行動半径外にある松島基地は、北方から一時後退する飛行隊と共に二個飛行隊を以て補助戦闘機としての部隊運用を行う構想がありました。仮に高等練習機に一定以上の性能を有する機体を配備すれば、こうした変則的運用も可能となります。

Nimg_8560 高等練習機。昔ながらの超音速練習機で戦闘機戦闘訓練課程を実施、これは一見無駄な事ともみられるかもしれませんが、亜音速練習機による練習機教育体制を構築している国と航空自衛隊の事情は異なり、予算上の機数制限よりは防衛大綱に基づく飛行隊数の制限が大きく防衛政策に反映され、第一線部隊に配属される搭乗員の能力を最大限確保する必要がある自衛隊では、維持費などが大きくとも導入すべき意義があるものです。そして、そうした背景があるからこそ、第一線級戦闘機を二個飛行隊も教育所要に充てているわけなのですから。
Img_90_00 訓練はどうするのか、当然の疑問がわいてくるでしょう。現在、教育訓練部隊の戦闘機部隊は、F-2Bを運用する松島基地の第21飛行隊とF-15を運用する新田原基地の第23飛行隊で、第一線部隊へ配属された場合に即戦力として活躍できる技能をこの飛行隊において付与させるとともに、練習機から戦闘機へ機種転換を行うという任務を担ています。しかし、機種転換訓練は従来通り実戦部隊がマザースコードロンを兼ねる体制に、つまり教育訓練部隊に戦闘機が配備されておらず、高等練習機が配備されていた時代の方式に戻せば、問題は生じません。
Himg_2926 松島基地第四航空団第21飛行隊のF-2Bが浮く、航空教育集団飛行教育航空隊第23飛行隊F-15DJも浮く、航空総隊へ編入する。高等練習機による戦闘機戦闘訓練体制へ戻すことにより、都合二個飛行隊が教育訓練部隊から実戦部隊へ戻すことが出来ます。たかが二個飛行隊、と思われるかもしれませんが、二個飛行隊と言えば一個航空団を余裕を以て編成できる部隊規模ですし、要撃飛行隊は現在12個飛行隊ですので、これを14個飛行隊とすれば、多少は余裕が出てくるのではないでしょうか。
Bimg_2262 F-2飛行隊。築城基地第八航空団へF-2Bを運用する第21飛行隊を編入する。例えばの提案ですが、こうした改編が考えられます。そういいますのもF-15を運用する第304飛行隊は那覇基地へ移転予定となっており、第8飛行隊の一個編成となる予定でした。第8飛行隊はF-2を運用していますので、第21飛行隊を転用すれば、F-2二個飛行隊を集中運用する基地となり、対艦攻撃能力の高さを活かした、冷戦時代のF-1支援戦闘機二個飛行隊を有する三沢基地第3航空団のような重責を九州から担う事となります。
Bimg_3001 F-15飛行隊。父島空港の整備時における官民両用空港化や硫黄島飛行場を基地化し、第23飛行隊を移転する。第23飛行隊は新田原基地へ戻し、西部航空方面隊と南西方面航空混成団と統合運用し、那覇基地の支援に充て、沖縄北方から接近する国籍不明機への対処に新田原基地を充てる方策もありますが、今後、中国海軍の太平洋上での活動がこのままの規模で拡大した場合には、小笠原諸島周辺での行動活性化も予見できるため、新たに硫黄島基地か父島基地を基点として防空に充てる、という方策も考えられるところ。
Gimg_7807 全てが調和する。もちろん、机上の空論ではあります。戦闘機部隊が必要であるのは喫緊の課題なのですが、高等練習機の運用基盤を構築するまでに時間を要します。F-35の導入まで、時間を要するものではありますが、飛行隊規模で次期高等練習機を充足していったとしても、教育訓練部隊の戦闘機を第一線部隊へ転用するまでは、やはり大きな時間を要するでしょう。暫定案としては、現在の練習機体制のまま、ふたつの飛行隊を航空総隊に戻す方策ですが、航空教育集団のT-4練習機の老朽化も進んでいるため、これも難しい。
Img_7450 ただ、遠からずT-4練習機の後継機選定が必要となってきますので、その際に中等練習機と高等練習機を統合した現在の教育訓練体系は、高価な高等練習機を統合し廃止したものの更に高価な戦闘機を教育訓練に充当する必要性が生じる事となった、という事業評価を行い、機種統合は時期尚早であったとの認識の下で、新練習機に高等練習機の配備を行い、更に大陸側からの圧力の増大へ対応する、という選択肢はあるかもしれません。

北大路機関:はるな

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