■検証:神埼市AH-64D墜落事故
AH-64D戦闘ヘリコプター墜落事故から明日で十日となります、乗員の犠牲者が出ており、真剣に再発防止を検証しなければなりません。
AH-64D戦闘ヘリコプター墜落事故、中古部品利用による空中分解の可能性が出てきました。中古部品、正確には再生部品という区分で摩耗した部品の摩耗部分を補強再整備し新品同様に再生した部品で、規格外の中古品を海外市場から取り寄せたものではありません。ただ、再生部品は運用期間中に高頻度の振動に曝され疲労する部位が残る事も確かです。
佐賀県神埼市で今月5日に発生した墜落事故では、メインローターとエンジン駆動系を連接するメインローターヘッド部分が砕けた状態で事故現場より300mから500mの範囲で飛び散り発見されています。ヘリコプターは回転翼航空機に区分されますがメインローターヘッドは回転翼を機体に連接する最重要部品で、ここが破損した場合即座に墜落する。
メインローターヘッド部分は、別の機体で使用されたメインローターヘッドが摩耗により振動が確認されるようになり、アメリカ国内のメーカーへ送った上で点検修理を行ったうえで事故機に装着しており、その装着後最初の点検飛行の際に墜落したとしています。当初新品に交換したとした陸上自衛隊は事実確認不充分として記者会見の場で謝罪しました。
再生部品は陸上自衛隊では日常的に使用していると記者会見の場において発表していますが、ローターヘッドは1750時間毎に交換する消耗品であり事故機が部隊配備後最初のローターヘッド換装を行ったとの発言があり、重要部品が日常的に不足する事で可動機から任務毎に部品を融通し稼働率を維持する共食い整備と呼ばれる状態の可能性が出てきました。
共食い整備とは、予備部品費用や整備関連費用が枯渇した場合に行われる施策で飛行可能な状態の航空機から飛行不能となる航空機へ部品を一時的に移管する方法です。この場合、書類上の稼動率は高く維持されますが、部品が不足しているという根本要因は不変である為、例えば有事の際に書類上全て稼動状態にある航空機を同時に運用する事は出来ません。
不良部品が原因であるとしてもその背景が再発防止のためには重要である。推測でしかないのですがメインローターヘッドの予備が潤沢に確保されているならば、再生部品を使用する事は無かったのではないでしょうか、その上でAH-64Dの運用費用が当初見積もりよりも増大、当初想定した予算内では必要な予備部品を確保出来なかった可能性があります。
整備費用の増大、と推測した根拠はAH-64Dの調達数削減による作業特殊化です。60機を導入する予定が13機の調達で終了、ミサイル防衛や島嶼部防衛等新任務への対応により予算が圧迫され必要なAH-64Dを調達できなかったと共にライセンス生産予定の先行調達部品費用を製造元の富士重工より請求、最高裁で自衛隊は351億円の和解金を支払いました、この影響も小さいとは考えにくい。
作業の特殊化とは慣れている整備熟練者が少ないという事で、96機ある機体の三年に一度交換する維持部品価格と、13機しかない機種の三年に一度交換する維持部品価格では、量産効果がまるで違う事は考える以前の問題ですが、一方、当初見積もりよりも整備費が異常増大した場合、財務当局へ要求する整備費用の増大部分を理解させる事が難しく、事業評価の観点から整備費用を圧縮しようとした可能性はあります。
機数不足により整備要員経験蓄積への影響、という可能性の根拠となる点はメインローターヘッド交換の実績数で、3回のみだったという。メインローターヘッドの空中分解は整備要員としては文字通り想定外の要因といえますが、陸上自衛隊全体でAH-64Dメインローターヘッドの交換はまだ三例しかなく、事故機が三例目であったという。96機あった先代のAH-1Sと13機のAH-64Dでは整備員総数がまるで違う。
一方で、新任務に関わる防衛費全体の圧迫は度を越しています。予算総額はそのまま、一例としてミサイル防衛に伴う費用は中期防単位では一兆円単位で必要となっており、AH-64D戦闘ヘリコプターの139機分に当たる費用です。この数字の意味するところは、ありとあらゆる装備品の運用経費や部隊装備定数割れを是認し無理矢理押し通している。
現予算では任務遂行は不可能であり、予算を増額し必要な装備品を定数通り調達し維持できる体制を確保するか、予算をそのままに災害派遣任務等他省庁が対応可能な任務への移管を行い自衛隊の関与を終了するかミサイル防衛を断念し自治体に防空壕建設を義務付けるか、つまり国民の税金の負担をお願いするか国民の労力の負担をお願いするかが要る。
そして繰り返しますが、AH-64Dは問題が最初に顕在化しただけであり、他の航空機についても、勿論航空機以外の装備品や部隊運用についても、事故という厳しい形で顕在化する可能性は否定できません。民間企業に対し政府は働き方改革を提唱していますが、政府はまずその前に足元の自衛隊について、現在の装備を維持する上で必要な予算を第三者委員会などを通じ無理を通し過ぎていないか検証する必要があります。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
