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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

護衛通算3500隻達成!ソマリア沖アデン湾海賊対処任務派遣水上部隊の実績

2014-07-29 23:33:49 | 海上自衛隊 催事

◆アデン湾は欧州とアジア結ぶ重要航路

 朝雲新聞によれば、海上自衛隊はソマリア沖アデン湾海賊対処任務派遣水上部隊の実績として開始5年目を以て護衛通算3500隻を達成したとのこと。

Gimg_8761 現在、立川浩二1佐を指揮官としてソマリア沖アデン湾では艦長可知俊一郎2佐指揮の護衛艦いなづま、艦長松田光央2佐指揮の護衛艦うみぎり、より編成される派遣海賊対処水上部隊第18次派遣部隊が船団護衛任務と哨戒任務が任務に当たっています。これは海賊対処法に基づく派遣ですが、制定より5年を経て3500隻もの船舶護衛を達成したというわけです。

Gimg_5245  海賊とは、法執行機関が未整備の沿岸国を拠点とし、小型船や大型船舶を母船として航行する商船やタンカーに接近、梯子などで乗り込み船舶を拿捕、乗員や船舶を人質として身代金を要求するほか、船舶積載物の奪取と転売、その後船舶を沿岸部に放棄する為海洋汚染なども発生、各国は大きな脅威として対応しました。

Img_1122 アデン湾はスエズ運河を経て地中海とインド洋、欧州中東地域とアジア地域を結ぶ重要航路であり、併せて湾内は決して広くなく海賊出没海域を回避することは、喜望峰を回りアフリカ大陸全体を迂回しなければならず余りに非現実的で、加えて海賊が各国の身代金支払いにより潤沢な予算を蓄え一種の産業化してしまい、海賊の装備が向上し被害が増大する悪循環へ陥ってしまったというしだい。

Hmsimg_4998  こうして各国は海賊に対する哨戒任務を行うべく第151多国籍任務部隊を編成、第151多国籍任務部隊は欧米アジアロシアなど各国の派遣艦艇を統一指揮のもとで哨戒範囲を画定し、各国艦艇が巡回することにより海賊の行動を封じ込める事とした訳です。併せて我が国も海賊対処法を制定し護衛艦を派遣、2隻の護衛艦を派遣し当初は船団護衛任務に充てていましたが、その後第151多国籍任務部隊へ1隻を派遣し、護衛と哨戒の両立を開始したわけです。

Img_7104a しかし、第151多国籍任務部隊司令部では60隻の水上戦闘艦が確保できれば完全に海賊を封じ込める事が出来るとしながらも、常時数隻、いや1隻であっても常時遠くソマリア沖へ派遣できる海軍は少なく、十分な艦船を集める事は出来ませんでした。そこに常時2隻の護衛艦を派遣、併せてP-3C哨戒機を2機派遣している我が国の能力は高く評価され、今に至るところ。

Himg_2067 もちろん、海上自衛隊にとり、遠くソマリア沖へ常時2隻の護衛艦を派遣することは容易ではありません。護衛艦は高練度即応、即応待機、基本練成、重整備、四段階を以て待機しているため即応艦は限られている一方、中国軍の南西諸島近海における活動活性化と公船領海侵犯の恒常化により南西諸島警備にも相当の艦艇を割かねばなりません。

Img_7415  ソマリアまでの距離と長期にわたる護衛任務を粉うには小型護衛艦では無く一定以上の規模の水上戦闘艦を展開させねばならないわけですし、次期によっては交代の艦艇を送らなければなりません、つまり常時2隻を派遣し待機と訓練でそれ以上の艦艇を充てなければならない海上自衛隊、艦艇不足が顕在化する海上自衛隊にとり相当厳しい。

Img_9333 このため、多くの汎用護衛艦が複数回のソマリア沖海賊対処任務を経験しており、この他多くの護衛艦がその派遣期間中の南西諸島防衛などの任務に当たっています。今回の護衛通算3500隻達成は大きな記録ではありますが、任務は継続中で、今後も増大してゆくことでしょう。

Img_8660  その一方で我が国は国土交通省海上保安庁と外務省が協力し、アデン湾周辺の沿岸国において海上保安庁と同等の海上法執行機関の養成への協力支援を継続して実施しています。各国海軍御取締と船団護衛に合わせて我が国のこうした支援もあり、着実に海賊の被害件数は縮小しているとのこと。

Img_8811 集団的自衛権論争などが国内で続く昨今ではありますが、こうした国際貢献任務における各国との協力は着実な成果と各国間の連携連帯や信頼醸成に寄与しているわけですので、こうした行動の円滑化などにも大きな意味がある事例であるとして、現在進行形の集団的自衛権論争についても視てゆく必要があるでしょう。

北大路機関:はるな

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