◆強襲揚陸艦マキンアイランド視察時に
防衛省は、島嶼部防衛用に航空機運用を重視した強襲揚陸艦の導入を検討中と伝えられますが、このほど艦種が多用途輸送艦と報じられました。
海上自衛隊の強襲揚陸艦導入報道は伝えられましたが、水上戦闘艦を護衛艦、ドック型揚陸艦を輸送艦と呼称する我が国において、強襲揚陸艦という単語をそのまま導入することが出来るのか、今後の去就が注目されていたのですが、多用途揚陸艦という差しさわりないものになるもよう。
これは小野寺防衛大臣が7月7日にアメリカのサンディエゴ海軍基地視察時に強襲揚陸艦マキンアイランドを表敬訪問し、多用途の補給艦と輸送艦は災害対応や水陸機動団の活躍に大変有意義な装備であるとし、これを朝雲新聞が多用途輸送艦導入検討として報じましたもの。
海上自衛隊では現在のところ揚陸訓練に際し、ヘリコプターなどの空中機動部隊はヘリコプター搭載護衛艦から、装甲車両や火砲などの揚陸は輸送艦のエアクッション揚陸艇により展開していますが、多用途輸送艦の範となる強襲揚陸艦は一隻で両方の任務を担う装備です。
米海軍の強襲揚陸艦は空中機動部隊による強襲任務と共にVTOL機を搭載しての近接航空支援任務を想定し、そこに揚陸艇用ドックを配置しているため、満載排水量は40000t程度と、満載排水量19000tのひゅうが型護衛艦の倍程度の規模を有しています。
海上自衛隊の想定する多用途輸送艦はどの程度の規模かは未知数ですが、小野寺大臣は前述の記者会見に際し、多目的多機能な輸送艦の早期導入を検討するとの見解を示していますので、比較的早い時期に、例えば次期中期防衛力整備計画時などにおいて提示されるかもしれません。
仮に戦闘機のような装備を将来的に考慮せず、ヘリコプターの他は導入が決定しているMV-22可動翼機程度の運用に特化するのであれば、フランス海軍のミストラル級強襲揚陸艦程度、20000t前後の規模として収目る事も可能で、この場合ならば建造費は充分現実的となります。
他方で、多用途輸送艦は現在の輸送艦の代替となるかについてですが、おおすみ型輸送艦3隻はドック型揚陸艦としての任務を有し、水陸両用装甲車両の搭載への改修等が開始されることから当面運用継続が考えられ、多用途輸送艦は現行輸送艦の後継ではなく、全く新しい装備となる事が考えられるでしょう。
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