AH-64D戦闘ヘリコプター墜落事故から明日で十日となります、乗員の犠牲者が出ており、真剣に再発防止を検証しなければなりません。
AH-64D戦闘ヘリコプター墜落事故、中古部品利用による空中分解の可能性が出てきました。中古部品、正確には再生部品という区分で摩耗した部品の摩耗部分を補強再整備し新品同様に再生した部品で、規格外の中古品を海外市場から取り寄せたものではありません。ただ、再生部品は運用期間中に高頻度の振動に曝され疲労する部位が残る事も確かです。
佐賀県神埼市で今月5日に発生した墜落事故では、メインローターとエンジン駆動系を連接するメインローターヘッド部分が砕けた状態で事故現場より300mから500mの範囲で飛び散り発見されています。ヘリコプターは回転翼航空機に区分されますがメインローターヘッドは回転翼を機体に連接する最重要部品で、ここが破損した場合即座に墜落する。
メインローターヘッド部分は、別の機体で使用されたメインローターヘッドが摩耗により振動が確認されるようになり、アメリカ国内のメーカーへ送った上で点検修理を行ったうえで事故機に装着しており、その装着後最初の点検飛行の際に墜落したとしています。当初新品に交換したとした陸上自衛隊は事実確認不充分として記者会見の場で謝罪しました。
再生部品は陸上自衛隊では日常的に使用していると記者会見の場において発表していますが、ローターヘッドは1750時間毎に交換する消耗品であり事故機が部隊配備後最初のローターヘッド換装を行ったとの発言があり、重要部品が日常的に不足する事で可動機から任務毎に部品を融通し稼働率を維持する共食い整備と呼ばれる状態の可能性が出てきました。
共食い整備とは、予備部品費用や整備関連費用が枯渇した場合に行われる施策で飛行可能な状態の航空機から飛行不能となる航空機へ部品を一時的に移管する方法です。この場合、書類上の稼動率は高く維持されますが、部品が不足しているという根本要因は不変である為、例えば有事の際に書類上全て稼動状態にある航空機を同時に運用する事は出来ません。
不良部品が原因であるとしてもその背景が再発防止のためには重要である。推測でしかないのですがメインローターヘッドの予備が潤沢に確保されているならば、再生部品を使用する事は無かったのではないでしょうか、その上でAH-64Dの運用費用が当初見積もりよりも増大、当初想定した予算内では必要な予備部品を確保出来なかった可能性があります。
整備費用の増大、と推測した根拠はAH-64Dの調達数削減による作業特殊化です。60機を導入する予定が13機の調達で終了、ミサイル防衛や島嶼部防衛等新任務への対応により予算が圧迫され必要なAH-64Dを調達できなかったと共にライセンス生産予定の先行調達部品費用を製造元の富士重工より請求、最高裁で自衛隊は351億円の和解金を支払いました、この影響も小さいとは考えにくい。
作業の特殊化とは慣れている整備熟練者が少ないという事で、96機ある機体の三年に一度交換する維持部品価格と、13機しかない機種の三年に一度交換する維持部品価格では、量産効果がまるで違う事は考える以前の問題ですが、一方、当初見積もりよりも整備費が異常増大した場合、財務当局へ要求する整備費用の増大部分を理解させる事が難しく、事業評価の観点から整備費用を圧縮しようとした可能性はあります。
機数不足により整備要員経験蓄積への影響、という可能性の根拠となる点はメインローターヘッド交換の実績数で、3回のみだったという。メインローターヘッドの空中分解は整備要員としては文字通り想定外の要因といえますが、陸上自衛隊全体でAH-64Dメインローターヘッドの交換はまだ三例しかなく、事故機が三例目であったという。96機あった先代のAH-1Sと13機のAH-64Dでは整備員総数がまるで違う。
一方で、新任務に関わる防衛費全体の圧迫は度を越しています。予算総額はそのまま、一例としてミサイル防衛に伴う費用は中期防単位では一兆円単位で必要となっており、AH-64D戦闘ヘリコプターの139機分に当たる費用です。この数字の意味するところは、ありとあらゆる装備品の運用経費や部隊装備定数割れを是認し無理矢理押し通している。
現予算では任務遂行は不可能であり、予算を増額し必要な装備品を定数通り調達し維持できる体制を確保するか、予算をそのままに災害派遣任務等他省庁が対応可能な任務への移管を行い自衛隊の関与を終了するかミサイル防衛を断念し自治体に防空壕建設を義務付けるか、つまり国民の税金の負担をお願いするか国民の労力の負担をお願いするかが要る。
そして繰り返しますが、AH-64Dは問題が最初に顕在化しただけであり、他の航空機についても、勿論航空機以外の装備品や部隊運用についても、事故という厳しい形で顕在化する可能性は否定できません。民間企業に対し政府は働き方改革を提唱していますが、政府はまずその前に足元の自衛隊について、現在の装備を維持する上で必要な予算を第三者委員会などを通じ無理を通し過ぎていないか検証する必要があります。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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