■富士学校長德田秀久陸将へ敬礼
今回から、富士学校長德田秀久陸将挙行の富士学校創設63記念富士駐屯地祭の様子を紹介しましょう、ここ数年間で最も迫力ある富士学校祭でした。
陸上自衛隊富士学校、静岡県駿東郡小山町の富士駐屯地に置かれる陸上自衛隊の専門教育機関です。富士学校隷下には富士教導団が配置され、実員と実動を以ての教育訓練や戦術研究、新装備開発に当り、富士学校は我が国陸上防衛戦力の将来像を開拓する要衝の一つ。
富士駐屯地祭、JR御殿場線御殿場駅から富士山へ向け路線バスを45分ほど一路進み、富士山信仰の登山口として栄える須走、富士浅間神社を詣でたその一歩奥に陸上自衛隊富士駐屯地は佇み、勇んで難関に挑む、との石碑にある校風と共に教育研究を進めています。
富士地区には、第1戦車大隊、第1機甲教育隊、戦車教導隊、第1機械化大隊、と多数の戦車部隊が配置されています。日本全国を見渡しても、これだけの密度で戦車が配備されているのは、3個戦車連隊と1個戦車大隊が並ぶ、北海道の千歳地区のほかありません。
歴史が長くしかし防衛計画の大綱改訂により廃止が予定される第1機甲教育隊、この第1機甲教育隊の廃止に続き、将来的には重装備部隊の廃止潮流があり、第1戦車大隊の去就も暗雲が立ち込めています。ただ、富士教導団については将来的にも維持されるもよう。
記念式典は毎年七月に行われまして、年々来場者が増大している事でも知られます。何故来場者が増えているのか、それは富士教導団が本州最大規模の機械化部隊であり、戦車教導隊を筆頭に重厚な戦車部隊を有している事が広く広報により衆知されました結果です。
御殿場駅周辺は富士学校祭の時期には併せて開催されます富士スピードウェイのモータースポーツ愛好家と共に宿取り合戦、という様相を呈していまして、元々富士山観光という観光需要の上に位置する御殿場なのですが、ホテルの混雑は毎年確保に難渋するほどと。
須走には富士登山須走口が富士山信仰の時代から多くの登山者を向かい入れていまして、その分の宿は多いのですけれども、こちらを総合した場合でもやはり来場者は大きく、防衛への関心、というよりも戦車という一風珍しい装備への好奇心の高さを感じるしだい。
戦車部隊、しかし、実は歴史的に見て富士地区に戦車を集中しているという背景には、一般市民の好奇心に応えるという副次的効果の向こう側に、戦車部隊を国民に見てもらう、という重要な役割がある事も忘れてはなりません。愛好家以外の一般市民に、ということ。
陸軍第36軍という帝国陸軍時代に本土決戦に備えて新編された軍があるのですが、富士地区や埼玉県加須町等、首都圏近郊に虎の子の戦車第1師団、新編の戦車第4師団を隷下に置き、機動歩兵や機動砲兵と独立重砲部隊という重厚な編成を以て威容を示していました。
1000万都民の信頼を勝ち得てこそ戦争を遂行出来る、当時の陸軍が第36軍を首都外縁へ配置した背景には、こうした実情がありまして、万一のことがあっても帝国陸軍が1000万都民を守りきる、その為の充分な兵力も準備されている、と一種、誇示していた訳ですね。
大本営は、しかし、連合軍の上陸は九州東岸の日向灘沿いしかありえない、と脅威評価をおこっていまして、策源地として沖縄の第32軍を全滅させ沖縄を占拠したのだから、一挙に千葉県房総半島の長い海岸線に着上陸する可能性よりも南九州上陸を想定していました。
本土防衛を純粋に考えるのならば、第36軍は九州地区を担当する第2総軍へ編入する事が妥当なのだけれども、敢えて第1総軍に編入し、首都近郊へ配置したのは、国民の支持が無ければ戦争を行う事が出来ない、と第二次世界大戦中でさえ考えられていた為という。
先の大戦は敗戦により実現させる事無く第36軍は役目を終えましたが、連合軍九州上陸の際には第36軍をあらゆる輸送力を動員し九州へ展開させる計画だが、連合軍はそれに先んじ、東海道本線や山陽本線と関門トンネルへの攻撃を強化するだろうから、と苦悩があったようです。
日本国憲法施政下の現代に視点を戻しますと、やはり1000万都民と首都圏3000万の人口があり、我が国が平和憲法の名の下の専守防衛政策を貫くためには、国民の支持が必要である訳です。専守防衛とは国土に敵を迎え撃つ、つまり本土決戦を指すに他なりません。
専守防衛には無理があると考えるのですが、平和憲法施政下に専守防衛の実態をあまり考えることなく支持する声は意外と多いように見えまして、しかし、憲法を遵守し日本が国土に敵の上陸を許し蹂躙され始めた際に、国民は何を以て政府の専守防衛を支持するのか。
心の拠り所、という意味でも首都圏に重厚な機械化部隊を置き、専守防衛の下でも国民の平和的生存権は守り得る、という事を示す必要がある、こうした意味で富士地区の戦車には意味があるのです。実際問題、専守防衛として国土を戦場とする施策、個人的に疑問だ。
