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【日曜特集】ミストラル東京寄港【1】最新鋭フランス海軍指揮戦力投射艦(2008-04-13)

2018-02-18 20:11:25 | 世界の艦艇
■L-9013:Mistral
 強襲揚陸艦、来月に迫る陸上自衛隊水陸機動団新編を前に両用戦艦への関心が高まる中、10年前となりますフランス海軍の当時の最新鋭艦の様子を紹介しましょう。

 写真特集ミストラル東京寄港、ミストラル級強襲揚陸艦が2008年4月に日本を初訪問した際の情景をお届けしましょう。実はミストラル級強襲揚陸艦が佐世保入港時に改めて撮影したものを紹介する予定でしたが、流れてしまい少々古い懐かしの写真紹介となりました。

 ミストラル、フランス海軍が誇る強襲揚陸艦です。小野寺防衛大臣が昨年フランスにて視察した事で有名な多目的艦、フランス海軍では指揮戦力投射艦に区分され、基準排水量16500t、満載排水量21500t、全通飛行甲板を有する船体はその全長210.0 mと全幅32.0 mに吃水6.2 m、巨大な船体には1800㎡の格納庫を有し、クーガー等の強襲ヘリコプターを最大16機収容できるという、16機は大隊規模の落下傘部隊を同時空輸できる水準で中々凄い。

 水陸両用作戦への対応を最大の任務としており、車両甲板面積は2650㎡、ルクレルク主力戦車ではフランス軍編成1個中隊に相当する13両を収容でき、VBCI装輪装甲戦闘車では60両、飛行甲板と航空機格納庫を車両甲板として転用した場合では更に230両を積める、ちなみにフランス海軍は湾岸戦争でも当時の空母クレマンソー飛行甲板に車両を敷き詰めて輸送したことがあったりします。

 揚陸艇は艦内にドックを有し、L-CAT/EDA-R高速機動揚陸艇や海上自衛隊でも運用するLCAC-1型エアクッション揚陸艇で2隻、若しくは低速ながら戦車を輸送可能な汎用揚陸艇4隻と上陸用舟艇8隻搭載可能、こうした能力の結果、船体が非常に大きいのが特色だ、風の影響が大きそうな印象がありまして、この形状と艦容美の比較には議論の余地がある、かもしれませんね。

 クルーズ船設計を大胆に採用した事で満載排水量21500tという巨大な揚陸艦であるにもかかわらず、その建造費は前級にあたる基準排水量8200tと満載排水量12000tのフードル級ドック型揚陸艦よりも安価に抑えられ、乗員は最小140名、通常運用時200名で運用する。

 東京港へフランス海軍艦艇入港、当方はフランスの大型水上戦闘艦を撮影するのは初めての事でした。最新鋭揚陸艦、当時はEOS-40Dカメラに70-300mmEF-ISレンズを装着し撮影していましたが、東京の友人と共に意気揚々と新木場埠頭へと向かったものです。

 ジャンヌダルク、フランス海軍艦艇と云えばヘリコプター巡洋艦ジャンヌダルクが練習巡洋艦として毎年のように日本に寄港していました、満載排水量13000t、100mm単装砲4門に加え、シュペルピューマ中型ヘリコプター8機を格納庫に搭載、強襲揚陸艦任務を担う。

 しかし、フランス政府の日仏交流年度記念行事として1999年に挙行されたフランス練習艦隊親善訪問が最後の訪日となってしまいました。ジャンヌダルクは2010年に除籍されましたので、1963年竣工と護衛艦はるな竣工よりも10年古く、しかし重要な練習艦としての任務やヘリコプター母艦としての即応体制維持が求められて長生きし、はるな除籍翌年に除籍された。

 フランス練習艦隊親善訪問は、ヘリコプター巡洋艦ジャンヌダルク、駆逐艦デュゲイトルーアンが本国から、タヒチのフランス太平洋艦隊から通報艦プレリアルが加わり、盛況な行事だったようですが、流石に当時は行く事が出来なかった、という悲しい思い出がある。

 レインボーブリッジが1993年に完成した事で、この橋は海面から52mしかなく、大型水上戦闘艦は勿論、豪華客船の入港もままならず、東京港過疎化の元凶となりました。レインボーブリッジよりは港湾の活況を考えるとゲートブリッジが必要だった、という事ですね。この部分は更に問題が大きくなり、昨今、クルーズ船は大型化が進み65m程度の高さが必要、ジャンヌダルクはこうして若洲埠頭へ。

 晴海埠頭ではなく、ミストラルも新木場の若洲埠頭に入港しました。これはレインボーブリッジの橋脚が52mでジャンヌダルクの高さが52m、喫水7.2mで余裕が全くなく、満潮時には海面がさらに上昇する為、レインボーブリッジと接触する危険性があった為でした。

