◆機雷戦艦艇23隻・航空機15機参加
防衛省によれば海上自衛隊は明日より平成26年度陸奥湾機雷戦訓練及び陸奥湾掃海特別訓練を開始します。
機雷は先の大戦において日米が防御と海域封鎖へ大量に敷設し戦後復興へ大きな障害となり、海上保安庁掃海部隊が発足し現在の海上自衛隊の母体となったことから非常に重視されている分野で、朝鮮戦争や国際貢献任務の鏑矢となった湾岸戦争後の機雷掃海任務参加など、象徴的なものでもあります。
平成26年度陸奥湾機雷戦訓練と陸奥湾掃海特別訓練は掃海技術の向上を軸として毎年青森県の陸奥湾において実施されている訓練機雷を用いる訓練で、実際に訓練機雷を敷設し、掃海訓練及び潜水訓練を実施するもので、今年度の訓練は7月18日から7月30日までの期間に実施されます。
機雷は機雷敷設艦艇や航空機に潜水艦、特設勘や一部の水上戦闘艦から敷設することが可能であり、その敷設費用に対し一旦敷設されれば掃海が完了するまでその海域の商船や艦艇の航行が事実上不可能となる事から、敷設された側の困難が大きいという意味での、最も費用対効果に優れた兵器、と呼ばれるもの。
訓練へは海上自衛隊と米海軍が参加するとのことで、訓練統裁官には、日米より指揮官が当たります。海上自衛隊より掃海隊群司令岡浩海将補、米海軍からは第7対機雷戦隊司令と第7艦隊哨戒偵察部隊司令、そして更に第5機動水中処分隊第501小隊小隊長が統裁官、と発表されました。
参加部隊は海上自衛隊より機雷戦艦艇22隻と航空機13機、米海軍からは艦艇1隻と航空機2機が参加、その内訳は、海上自衛隊より掃海母艦1隻、掃海艦2隻、掃海艇16隻、掃海官制艇2隻、水中処分母船1隻、掃海ヘリコプター2機、哨戒機11機で、哨戒機のうち1機は最新のP-1哨戒機が参加するもよう。
米海軍からの参加は掃海艦1隻、掃海ヘリコプターと哨戒機が各1機、参加します。加えて水中処分隊員も日米より参加し、機雷掃討器具の補完に関する訓練も行われます。哨戒機は航空機雷敷設等に当たるものと考えられ、陸奥湾という一定の海域において敷設と掃海の技量と同時に高める事となるのでしょう。
このなかで、日米のP-3C哨戒機参加に加えて最新のP-1哨戒機の実訓練参加、恐らく初参加となり、国産機の参加は装備体系として完成したことを意味し大きな意味があるといえるかもしれません。一方で、嘉手納基地へつい最近より前方展開している米海軍の最新鋭、P-8A哨戒機の参加が今後期待されるところですが。
我が国の防衛にとり、機雷の脅威は海上交通路を通じての海上輸送網に経済の大部分を依存する日本経済の動脈を保護する重要課題への脅威でもありますし、我が国周辺では旧ソ連海軍の機雷重視装備体系を踏襲する海軍機構が多いため、掃海艇や駆逐艦にも機雷敷設装置を持つなどの事例があり、現実の脅威に他なりません。
朝鮮半島有事や台湾海峡有事の際に大量に敷設され、一部が浮流機雷として日本近海に流失する危惧も無視できません。このほか、潜水艦によっても敷設されることから、隠密裏に我が国周辺へ敷設される危惧があるほか、過去には国際重要航路だるスエズ運河へテロ行為として敷設される事態も発生しています。
注目点としては、米海軍が現在我が国へ配備している掃海艦等の機雷戦艦艇の半分を機雷処理能力を戦闘能力の一部として有する水上戦闘艦、沿海域戦闘艦LCSのインディペンデンス級かフリーダム級により代替する計画がありますが、その準備段階と言える米海軍の機雷戦艦艇の現状について。
もう一つは今回日米は掃海器具を空中から曳航することで総会を行うMH-53を参加させるのですが、米海軍は将来的にSH-60哨戒ヘリコプターの派生型に高性能機雷戦ソナーと水中中深度目標を破壊可能な特殊機関砲を搭載したものに代替する計画がり、技術的困難が伝えられるところですが、この現状に関する技術的意見交換などが、注目されるところでしょう。
今回実施される平成26年度陸奥湾機雷戦訓練と陸奥湾掃海特別訓練は、海上自衛隊の掃海訓練としては平均的な訓練ではありますが、世界的に見た場合、機雷戦艦艇など23隻が一度に集まる訓練というものは稀有なほどの規模です。日米のこの訓練が両国関係の強化と共に周辺国による機雷戦の実施を封じる抑止力となる事が期待されます。
北大路機関:はるな
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