しかし、専守防衛と平和憲法の下での自衛権への制限、自衛権とは正当防衛と同語の和訳に自衛権と分けたのですが、我が国では憲法上の整合性を持たせるために正当防衛を集団的と個別的に分けたうえで、集団的自衛権の行使を憲法の上で制限的に解釈している。
その上で、事実上集団的自衛権に反対する論調と同じ方々に見られるのが、有事の際には同盟国アメリカに期待し、過度な攻撃力を自衛隊は持つべきではない、という。この矛盾点に気付かないようでは、そのうち我が国も大衆迎合主義に呑込まれるのではないか、と。
こう懸念していたのが自民党から当時の民主党への政権交代で、ポピュリズム的手法といいますか、大衆迎合主義的公約の積み重ねを主権者たる国民は精査する事無く鵜呑みにし、結果的に我が国は大変な混迷に遭遇しましたが、現在は多少は転換したのか、いやまだか。
話題脱線が過ぎた。富士学校筆頭に富士地区の有力な機械化部隊は、万一の際への無言の鎮めとして、国民に平和主義が国外の勢力に簡単に蹂躙される事が無いよう、確実な準備を行い、将来にわたってもその準備と抑止力の構築に余念がない事を広く示している訳です。
国家の無言の決意、という表現が当てはまるものですが、我が国は1945年の終戦以降一貫して平和国家としての繁栄を謳歌してきました。しかし、我が国周辺には平和への努力を脱し軍事力強化だけに国力を注力した国、類似する諸国がやはり圧力を掛けてきています。
国家の無言の決意とは、周辺国が反映への努力をせずとも軍事力に注力し我が国をはじめ平和への努力を反映へ繋げ実らせている果実を横取りする行動に対し、平和国家ならではの相応の対応力を、国土戦という形ではあってもその時には示す、覚悟ともいえましょう。
ただ、富士教導団は4000名規模ですが、せめて全国の師団や旅団へ、普通科部隊や機甲科部隊、特科部隊装備としてこの同等の水準の装備があれば、と思う事はあるのですね。正直、全国の師団や旅団の普通科や機甲科と特科に、この水準の装備があれば敵は来ない。
10式戦車に90式戦車と89式装甲戦闘車に96式装輪装甲車や99式自走榴弾砲とMLRS,9000名規模の小型師団よりも、富士教導団規模の部隊に高射特科部隊と戦闘支援部隊、通信部隊を配属した機械化混成団を全国へ配置した方が、と思う事は、よくあります。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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今回から、富士学校長德田秀久陸将挙行の富士学校創設63記念富士駐屯地祭の様子を紹介しましょう、ここ数年間で最も迫力ある富士学校祭でした。
陸上自衛隊富士学校、静岡県駿東郡小山町の富士駐屯地に置かれる陸上自衛隊の専門教育機関です。富士学校隷下には富士教導団が配置され、実員と実動を以ての教育訓練や戦術研究、新装備開発に当り、富士学校は我が国陸上防衛戦力の将来像を開拓する要衝の一つ。
富士駐屯地祭、JR御殿場線御殿場駅から富士山へ向け路線バスを45分ほど一路進み、富士山信仰の登山口として栄える須走、富士浅間神社を詣でたその一歩奥に陸上自衛隊富士駐屯地は佇み、勇んで難関に挑む、との石碑にある校風と共に教育研究を進めています。
富士地区には、第1戦車大隊、第1機甲教育隊、戦車教導隊、第1機械化大隊、と多数の戦車部隊が配置されています。日本全国を見渡しても、これだけの密度で戦車が配備されているのは、3個戦車連隊と1個戦車大隊が並ぶ、北海道の千歳地区のほかありません。
歴史が長くしかし防衛計画の大綱改訂により廃止が予定される第1機甲教育隊、この第1機甲教育隊の廃止に続き、将来的には重装備部隊の廃止潮流があり、第1戦車大隊の去就も暗雲が立ち込めています。ただ、富士教導団については将来的にも維持されるもよう。
記念式典は毎年七月に行われまして、年々来場者が増大している事でも知られます。何故来場者が増えているのか、それは富士教導団が本州最大規模の機械化部隊であり、戦車教導隊を筆頭に重厚な戦車部隊を有している事が広く広報により衆知されました結果です。
御殿場駅周辺は富士学校祭の時期には併せて開催されます富士スピードウェイのモータースポーツ愛好家と共に宿取り合戦、という様相を呈していまして、元々富士山観光という観光需要の上に位置する御殿場なのですが、ホテルの混雑は毎年確保に難渋するほどと。
須走には富士登山須走口が富士山信仰の時代から多くの登山者を向かい入れていまして、その分の宿は多いのですけれども、こちらを総合した場合でもやはり来場者は大きく、防衛への関心、というよりも戦車という一風珍しい装備への好奇心の高さを感じるしだい。
戦車部隊、しかし、実は歴史的に見て富士地区に戦車を集中しているという背景には、一般市民の好奇心に応えるという副次的効果の向こう側に、戦車部隊を国民に見てもらう、という重要な役割がある事も忘れてはなりません。愛好家以外の一般市民に、ということ。
