北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

海の日:海の恩恵に感謝すると共に海洋国日本の繁栄を願う、この祝日に改めて海を考える

2014-07-21 23:27:51 | 北大路機関特別企画

◆海洋自由の国際秩序と日本平和は運命共同体

 本日は海の日、海の恩恵に感謝するとともに海洋国日本の繁栄を願う祝日です。

Img_8445 海の日の祝日は1995年に祝日法により国民の祝日として定められました。海は世界をつなぐ人類共通の財産ですが海は広くそして世界も同じく広い一方で、国土交通省によれば、世界の国々の中で“海の日”を国民の祝日としているのは我が国だけ、とのこと。

Img_4837 海は生物の営みに不可欠な水の源であり、海より湧き上がり雲海が降雨の形を以て人々に水の恩恵を齎せています。そして太古、生物は海をもとに陸上へ進出、長大な生命の糸を織り込み一布を複層化させ今に至る生態系を構築させるに至りました。

Img_1361 我が国が国家として存続するにも、まず海洋からはその緩衝地帯としての欠くべからざる地政学上の要件を我が国に供して、海を境界線としての列島国家日本を形成することが出来ています。陸上国境を隔てている国とは比較にならないほど、我が国は安全保障上の要諦を海に依拠しています。

Img_1263 更に海洋資源は食料の面で平野部が限られた大陸外縁火山性弧状列島である日本列島に人々が糧を得る貴重な機会を供してくれ、海産物交易が陸上交通のほかに早い時期からの海上交通の能力を付与する、文化的な基盤を構成するという機会を得ました。

Eimg_5325 更に産業革命後は、国際交易を行う上で鉄道など陸上交通とは比較にならない膨大な物資を同時に継続して運送する重要な通商路として海上交通路の地位が一貫して高まり、海洋交通の継続的な維持と通商路の確保が国家のきわめて重要な安全保障となり、歴史の分岐点を左右する政策決定にも反映されています。

Gimg_4591 しかし、海洋の確保が国際公序として野津省の自由にある、海洋の国際公序としての航行自由の確保、という今日の秩序に至るまでの期間、海洋の自由を排他的な制海権確保と解釈したことで、諸国は一度ならず世界大戦とその危機を繰り返したのは歴史に或る通り。

Eimg_4233  これは我が国も反省すべき点で、先の大戦を海洋秩序は基本的に自由であってこその人類全体の幸福の享受と共有に繋がる、という展望を極めて狭い視野により見誤り、太平洋を巡っての戦争に至りました。21世紀に入り十年以上を経てなお、この国際公序を理解しない国が我が国周辺に存在するのは残念ですが。

Nimg_0568  海洋自由の国際秩序と日本平和は運命共同体、と冒頭に記しましたが、これは海の恩恵に感謝するとともに、海洋国日本の繁栄を願う、との海の日の目的と一体化しています。国際公序として海上航行を諸国が共有化することは、我が国が海上交通に依存する実情からもその重要性は非常に高い。

Iimg_1034 この分野における問題領域として、現在、中国はアメリカへ太平洋の分割と西太平洋の中国勢力圏編入を求めていますが、この主張は先の大戦において我が国が海洋の自由という国際秩序を理解せず、西太平洋を自国の勢力圏下に置くべく排他的な海洋政策を行った部分と全く変わるところがありません。

Eimg_7760 海洋自由の国際秩序と日本平和は運命共同体、としましたが、最大の誤解は世界の海洋秩序は自由が基調であり、一国の排他的な制海権の確保ではなく国際秩序に反しての海洋占有を求める勢力からの制海権確保、制海権確保が海洋の自由への担保に繋がる手段としての命題だ、と理解すれば早いでしょうか。

Gmimg_9128 即ち、太平洋東西分割を中国が提案したとしても海洋は自由を基調とした秩序との国際公序があるため、アメリカが太平洋を有しているわけでもなく、自国のものでは無い海洋を分割を持ちかけられても、それを容認する事は出来ない、ということに他なりません。このあたり、米中間の不協和音、その根底にあると考えられます。

Img_3528 特に中国が日本列島を第一列島線として大戦中に我が国が設定した絶対国防圏と共通の概念に基づく境界線を構成しようとしていることは、他国を線としてみなす事が反論の根拠ではなく、その線の内側を排他的な海洋秩序により占有を目論見た対外政策そのものが、海洋の自由への脅威とみなされ、反発されているわけです。

Img_5363 同時に海洋の自由は、本来であれば中国海軍の海洋進出に対して、海洋進出が目的である範疇ならば諸国はともに海洋秩序の守り人として歓待し得る事象なのですが、現状では海洋進出が目的ではなく、排他的な勢力圏構築が目的だ里、その手段としての海洋進出であることが、国際公序へ挑戦している、こう考えると視点が変わってくるところ。

Iimg_2281 ただし、これは視野狭窄が背景にあり、一概に批判するところではありません、何故ならば、外周に安全圏を確保するという地政学の源流の概念は大陸国家即ち陸軍国の基本概念に他ならず、大陸国家であり陸軍国の理念と政治文化に依拠した意思決定と政策立案に依拠し、海洋政策を進めているのに他ならないためなのですから。

G_img_9184 大陸国家は中心部から放射線状に勢力圏を広め、脅威を勢力圏とその先の複数ある防衛線に緩衝地帯を併せ防御しようとする、これは歴史上の経験から生み出された必然性により構築される防衛哲学のようなものに成り立ちますが、海洋国家とは海洋の自由が根底にあり、海軍力はこの理念への排他的な勢力から自由を守る制海権の維持手段としてある、ということ。

Oimg_0256 この問題領域への選択肢としては、海洋占有を試みる中国は大陸国家から海洋国家へ昇華する途上段階にあり、海洋占有を持っての防衛ではなく海洋自由の国際公序こそが防衛に繋がる、という理念を共に理解できるよう促す、というところにあるのかもしれません。

Dbtimg_3759 しかしながら、我が国にはこれとは別の視点で海洋自由の国際公序への難題があります、それは集団的自衛権と個別的自衛権を区分し、国際公序の運命共同体という問題領域に対して、諸国との協同という選択肢を自ら閉ざした安全保障観を我が国の構造を明示した憲法に記しているところです。

Eimg_9350 これでは逆に海洋自由の国際公序を示しつつも、専守防衛と一国平和主義は国際公序から距離を置くか排他的か責任放置的でなければ成り立たず、海洋国家の海洋交易諸国間共有という実態に少々見合いません。逆説的に我が国の専守防衛政策が正しく諸国に理解されないことで、中国の海洋進出を海洋占有と誤解する要因の一つとなっている可能性も無視できないでしょう。

Iimg_4406 海洋自由の国際公序を突き詰めれば諸国間の防衛協力、我が国の視点では所謂集団的自衛権の是非について、その行使を認めなければ国際公序の共有を基盤から維持する事は出来ません。海洋自由の国際秩序と日本平和は運命共同体、としましたが、同時にこれは我が国の基本的な政策にも影響する部分があり海の日ということで備忘録的に視点論点を掲載してみました。これを機会に、様々な視点から複合化した問題領域を考える機会となれば幸い。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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