 レインボーブリッジにより豪華客船が東京港入港を軒並み諦め、横浜港が日本の玄関となったのですが、この欠陥橋梁が仕様で纏まった背景には近傍に羽田空港があり、レインボーブリッジを建築する際に橋脚高に制限があった。それならば勝鬨橋のように大型客船が航行できるよう可動橋とするか目一杯橋脚の高さに車道を通行させる事が出来るよう吊り橋方式を諦めれば良かった。

 ミストラル東京寄港はそんな中でフランス海軍の大型艦艇日本寄港というまたとない機会でした。ただ、寄港中に一般公開の予定は無く、日曜日に出港という日程でしたので、出航時間を見計らって、若洲は何処だ此処豊洲、と日曜日の朝に新木場へと展開した形です、がテロ対策の改正ソーラス条約の関係上、撮影できる立地が限られていたという。

 ミストラル級強襲揚陸艦、BPC指揮-戦力投射艦という新しい区分で建造されたフランス海軍の新型艦で一番艦ミストラル竣工2006年、つまり東京港に入港した2009年は文字通り最新鋭艦といえる段階でした、フランス海軍は本級を現在三番艦まで保有運用しています。

 フランス海軍は原子力空母や戦略ミサイル原潜、強襲揚陸艦等を装備していますが人員規模は海軍将兵と文民職員含め39000名であり、海上自衛隊と同程度です。原子力空母シャルルドゴールは満載排水量40600t、ラファール戦闘機やE-2C早期警戒機を搭載している、一方で当初二隻を建造する展望であったものの財政難に阻まれ、シャルルドゴールが整備中にはフランス海軍に動かせる空母が無いという状況が続く。

 水上戦闘艦はフォルバン級防空駆逐艦が満載排水量7500tで2隻、アキテーヌ級駆逐艦が満載排水量6100tで防空型対潜型を建造中で4隻就役、2021年までに8隻竣工予定、満載排水量4100tのジョルジュレイグ級駆逐艦4隻、准同型カサール級防空駆逐艦が2隻、と。

 アキテーヌ級駆逐艦が期待の新型艦、というフランス海軍ですが満載排水量4000t以上の大型水上戦闘艦は12隻しかありません、広大な海外県を世界に持つフランスの数の上での主力は通報艦、所謂コルベットと外洋哨戒任務に当たる小型フリゲイトとなっています。小型艦艇による世界規模の海外県警備体制に依拠した少数の大型艦運用、というかたちです。

 通報艦は、満載排水量2900tのフロレアル級6隻、満載排水量1400tのデスティエンヌドルヴ級9隻、満載排水量3500tでステルス設計が竣工当時世界の注目を集めたラファイエット級フリゲイト5隻、大型水上艦12隻に対し警備用艦艇20隻、という陣容なのですね。

 原子力潜水艦はフランス海軍の強力な戦力であり、ル-トリオンファン級戦略ミサイル原潜4隻、射程10000kmで100kt核弾頭6発を備えた多弾頭型M-51潜水艦発射弾道弾16発を搭載し核抑止力を担う。フランスは過去にアルビオン高原の中距離弾道弾戦力を有していましたが、現在は戦略ミサイル原潜と戦闘機発射核巡航ミサイルへ転換しています。そして水中排水量2600tの小型攻撃型原潜リュビ級6隻が守る。

 海軍2015構想、として将来のフランス海軍計画は、戦闘艦艇80隻、戦闘航空機130機、5個艦隊司令部、という兵力整備を念頭に勧められています。この80隻とは水上戦闘艦に潜水艦や掃海艇と揚陸艇や哨戒艇と含んだ数、戦闘航空機は固定翼にヘリコプターを含む。

 海軍2025構想、は上記計画が財政難により達成困難であるとの視点から、大型水上戦闘艦12隻、2025年を目処に二隻目の航空母艦を竣工、新型攻撃型原潜バラクーダ級6隻の建造、と下方修正されました。この海軍2025構想の発表は2008年、ミストラル寄港の前年だ。

 PA-2計画、フランス海軍は唯一の空母として原子力空母シャルルドゴールを運用しています。元々は1961年にクレマンソー級航空母艦のクレマンソーとフォッシュを竣工させ永らく運用していたのですが、財政難により後継艦は一隻しか建造する事が出来ませんでした。

 原子力空母シャルルドゴールに続く第二の航空母艦PA-2はこのミストラル東京寄港時進展中の計画で、当時はイギリス海軍のクイーンエリザベス級航空母艦設計を購入する構想や、英仏共同空母の可能性が盛んに働きかけられていますが2018年現在も具体化していない、すると戦力投射任務を補完する強襲揚陸艦に焦点が、と。

 PA-2計画の遅延は、財政難下でシャルルドゴール建造に1989年の起工式から2001年の就役まで12年を要しており、この遅延には飛行甲板の長さが足りない事に建造中指摘されたり、原子炉の技術的問題などで遅延した訳ですけれども、時間を要した。仮に本年計画が具体化しようとも就役は2030年代、こう考えますとフランス海軍のミストラル級が有するポテンシャルの大きさが垣間見えましょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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