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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

自衛隊観艦式2018中止,平成30年度自衛隊記念日行事は中央観閲式振替実施を防衛省検討

2018-02-24 20:01:27 | 国際・政治
■平成最後の自衛隊記念日行事
 2019年に今上天皇は退位され、本年は平成最後の一年となります。この平成最後の一年に実施される自衛隊観艦式が、中止となるようです。

 自衛隊記念日行事として首相を観閲官に迎え自衛隊が毎年陸海空自衛隊持ち回りで実施してきました観閲式について、2020年東京オリンピック準備の観点から防衛省は、中央観閲式が行われる朝霞駐屯地が五輪射撃競技会場として用いられる為、2018年実施予定の観艦式を本年実施せず、先に今年中央観閲式を実施するべく、順番を入れ替える方針とのこと。

 観艦式、海上自衛隊の自衛隊記念日行事として三年に一度相模湾において実施される国家行事で、観閲官に内閣総理大臣が当ると共に主権者たる国民へ海上防衛力の高水準を広く展示すると共に友好国や非友好国へその実力を誇示する自衛隊記念日行事です。三年に一度という事があり、毎回最新鋭の艦艇と航空機が初参加する注目の広報行事でもあります。

 実は内々に今年は観艦式出来ない、観閲式になるという御話を頂いていました、今回の報道はこれが公となった形ですが、当方は早合点して護衛艦運用関係で観艦式出来ず、横須賀の吉倉桟橋や逸見地区近辺で護衛艦を停泊させ、停泊式観閲式をやるのだと勘違いしていました。ミサイル防衛と中国艦艇西日本周辺行動が激増し、艦隊は余裕がありません。

 自衛隊記念日行事として観閲式と観艦式は当初毎年実施されていました。1973年の石油危機を受け観艦式は不定期実施と隔年や毎年実施となっていましたが、1996年より陸海空自衛隊の持ち回りが決定、航空観閲式が開始され陸海空自衛隊持ち回りとなった後、中央観閲式、航空観閲式、観艦式、が行われていましたが、順番の交替はこれまでで初となる。

 中央観閲式前年は例年予行として東部方面隊観閲式を朝霞で実施されています。第1師団と第12旅団や富士学校等首都圏近郊の部隊が参加し元々2018年に予定されていました。こうした事情がありますから今年は東部方面隊観閲式の予定が元々組まれていた部隊運用計画を、東部方面隊観閲式から中央観閲式としまして極論、看板の掛け換えで済みます。

 中央観閲式だけならば陸上自衛隊は首都圏の第一師団と教育部隊の富士学校や航空学校で出来ますが、観艦式は自衛艦隊が日本中から部隊を集結させる必要があり、例えば教育訓練部隊と首都近郊部隊、練習艦隊と航空教育集団に横須賀地方隊だけではできません。海上自衛隊の忙しさは、地方隊展示訓練が2014年以降出来ない現状が端的に示している。

 地方隊展示訓練、中央観閲式の前倒し実施が艦隊の運用逼迫に起因するものであるかどうかは、観艦式が実施される年度には実施されない横須賀地方隊や佐世保地方隊、舞鶴地方隊に呉地方隊と大湊地方隊が実施する夏の展示訓練が今夏、予定されるかで全てが分かる事でしょう。一昨年は熊本地震災害派遣、昨年は諸般の事情として実施されていません。

 伊勢湾展示訓練や駿河湾展示訓練、若狭湾展示訓練や美保沖展示訓練に新潟沖展示訓練、大阪湾展示訓練や広島湾展示訓練、博多湾展示訓練や石狩湾展示訓練等、護衛艦が5隻程度に掃海艇が3隻と輸送艦と多用途支援艦、地方隊によってはミサイル艇2隻と海上保安庁巡視船等が参加し夏に実施する地方隊の観閲式なのですが、2014年以降行われていない。

 航空観閲式も昨年、前日しか予行予定日が組めないほどに航空自衛隊が実任務増大に疲弊していました、実際、着上陸までは陸上で盤石な防衛体制を固める陸上自衛隊よりも、平時からの警戒監視任務や対領空侵犯措置任務が山積している航空自衛隊と海上自衛隊は非常に忙しい。実態は五輪に名を借りた観艦式延期ですね。朝霞駐屯地だけが会場ではない。