陸軍第36軍という帝国陸軍時代に本土決戦に備えて新編された軍があるのですが、富士地区や埼玉県加須町等、首都圏近郊に虎の子の戦車第1師団、新編の戦車第4師団を隷下に置き、機動歩兵や機動砲兵と独立重砲部隊という重厚な編成を以て威容を示していました。
1000万都民の信頼を勝ち得てこそ戦争を遂行出来る、当時の陸軍が第36軍を首都外縁へ配置した背景には、こうした実情がありまして、万一のことがあっても帝国陸軍が1000万都民を守りきる、その為の充分な兵力も準備されている、と一種、誇示していた訳ですね。
大本営は、しかし、連合軍の上陸は九州東岸の日向灘沿いしかありえない、と脅威評価をおこっていまして、策源地として沖縄の第32軍を全滅させ沖縄を占拠したのだから、一挙に千葉県房総半島の長い海岸線に着上陸する可能性よりも南九州上陸を想定していました。
本土防衛を純粋に考えるのならば、第36軍は九州地区を担当する第2総軍へ編入する事が妥当なのだけれども、敢えて第1総軍に編入し、首都近郊へ配置したのは、国民の支持が無ければ戦争を行う事が出来ない、と第二次世界大戦中でさえ考えられていた為という。
先の大戦は敗戦により実現させる事無く第36軍は役目を終えましたが、連合軍九州上陸の際には第36軍をあらゆる輸送力を動員し九州へ展開させる計画だが、連合軍はそれに先んじ、東海道本線や山陽本線と関門トンネルへの攻撃を強化するだろうから、と苦悩があったようです。
日本国憲法施政下の現代に視点を戻しますと、やはり1000万都民と首都圏3000万の人口があり、我が国が平和憲法の名の下の専守防衛政策を貫くためには、国民の支持が必要である訳です。専守防衛とは国土に敵を迎え撃つ、つまり本土決戦を指すに他なりません。
専守防衛には無理があると考えるのですが、平和憲法施政下に専守防衛の実態をあまり考えることなく支持する声は意外と多いように見えまして、しかし、憲法を遵守し日本が国土に敵の上陸を許し蹂躙され始めた際に、国民は何を以て政府の専守防衛を支持するのか。
心の拠り所、という意味でも首都圏に重厚な機械化部隊を置き、専守防衛の下でも国民の平和的生存権は守り得る、という事を示す必要がある、こうした意味で富士地区の戦車には意味があるのです。実際問題、専守防衛として国土を戦場とする施策、個人的に疑問だ。
しかし、専守防衛と平和憲法の下での自衛権への制限、自衛権とは正当防衛と同語の和訳に自衛権と分けたのですが、我が国では憲法上の整合性を持たせるために正当防衛を集団的と個別的に分けたうえで、集団的自衛権の行使を憲法の上で制限的に解釈している。
その上で、事実上集団的自衛権に反対する論調と同じ方々に見られるのが、有事の際には同盟国アメリカに期待し、過度な攻撃力を自衛隊は持つべきではない、という。この矛盾点に気付かないようでは、そのうち我が国も大衆迎合主義に呑込まれるのではないか、と。
こう懸念していたのが自民党から当時の民主党への政権交代で、ポピュリズム的手法といいますか、大衆迎合主義的公約の積み重ねを主権者たる国民は精査する事無く鵜呑みにし、結果的に我が国は大変な混迷に遭遇しましたが、現在は多少は転換したのか、いやまだか。
話題脱線が過ぎた。富士学校筆頭に富士地区の有力な機械化部隊は、万一の際への無言の鎮めとして、国民に平和主義が国外の勢力に簡単に蹂躙される事が無いよう、確実な準備を行い、将来にわたってもその準備と抑止力の構築に余念がない事を広く示している訳です。
国家の無言の決意、という表現が当てはまるものですが、我が国は1945年の終戦以降一貫して平和国家としての繁栄を謳歌してきました。しかし、我が国周辺には平和への努力を脱し軍事力強化だけに国力を注力した国、類似する諸国がやはり圧力を掛けてきています。
国家の無言の決意とは、周辺国が反映への努力をせずとも軍事力に注力し我が国をはじめ平和への努力を反映へ繋げ実らせている果実を横取りする行動に対し、平和国家ならではの相応の対応力を、国土戦という形ではあってもその時には示す、覚悟ともいえましょう。
ただ、富士教導団は4000名規模ですが、せめて全国の師団や旅団へ、普通科部隊や機甲科部隊、特科部隊装備としてこの同等の水準の装備があれば、と思う事はあるのですね。正直、全国の師団や旅団の普通科や機甲科と特科に、この水準の装備があれば敵は来ない。
10式戦車に90式戦車と89式装甲戦闘車に96式装輪装甲車や99式自走榴弾砲とMLRS,9000名規模の小型師団よりも、富士教導団規模の部隊に高射特科部隊と戦闘支援部隊、通信部隊を配属した機械化混成団を全国へ配置した方が、と思う事は、よくあります。
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