北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

榛名防衛備忘録:UH-X次期多用途ヘリコプターを考える⑨ OH-Xと軽多用途ヘリコプター

2014-07-28 23:52:47 | 先端軍事テクノロジー

◆陸上自衛隊は450機ものヘリコプターを運用
 前回の掲載にて、 NH-90やEC-225などの高性能ヘリコプター提案の背景という視点を哨戒しましたが、この続き。
Abimg_6631  陸上自衛隊は450機ものヘリコプターを装備しており、UH-1Jに加え、各国では少数しか保有できない大型で高性能且つ高い取得費用と維持費の大きさで知られるCH-47J/JAを55機保有していますし、AH-1SとAH-64Dという導入を諸国が希望しても高い費用から実現できない対戦車用の専用ヘリコプターを五個飛行隊分保有しています。ですから、空中機動体系を実戦的な水準に維持することで、世界的に見て450機もの第一線機で揃えた陸軍機構は稀有ですので、高い抑止力を発揮できることでしょう。
Mimg_6969_1  多用途ヘリコプターに大型すぎる航空機を選定した場合、例えば軽輸送任務や連絡任務等の用途をどう対応するのか、という視点が生まれてくるでしょう。たとえば海上自衛隊等は洋上の連絡や軽輸送にSH-60JやSH-60Kを運用している事例はあります、しかし、これは広大な洋上を想定しての必要な性能から生まれた選択肢の帰結ですので、この方式を例えば多用途ヘリコプターとしてはかなり大型といえるEC-225やNH-90により対応するという選択肢はやや性能過大、妥当な選択肢では残念ながらない、といえるところです。
Img_4731  そこで、UH-Xを、併せてOH-6D観測ヘリコプターの後継機選定に重ね、軽多用途ヘリコプターという機種選定を行い空中機動を主として部隊輸送や装備輸送に兵站戦闘支援任務には大型の多用途ヘリコプターを充当、軽多用途ヘリコプターがOH-6D観測ヘリコプターの任務を部分的に引き継ぐ、という選択肢を提示したいと考えます。OH-6Dは、1990年代初頭にOH-1観測ヘリコプター250機により代替する計画が立てられましたが、冷戦終結と運用体系の変遷により中座し今に至るもので、こちらも後継機が必要です。
Img_2142  師団飛行隊と旅団飛行隊には、有事の際には後方輸送と着弾観測支援に充てる名目でAW-109かEC-635を、UH-1JとOH-6の後継機に充てられれば、と考えるところです、もちろん、この程度の機体で、一定以上の航続距離を有していれば、過去に観測ヘリコプター候補として提示したBK-117でも候補と成り得ますし、UH-1Yという選択肢もあり得るかもしれません。元々師団飛行隊へのUH-1配備は、軽輸送能力をもつOH-6観測ヘリコプターの後継機として観測任務専用のOH-1が配備されることを受け、UH-1Jを支援用に配備しOH-1とUH-1Jを半々で装備することが考えられていたため。 
Img_3683  OH-1の調達が当初の250機配備方針から方面隊への少数配備で終了することとなったため、UH-1Jの師団配備と旅団配備は、少数の航空機を基幹とする飛行隊に二機種が混在する状況を造ってしまっただけ、ともいえるかもしれないところ、もともとOH-6DやOH-6Jが装備されていた時代の師団飛行隊定数は10機、UH-1の配備は一機当たりの汎用輸送能力を考えれば、数機で従来編成の飛行隊を補う、という運用といえました。OH-6は生産終了しており着弾観測は重要な任務の一つであるため、OH-6とUH-1の混在が続いている。 
Img_8999  AW-109かEC-635ないしUH-1Yを8機程度師団飛行隊と旅団飛行隊に装備する、一応輸送能力としては、現行のUH-1Jの4機とOH-6Dの5機という態勢と比較すれば、準じる程度の空中機動任務に対応できる点と共に、機種を一本化できるので整備性の面で良好な効果が期待できるところ、師団と旅団飛行隊への配備数は104機、予備機や方面航空隊司令部所要とヘリコプター隊本部所要を加えると全体での需要はかなり大雑把なものですので数字には再検討の余地はある、と前置きしたうえで、120機程度、というところか。 
