北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

榛名防衛備忘録:第一機械化大隊と機械化大隊という編制、滝ヶ原駐屯地祭の写真とともに

2013-11-10 22:39:50 | 防衛・安全保障

◆大隊本部・二個装甲普通科中隊・戦車中隊
 戦車削減検討の報道がなされる中、間が悪いですが、戦車を含めた話題を。普通科連隊、これが陸上自衛隊の連隊管区における基本的単位ですが、もう一つ、機械化大隊という編制があります。
Dkimg_7001 機械化大隊は、陸上自衛隊の部隊訓練評価隊に所属する評価支援隊の基幹部隊で、2002年に創設されているのですが、当方、その部隊の概要を知ったのは2009年の滝ヶ原駐屯地祭においてでした。評価支援隊は、全国の部隊に対し、北富士演習場で実施される部隊訓練評価に際して仮設敵の任務に当たり、普通科中隊に戦車小隊と特科戦砲隊に施設作業小隊を加えた混成部隊の対抗部隊として普通科中隊の戦力水準を見極め、云わば敵役として訓練評価対象部隊の実力を測る、というもの。
Dkimg_7028 評価支援隊という、評価対象部隊が毎回のように全滅寸前まで追いやられ、兎に角創設当時は互角に全国の部隊が対抗することもままならう、それこそ潜伏斥候や無茶な地形利用の連続で、理不尽なほどに難攻不落であることから、富士トレーニングセンター:FTCは、風雲たけし城やSASUKEという名称で呼ばれていることは知っていましたが、仮設敵部隊が大隊編制という比較的大きな規模の部隊であるという事を知らず、バケツ等を括り付けてT-72のようないでたちの74式戦車が続々と出てきたときには驚きました。
Dkimg_7036 96式装輪装甲車が中隊規模で続々と展開してきまして、しかも少なくない数の74式戦車も見える、仮設敵部隊は独自の迷彩を採用しており、74式戦車に続いて96式装輪装甲車も続々と観閲行進に参加、観閲行進に富士教導団普通科教導連隊が89式装甲戦闘車を先頭に行進していましたので評価支援隊は、なるほど初めて見た、というところでしたが、装甲車を装備する普通科中隊は中々なく、不意駐屯地も近いので、このあたりは戦車が多い、という印象に留まりますが、他の駐屯地であれば、その重装備はもっと目だったでしょう。
Dkimg_7039 評価支援隊の第一機械化大隊は、隊本部、第一普通科中隊、第二普通科中隊、戦車中隊、以上の三個中隊を基幹としており、二個中隊を支援するために戦車中隊が配属されている、というのが印象的でした。また、部隊訓練評価では迫撃砲の砲弾落下想定も為されているため、普通科中隊は対戦車小隊を迫撃砲小隊をふくめたフル編成であることがわかります。まあ、勿論観閲行進には重迫撃砲を牽引した車両が参加していませんでしたので、砲弾落下想定は想定だけのもので、編成に含まれていない可能性もあるのですが。
Dkimg_7050 仮設敵に当たる部隊ということで、特に北富士演習場の訓練地区を知り尽くした部隊であるため非常に手ごわく、部隊創設後数年間は負けなし、空挺団と第3普通科連隊が数年後に初めて引き分け以上に持ち込んだという、精鋭部隊ですが、特に普通科中隊が96式装輪装甲車により装甲化されているのが印象的で、独特の迷彩を相俟って記憶に残りました。まあ、こんな大きな装備の部隊を見て、それ以上に、まだまだ自衛隊の部隊のことで知らない事ばかりだなあ、と自分の不勉強さを反省した、というものもかなりあるのですが。
Dkimg_7057 さて、昨今、装甲戦闘車の大口径機関砲の威力が増大しており、装甲車が無ければ歩兵は生き残れません。特に近年、3P弾に代表されるように調整破片弾を射撃する大口径機関砲が装甲戦闘車に採用される時代となっており、露出した歩兵部隊は装甲防御力を有するか、堅固な陣地を構築していない限り、数秒数発の射撃が小隊規模の歩兵部隊に深刻な打撃を与える事となっています。熱線暗視装置等で位置が暴露すれば遠距離から攻撃されるため、それ以前に携帯対戦車誘導弾などで撃破する選択肢もありますが、一番は装甲車に乗車すること、ですけれども大口径機関砲を搭載する車両は当然徹甲弾も搭載しますので、やられる前に反撃してせめて光学照準器だけでも破砕し退避しなければ生き残れないでしょう。
Dkimg_7067 装甲戦闘車に対抗するには、大口径機関砲を搭載した装甲戦闘車化、出来れば戦車があるのが望ましい。装甲車と戦車を上手く混成した機械化大隊の編成は理想的です、普通科中隊は二個ですので大隊長は戦術上の基本となる主力・支援・予備という三単位運用を行うことが難しいのですが、陸上自衛隊の戦闘基幹部隊は中隊であり、この為に普通科中隊は迫撃砲小隊や対戦車小隊を隷下に入れ、編成をおおきくしてきました。従って、機械化大隊は三単位運用を考えず戦車と連携した装甲車での機動打撃を重視すればよいわけです。