 明治神宮外苑において元々観閲式は行われていました、朝霞駐屯地に集結した部隊が一般道を神宮外苑へ展開し、観閲式に伴う移動が国民に広く自衛隊と親しむ機会となっていました。もちろん、朝霞駐屯地が無理だからと神宮外苑で行おうにも、神宮外苑は新国立競技場建設で朝霞駐屯地以上に五輪準備で忙殺されていまして、観閲式実施は現実的でない。

 朝霞駐屯地が無理でも、しかし、富士山を背景に東富士演習場で実施すればよい、富士は東京ではないといわれるでしょうが、朝霞駐屯地がそもそも埼玉県ですし、航空観閲式を行う百里基地は茨城県、観艦式に至っては相模湾です。伝統もあるし、部隊も近い。毎年三万名以上が見学する富士総合火力演習が行われている。五輪は口実と分かるでしょう。

 中央観閲式、東富士畑岡で実施するならば、富士駐屯地、駒門駐屯地、板妻駐屯地、滝ヶ原駐屯地、富士地区の富士教導団と第一師団、そこに航空学校と高射学校に施設学校の展開だけで成り立つし、富士地区の戦車は100以上、国威発揚に繋げるならばこちらの方が規模は大きく出来る、日米同盟を強調するならばキャンプ富士の部隊が参加してもいい。

 ただ、自衛隊記念日行事は国民と共に諸外国に誇示するものです。安易に変更するのは如何なものかな、と思わないでもありません。前述の通り、中央観閲式は過去に明治神宮外苑で実施し、現在朝霞駐屯地で行っているのですからなにも朝霞駐屯地でなくともよい。東富士演習場での実施を提案しましたが、これが遠すぎるならば東京の立川駐屯地も広い。

 観艦式も停泊式観艦式とすれば予行も不要です。現在の相模湾での観艦式は多数の艦艇が洋上を行き交う高度なものですが、世界を見ればこうした観艦式はむしろ少数派でして、高度な練度が求められる分、内外に海上自衛隊の能力を誇示するには相模湾での観艦式は意味がありますが、実施しないのでは意味がない。世界では停泊式観艦式が一般的です。

 国際観艦式2000、自衛隊発足50周年記念行事として実施された東京湾国際観艦式は停泊式観艦式でした。停泊式観艦式では錨泊している艦艇の間を観閲官が乗艦した艦が航行し、敬礼を受ける。国際観艦式では観閲艦しらね、以下4隻が海上自衛隊や各国艦艇の周りを一周しました。しかし、台湾海軍は基地に停泊させ、陸海空併せて閲兵を行った事もある。

 逸見桟橋にヘリコプター搭載護衛艦、吉倉桟橋に護衛艦や支援艦艇と外国艦艇を並べて登舷礼、安倍首相が船越地区方面から自動車で桟橋に停泊する艦艇を観閲、逸見桟橋に同じ横須賀の陸上自衛隊東部方面混成団の装備と、富士学校の戦車を並べ敬礼、上空に第23飛行隊等教育部隊戦闘機やブルーインパルスが飛行、最後に観閲艦甲板で訓示して締め括る。

 自衛隊統合演習の期間に合わせれば艦艇も集めやすいでしょう。勿論、観艦式と中央観閲式の交替理由は五輪、実はミサイル防衛での日本海におけるイージス艦常駐や南西諸島警戒監視任務と、更に海賊対処任務も並行して海上自衛隊には実は観艦式を行う余裕があり、中央観閲式は東富士や立川ではなく朝霞で行わねばならない理由があるのかもしれません。

 国家行事、しかし、国家行事という点を考える必要があります。様々な理由は考えられるのですが、主権者たる国民へ防衛力という国家の無言の決意を示し周辺国へも日本の平和主義を誇示する行事ですので、仮に上記の通り理由はあっても、しかしです、やはり予定通り実施する方式を検討し、艦艇運用が逼迫しているのならば、その点も包み隠さず行事の方式へと反映させるべきではないか、こう考えます。もっとも、中央観閲式はもっとも悪天候に強い行事、昨年悪天候で航空観閲式が中止されたことを考えれば、平成最後の自衛隊記念行事を一番手堅い中央観閲式とする構図となる訳で、この点の納得はできますね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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