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【防衛情報】インドネシア軍,カルロベルガミーニ級フリゲイト6隻導入と米欧空中給油機選定

2021-11-15 20:05:44 | 先端軍事テクノロジー
■特報:世界の防衛,最新論点
 インドネシアの国防計画は二転三転する事で有名です。しかしここ最近インドネシアの国防計画は不思議な方向に向いているよう思えます。

 インドネシア海軍はイタリアのフィンカンティエリ社よりカルロベルガミーニ級フリゲイト6隻を導入します。これは6月10日にインドネシア国防省が発表したもので、カルロベルガミーニ級の導入はインドネシア海軍にとり、冷戦時代の1963年にソ連より取得したスヴェルドロフ級巡洋艦オルジョニキーゼに次ぐ規模の大型水上戦闘艦取得となります。

 スヴェルドロフ級巡洋艦オルジョニキーゼは満載排水量16340t、インドネシアではイリアンとして152mm三連装砲4基の威容は海軍の象徴的存在となりましたが1963年の導入以降手に余るものとなり1972年に除籍されました。しかし今回のカルロベルガミーニ級は建造にインドネシアのPT-PAL造船所が参画する為、実運用は充分に可能といえましょう。

 カルロベルガミーニ級フリゲイトは多用途フリゲイトFREMM計画としてフランスとイタリアが共同開発したもので、特徴的な塔型マストと徹底したステルス設計を採用、満載排水量は5950tあり、イタリア海軍では防空型と対潜型が計8隻採用、またエジプト海軍が2020年より2隻を導入、アメリカ海軍もコンステレーション級として20隻を導入します。
■マエストラーレ級フリゲイト
 カルロベルガミーニ級という名前だけで驚きですが更にもう一つ。

 インドネシア海軍はイタリアより退役したマエストラーレ級フリゲイト2隻を導入します。これは先に決定したカルロベルガミーニ級フリゲイト6隻と併せ、新造艦の就役までに先行して取得するもので、中古艦の譲渡に留まらず、イタリア国内でフィンカンティエリ社による延命改修と近代化改修を実施した上でインドネシア海軍へ引き渡されるという。

 マエストラーレ級は1982年から1985年にかけ8隻が建造されたイタリア海軍の主力艦で満載排水量は3200t、127mm艦砲やテセオ2対艦ミサイルと533mm長魚雷という強力な武装に加えAB-212哨戒ヘリコプター2機を搭載する強力な武装を誇り、速力は32ノット、マエストラーレ、グレカーレ、リベッチオ、シロッコ、季節風名を冠し4隻が現役です。

 マエストラーレ級は日本の護衛艦はつゆき型と同世代の水上戦闘艦で船体は二回りほど小型です。イタリア海軍では艦齢が35年を超えており、後継にカルロベルガミーニ級フリゲイトが充てられており、8隻のうち2021年までに4隻が退役しています。なお過去にはフィリピン海軍が中古艦の導入を希望していますが、この際には輸出は実現しませんでした。
■ラファール戦闘機36機導入か
 インドネシアは戦闘機も選定中なのですが。

 インドネシア政府は6月7日、フランス製ラファール戦闘機36機の導入について覚書を交わした、インドネシアのエアロスペースレビュー誌が報じている。インドネシアでは次期戦闘機としてアメリカ製F-35ライトニング、F-15ストライクイーグル、フランス製ラファール、ロシア製Su-35戦闘機が検討され、その決定は二転三転し公式発表さえ錯綜する。

 ラファール戦闘機36機の導入覚書は、2021年12月にも正式契約が行われるとされています。もっとも、インドネシアでは6月10日にイタリアよりカルロベルガミーニ級フリゲイト導入が報じられており、エアロスペースレビュー誌の情報源は関係者からのものとしているが、交渉の一環として情報をリークする報道のアドバルーンではないかとも考え得る。

 ラファール戦闘機は先んじて覚書が交わされるも、その後インドネシアはF-15ストライクイーグルの導入を発表し覚書を交わす直前にステルス機であるF-35を、アメリカはインドネシアへ供与の可能性を示していないにも関わらず導入希望した事例がある為だ。ラファール導入はフリゲイト導入にフランスのアキテーヌ級を安価に取得する交渉なのだろうか。
■空中給油機2機7億ドルで調達
 ボーイングKC-46AとエアバスA330MRTTが候補だという。

 インドネシア国防省は空中給油機2機を7億ドルで調達する。インドネシア国防省は6月に入りインドネシア財務省より空中給油用航空機導入に関する認可を受けたと発表した。インドネシア空軍では2018年より空軍への空中給油機導入の研究を実施しており、その候補航空機としては、ボーイングKC-46AとエアバスA330MRTTを比較検討していた。

 空中給油機の導入により、インドネシア空軍が現在運用するアメリカ製F-16C/D戦闘機とロシア製Su-27/Su-30やSu-35戦闘機の作戦行動半径が大幅に増大するとしている。一方、この二機種は給油機が燃料を流し込むフライングブーム方式と戦闘機側が吸うプローブアンドドローグ方式とに分かれており、空中給油機にも二種の給油方式両立が求められよう。

 インドネシアの国防計画は正式契約後も二転三転する事で有名だ、そして空軍は同時に次期戦闘機としてフランスのラファールとアメリカのF-15Eをほぼ同時に内定させ、恐らくどちらかをキャンセルするものと考えられている。A330MRTTとラファールKC-46AとF-15E、抱合せで有利な条件を引き出そうとしているようにさえ思えるのは、考え過ぎか。
■空中給油機整備支援企業決定
 ボーイングKC-46AとエアバスA330MRTTのどちらかを導入する本気度の表れか、それとも。

 インドネシア空軍が導入に向け機種検討を進める空中給油機について整備にガルーダインドネシア航空の担当が決定した。インドネシア軍ではボーイングKC-46AとエアバスA330MRTTを候補機として検討しているが、共に旅客機を原型とした大型航空機であり、空軍の整備補給能力の手に余るものである事は否めず、国営航空会社が支援に当るようだ。

 ガルーダインドネシア航空はインドネシア国営で、具体的にはその子会社であるPTガルーダメンテナンスファシリティエアロアジアが整備に当る。同社は親会社ガルーダ航空のボーイング737の整備を担当しているが近年に入りエアバスA320の整備も担当する。なお空中給油機候補機の原型機はボーイング767とエアバスA330であり共により大型である。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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