Dkimg_7085 戦車との関係、装甲戦闘車ですが、相手が戦車だった場合は有利な地形に退避し、対戦車ミサイルの準備を行うか戦車などの応援を呼ぶ必要があります。戦車の打撃力は、対戦車戦闘においても直接火力戦闘においても有利です。第一機械化大隊には74式戦車が装備されており、普通科中隊は96式装輪装甲車を装備していますので、整地での機動運用は装甲車がやたら早く、不整地では戦車が踏破力を発揮しますので、連携をどう図るかという面と補給整備が大隊長を悩ませそうですが、装甲車により機動力を発揮し前進し、戦車により適宜必要な火力を直接照準で行う。
Dkimg_7089 第一機械化大隊はこういう意味で凄い、ものすごく強そうな運用が出来る編制です。もちろん、この編成のまま有事の際に派遣で消えるものではなく、もちろん適切な補給と整備支援が必要であり、基本北富士演習場において運用される第一機械化大隊は、現状では整備補給能力を欠いていますので、同じく後方支援連隊を持たない富士教導団と同じく、そのままでの実任務に対応する編成ではありませんが、第一線部隊の編成として師団や旅団に機械化大隊が置かれたならば、物凄い速度での攻撃前進が可能な編成となるでしょう。
Dkimg_7106 そして同時に考えたのは、普通科連隊よりも機械化大隊の方が予算面と人員充足面で有利な点は無いか、という事です。普通科連隊の多くが一個中隊のみを軽装甲機動車により充足する一方、他の普通科中隊は高機動車により自動車化している現状を見ますと、普通科連隊と機械化大隊では、機動打撃力や近接戦闘能力に地域制圧力と対戦車能力の部分で、置き換えられる、部分的に置き換えられるところがあるのではないか、人員を削減しても能力を強化できるのではないか、ということ。まあ、戦車の削減検討の報道がある中、間が悪いはなしですが、ね。
Dkimg_7278 普通科連隊は、師団普通科連隊の基本編成が、冷戦時代は、本部管理中隊、第一中隊、第二中隊、第三中隊、第四中隊、重迫撃砲中隊、という編制でした。冷戦後は一部師団で対戦車火力の強化が図られ、第2師団、第4師団、第8師団、第10師団隷下普通科連隊は、本部管理中隊、第一中隊、第二中隊、第三中隊、第四中隊、重迫撃砲中隊、対戦車中隊、と対戦車火力を強化します。都市部では本部管理中隊、第一中隊、第二中隊、第三中隊、第四中隊、第五中隊 として近接戦闘能力を強化する編成が第1師団で採られており、同じく都市部の第3師団は本部管理中隊、第一中隊、第二中隊、第三中隊、第四中隊、第五中隊、重迫撃砲中隊、という編制へ改編、その後第1師団も重迫撃砲中隊を置く編成としました。。
Dkimg_7294 特に1995年防衛大綱改訂で戦車数の縮小が決定して以来、小銃班の携帯無反動砲を軽対戦車誘導弾へ、普通科中隊は無反動砲小隊を対戦車小隊へ、師団対戦車隊を崩して対戦車ミサイルを普通科連隊へ振り分け、多目的誘導弾も開発、小銃班の無反動砲火力は小銃てき弾の新開発と従来以上の普及を行い対応しています。戦車数削減を無い袖は振れない、として是認する方々は多いでしょうが、戦車を削った一方で脅威はそのままですので代替装備が必要となり、その代替装備の方の財政負担はどうなのか、考えてみますと、戦車を削る必要はあったのか、とも考えてしまうところです。
Dkimg_7325 旅団制度が第13旅団の創設を皮切りに誕生しますと、普通科連隊は本部管理中隊、第一中隊、第二中隊、第三中隊、という編制が採られ、本部管理中隊は師団普通科連隊に対し施設作業小隊や通信小隊の強化と重迫撃砲小隊の新編が行われたほか、各普通科中隊は中隊本部機能が強化され、人員規模では師団普通科連隊よりも小型ながら基幹編制に表面化しない小隊規模での強化が図られているもよう。もとも、旅団普通科連隊は戦闘団編成において方面隊より輸送力と施設部隊の支援が必ず必要とする編成となっているもよう。
Dkimg_7577 機械化大隊と普通科連隊の比較という部分ですが、この師団普通科連隊と旅団普通科連隊を比較した場合、特に旅団普通科連隊はそのまま機械化大隊とした方が、人員規模が縮小するものの、打撃力の面で強化される部分は無いのか、と一瞬考えました。普通科中隊数は減りますが、これは災害派遣などに際して必要な人員数を切り込むので、不安要素ではありますが、そのうち一個中隊が戦車中隊へ置き換えられている、と考えれば前述の機動打撃力や近接戦闘能力に地域制圧力と対戦車能力という部分でそこまでは、見劣りはしません。
Dkimg_7593 ある意味ではありますが、機械化大隊というのは普通科連隊の機能を、勿論そのままの編成で代替するわけにはいきませんが、ある程度を代替することが出来るかもしれません。兎に角装甲車と戦車の連携が、この比率であれば確実にできます。もっとも、戦車の整備や燃料補給と、後方支援の補給支援の能力を大きくせねばなりませんが、打撃力の大きさはこれを補って余りあるものがあります。以上の点、不十分な部分も多々あり、片手落ちな部分が多いですが、御話しは明日掲載予定の次回へ続きます。

北大路機関:はるな

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コメント (2)
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