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【防衛情報】英国DSEI国際危機管理展:迫撃砲システムMWS81,50mm砲型CV-90-D装甲車

2021-11-01 20:10:25 | 先端軍事テクノロジー
■特報:世界の防衛,最新論点
 イギリスで行われましたDSEI国際危機管理展に関する話題をお届けしましょう。自衛隊の装備体系にも参考となる部分は多い。

 イギリスのBAEシステムズ社はDSEI国際危機管理展に50mm砲搭載型のCV-90装甲戦闘車を発表しました。この50mm砲塔型はCV-90-Dシリーズとされており、単に40mm機関砲に50mm砲を搭載するにとどまらず、砲塔システムを再設計しアクティヴ防御装置や周辺監視装置等を追加搭載する事で戦闘効率等を大幅に強化し防御力も向上しています。

 CV-90-Dシリーズは戦車と同等の火器管制装置を搭載すると共にスパイクLR対戦車ミサイル運用能力を標準装備とし、装甲戦闘車ながら50mm機関砲と併せ主力戦車に十分対抗すると共に部分的に置換える能力を有しており、戦車との協同を超えた水準の運用も想定、これは欧州各国が冷戦後、主力戦車を排し装甲戦闘車を強化した施策に対応するものです。

 BAE社によれは、このCV-90-Dシリーズはオランダ軍が進めるCV9035NL装甲戦闘車改修計画に関しての5億ドル規模の改修や、チェコ陸軍へ提案されるCV-90-MkⅣにも適応し得るとしており、また車体情報管理システム等は既に1200両以上が運用されている各国CV-90運用状況を反映させたものとなっており、更なる各国への提案を進めるとの事です。
■FNハースタルの武装ヘリ
 FNハースタル社といえばFNC小銃等を思い浮かべますが。

 ベルギーのFNハースタル社はヘリコプター武装キットFNエアボーンエクステンデットデジタルスイートを発表します。これは2021年9月14日に開催されるロンドンDSEI危機管理展に先立ち新しい装備システムを提案するもので、既存の汎用ヘリコプターへの武装ヘリコプター化プログラムとして2018年より開発が進められていた最新の装備という。

 FNエアボーンエクステンデットデジタルスイートはFN社製機銃Dポッドデジタル照準射撃ポッド、サフランEuroflir410EO/IR超長距離複合光学照準装置、FN社製ヘッドアップディスプレイ、タレス社製FZ231レーザー誘導ロケット弾ポッドシステムを統合したもので、FN社はモデルにUH-60多用途ヘリコプターをイメージ画像として採用していました。
■電動軍用車Vizsla
 バッテリー技術が発展するならば不整地を500km踏破する電動オートバイの可能でしょう。

 イギリスのスパキャット社はエコチャージャー社と共同開発した世界初の実用電動軍用車VizslaをDSEI国際危機管理展で初公開しました。スパキャット社は六輪式全地形車両などを各国に納入している不整地車輛開発の先駆者ですが、今回新たにリチウムイオン電池を搭載したクワッドオフロードバギー方式である四輪式の全地形車両を開発しています。

 Vizslaは二人乗り、最高速度は65km/hで航続距離は150kmとなっています。軍用四輪駆動車としては余りに航続距離が低く、特にこの種の車両が投入される山間部や森林地帯などの不整地での性能は未知数ですが、軍用無線機等と電力を融通する事が可能であり、可搬式太陽電池と一体運用することで燃料補給を必要としない独立戦闘が可能となります。
■ハンファディフェンス出展
 ハンファディフェンス社の今回のDSEIでの動きです。

 韓国のハンファディフェンス社はDSEI国際危機管理展にK-9自走榴弾砲、レッドバック装甲戦闘車等を展示する。これらは韓国軍などで採用されている。K-9自走榴弾砲はM-109自走榴弾砲の設計を元に大型化させ52口径155mm榴弾砲を搭載したもので、この種の自走榴弾砲としては非常に安価に纏められており、NATO諸国での採用も進んでいる。

 レッドバック装甲戦闘車は韓国軍に採用されたK-21装甲戦闘車の改良型で、現在はドイツのリンクス装甲戦闘車と共にオーストラリア軍将来装甲戦闘車選定において評価試験中だ。K-9自走榴弾砲は改良型のK-9A2がイギリス陸軍AS-90自走榴弾砲後継候補に挙がっており、またウォリアー装甲戦闘車の老朽化が進んでおり、韓国から売り込みが考えられよう。
■ボクサーMWS81搭載型
 ボクサー装輪装甲車は様々な派生型を想定していますが自走迫撃砲型もその一つ。

 ドイツのラインメタル社はボクサー装輪装甲車自走迫撃砲型をDSEI国際危機管理展へ展示しました。自走迫撃砲にはボクサー装輪装甲車へラインメタル社が開発したMWS81/81mm迫撃砲システムを搭載しており、ボクサー装輪装甲車後部に搭載、モジュール設計を応用したもの、半自動装填にてHE弾薬や照明弾等を投射可能となっています。

 ボクサー装輪装甲車はドイツ連邦軍へ広範に配備されると共にMIVイギリス機械化装甲車として採用されていて、RBSLラインメタルBAEシステムズランド社により製造されています。ドイツとオランダ及びオーストラリアとリトアニア等に1200両が採用されているボクサー装輪装甲車は高価ですが、汎用性と防御力の高さで高く評価される装輪装甲車です。

 MIVイギリス機械化装甲車は旧式化したFV-432装甲車を筆頭に複数の車両を一つの基本車輛と派生型により置換える計画ですが、1995年にスイス製ピラーニャ装甲車の採用が発表されたものの、景気後退などで実に20年以上延期をくりかえされ、漸くボクサー装輪装甲車が決定、現在イギリス国内での合弁企業によるライセンス生産の準備が進んでいます。
■無人戦闘車Type-XRCV
 RWS遠隔操作銃搭の技術開発に関して我が国は遅れていますが後発でも追いかける重要性はこうした部分に在るのかもしれない。

 ノルウェーのコングスベルグディフェンスアンドエアロスペースは50mm砲搭載の新型無人戦闘車Type-XRCVを発表しました。これはロンドンDSEI危機管理展にパネル展示されたもので、自動車両新興企業であるミルレムロボティクスと共に協同開発したものです。車体は装軌式で旋回式砲塔を搭載、既存の装甲戦闘車と同等の車体戦闘能力を有します。

 ロボットウイングマンと称されるType-XRCVは文字通り有人戦闘車両を支援する用途にあてられ、特に30mm機関砲まで既に開発され採用される、遠隔操作銃搭RWSの性能に定評あるコングスベルグ社の技術は元々RWS操作要員を車内に配置するか更に離れた位置に配置するかの違いだけで元々無人戦闘車両向きの技術を開発していたといえるでしょう。

 Type-XRCVには50mm機関砲に加え車体後部に小型無人機搭載区画も配置されており、装甲偵察車として用いる倍、従来は徒歩の斥候兵が担っていた車外の情報収集も併せて無人機が担う事となります。ただ、システムが高性能化すると共にAI人工知能が担う部分は多少あるにしろ、一定の操作要員は必要であり、その為の通信技術等の開発は関心事です。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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