Img_8985  AW-109かEC-635にUH-1Y、空中機動はUH-1Yを除き小銃班規模の同時空輸は難しくなり、レンジャーの投入や連絡輸送に限られる、着弾観測任務に運用する際には双眼鏡による着弾観測を高感度TV観測機器、報道ヘリコプターの高感度カメラのような機材に置き換える事で、取得費用は大きくなるものの災害派遣時の情報収集能力が飛躍的に向上しますし、本来の用途としまして、観測距離は数十kmに上るため、特科火砲の射程一杯の遠距離からの空中着弾観測の実施が可能、敵防空火器の脅威地域にヘリコプターを展開させるという危険な運用法を近代化することも出来るということ。 
Img_6305  全体としてはUH-1Jの150機とOH-6Dの150機という300機のヘリコプターを、NH-90やEC-725を60機とAW-109かEC-635ないしUH-1Yの120機とを加えた合計180機で置き換える、全体数が縮小するのだから災害派遣における同時発進可能な機数は限られてしまうものの、質的向上でかなりの面を補えることになる、このほか旅団ヘリコプター隊と第1ヘリコプター団102飛行隊にUH-60JAが残り、CH-47も現時点で55機が、そこにAH-1SとAH-64Dが、機数については変動がありますものの加わる。
Img_8454  全体としての勢力は維持できますし各方面航空隊に例えで空中機動旅団を編成できるだけの航空機が維持されることとなります。このほか、機数が縮小しつつも結果的に一機当たりの整備要員を現在の機数を前提として整備すれば、整備支援能力とその基盤を強化できますので、加えて新型機に稼働率強化の整備プログラムを構築し運用体制を構築するのならば、稼働率の維持向上の希望は見えてくるかもしれません。無論、単純に導入するだけではなく、確実な運用が可能となるような基盤、つまり国内に整備基盤と運用基盤が必要になるのですが。
Fs_img_4262  さて、冒頭に“陸上自衛隊は450機ものヘリコプターを装備”、という一文を紹介しましたが、数の上からはかなりの規模で、NATO諸国でもこれに匹敵する規模は例外的なほどに少数です。現在陸上自衛隊が師団管区に部隊を配置する基盤的防衛力の体制から、必要な地域に部隊を緊急展開させる統合機動防衛力に転換している現状ですと、方面航空隊が必要な師団管区へ適宜ヘリコプターを派遣するという現在の方式を、例えば平時から特定の師団か旅団に配備し、空中機動重視編制とする選択肢は、考えられるかもしれません。
Abimg_8585  航空機動旅団案として新年度冒頭から幾度か提示しているものですが、既に編成されている即応近代化旅団空中機動重視編成、つまり第12旅団の編成に方面隊が有する戦闘ヘリコプター隊を配置するという提案、陸上自衛隊は450機ものヘリコプターを装備しているのですから、無論高性能機導入により差し引かれる数が出てくるので450機という数字は必ずしも提示し続ける事は出きませんが、機数が縮小されたとしても、高性能機が導入という前提ならば、十分な能力を持つ航空機動旅団、というものが視野に入ってきます。
Img_9822  高性能機導入を示唆した背景には、航空機動旅団、というもの、相馬原の第12ヘリコプター隊や那覇の第15ヘリコプター隊を念頭に置いた部隊を編成してはどうか、という私見に基づくものではあります。無論、こうした視点抜きにUH-Xを純粋に考えるならば、より小型の機体、現実的な汎用ヘリコプターは別の旗手となるのですが、各方面隊に即応近代化旅団空中機動重視編制を各一個置き、空中機動重視の陸上自衛隊に相応しい統合機動防衛力のあり方、模索してはどうかと考える次第です。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる) 

コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする