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北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【土曜詳報】HNLMS-Evertsenエヴァーツェン(1)英空母戦闘群横須賀寄港(2021-09-06)

2021-11-27 20:01:13 | 世界の艦艇
■横須賀基地のオランダ艦
 日本とオランダの関係は江戸時代の長崎出島まで遡るものですが、コロナ禍下の横須賀基地にハンサムなオランダ艦が来航しました。

 ヴェルニー公園を一望するJR横須賀駅前、横須賀基地といえばCOVID-19拡大前には挨拶のように散策していました街です故に、これは本当に久し振りだと異国情緒さえ感じるような印象で電車を降りて駅への長いホームを歩み進めましたが、駅前は異国そのもの。

 エヴァーツエン。オランダ海軍が誇るデーゼンヴェンプロヴィンシュタイン級ミサイルフリゲイトです。デーゼンヴェンプロヴィンシュタイン級、昔は艦名を覚えるのに苦労しましたが、いったん覚えてしまうと、名前は世界史にもでてきます艦名ですので忘れにくい。

 クイーンエリザベス空母戦闘群の一員としてヨーロッパよりはるばると日本間で派遣されてきましたミサイルフリゲイトです。こんな一隻が居ますと異国情緒もすごい、というものでしょうか、対岸には初来日のイギリス海軍空母クイーンエリザベスも停泊しています。

 ハンサムな水上戦闘艦、一見した印象はこれにつきるのです。元々の設計が防空指揮艦といいますので、昔のトロンプ級ミサイル駆逐艦のような旗艦的な運用を念頭に設計した反映なのでしょうが、無駄はないものの必要な設備、あれば便利な設備が巧く並ぶ様子が。

 トロンプ級は巨大な三次元レーダーを収めたドームが上部構造物の最上部に鎮座していまして、強烈な印象を受けたものです。しかし発想は同じなのか、三次元レーダーはAESAレーダー方式となりまして、やはりマストの最上段の形状、SPY-1のイージス艦とは違う。

 イージス艦はレーダー周波数帯を画定する際に近距離中距離よりも遠距離を索敵する、防空中枢艦としては一見当然に思われるものの、防空をかい潜られたものよりも潜らせない防空を重視するためにシステムが大型化し、艦橋構造物に一体化する構造です。一方で。

 APARについてはアンテナ部分が軽量で、それでも250kmの索敵能力を有する、その軽量なアンテナをマストの先端という、見通し線がもっとも長い距離を稼ぐことが可能な位置に配置するという、これも防空艦ならではの設計の極致、という固有の発想に基づきます。

 デーゼンヴェンプロヴィンシュタイン級は、そしてステルス設計をかなり重視しているものの、上部構造物間の通路を空中回廊のように配置するなど、これは考えれば、乗員は面倒でも船体を迂回すれば良いという間工学の認識を排した点に好感度があるのですね。

 防空指揮艦、もちろんこれには指揮する艦隊があってしかるべきですが、現在のオランダ海軍戦力では、艦隊と呼べるものを常設する規模には達していません、スラバヤ沖海戦やバタビア沖海戦の頃とは違う、しかしNATOの艦隊を指揮することは考えたものという。

 トロンプ級ミサイル駆逐艦、思い出すのは1998年のユーゴ空爆の際にNATO旗艦として地中海に派遣されましたが、アメリカ艦隊の旗艦がマウントホイットニー、ドック型揚陸艦を改造した巨大な通信能力を有する指揮艦であったために、苦労したことがありました。

 マウントホイットニーの通信能力はトロンプ級の33倍を常時接続するものでしたので、データリンクを結んだ50秒後にトロンプの通信能力がオーバーフリーズしてしまい、旗艦としての用途を担えなかった、という椿事がありました、無論、NATO空爆の実戦中に、だ。

 たちかぜ。海上自衛隊も同時期に護衛艦隊旗艦を護衛艦むらくも、からミサイル護衛艦たちかぜ、に交代させていましたが、トロンプ、たちかぜ、ともにターターシステム搭載の艦隊防空艦、考えれば旗艦を後に自衛隊でも陸上施設へと、移すことになるのですが、ね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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エチオピア危機!北部紛争拡大と全土非常事態宣言,東アフリカ地域大国で進む国家崩壊の危機

2021-11-27 14:14:15 | 国際・政治
■各国が自国民退避勧告
 国家崩壊の危機といいますとアフガニスタンでの苦い経験がまだ鮮明ですが、もう一つアフリカで危機が進行中です。

 アフリカの緊張、アメリカ政府は内戦激化の様相を見せるアフリカのエチオピア情勢に鑑み、空軍輸送機部隊と陸軍レンジャー連隊をジブチに前進、また海軍の両用戦部隊を遊弋させ海兵隊による自国民救出体制を固めています。軍事介入は行わないが自国民救出へ米軍部隊を展開させる構えで、エチオピア情勢が風雲急を告げる情勢となってきました。

 エチオピア、内戦から一年、反政府勢力がいよいよ首都を陥落させようと言う緊張した状態にあります。エチオピアは人口1億1000万、AUアフリカ連合本部もおかれアフリカ地域成長の原動力となっていました。経済は2000年代から毎年10%の経済成長を続けるアフリカの地域大国、植民地主義時代をも独立を維持し、長く安定していた筈だったのですが。

 アメリカ、イギリス、フランス、ドイツは戦闘激化を受け自国民に退避勧告を発令、日本政府も同様の施策をとっています、邦人輸送もあり得る。実際、ティグレ人民解放戦線の攻勢は首都から100km近くまで迫っており、このままでは現在のエチオピア政府は事実上崩壊しかねません。もっとも、このエチオピア内戦には国内要素が大きく影響しています。

 北部内戦。一年前、ティグレ人民解放戦線が北部で行動を開始ししたため、アビー首相は北部への食料供給を遮断する飢餓作戦を開始しましたが、飢餓の深刻化をうけ国連が援助を開始、この行動をエチオピア政府軍が阻止したため、国連はエチオピア政府へ国連職員の解放を強く要求する状況となっています。一方、ティグレ人民解放戦線の攻勢は強まる。

 邦人救出任務が必要なのか、こう問われますと一概には言えない難しさがあるのです、エチオピア在留邦人は外務省によれば2019年時点で201名、11月初旬の段階で外務省は在留邦人へ情報収集に努め不要な外出を避けると共に出国検討を行うよう緊急情報を発しています。ただ、自衛隊は隣国のジブチに海上自衛隊航空部隊が展開中、実施は可能です。

 非常事態宣言の全土への布告、アビー首相はエチオピア全土へ非常事態宣言を布告し、国民に武器を取って戦うよう訴えていますが、情勢悪化は続いています。それは武装蜂起しているのが前政権とその支持者であり、特に国軍の要職を長く担った支持層も参画している為、エチオピア軍による鎮圧作戦が二の手を踏む状態なのです。その背景もまた複雑だ。

 1991年に社会主義政権から民主化を進めた結果、民主化の主導力となった北部出身者による政権要職の独占状態が生まれましたが、現在のアビー政権がこの状況を打破しました。しかし、今回の内戦の要因には、アビー政権が前与党をテロ勢力扱いし非合法化したため、不当な施策を前に、選挙に負けた事は非合法化の根拠とならないとして蜂起した構図だ。

 アビー政権とティグレ民族解放戦線の対立構造は、単に政権を追われた側が選挙無効を訴えたというような構図ではなく、選挙に勝利した側が敗北した側を非合法化する一種の弾圧構造が背景にあり、安易に反政府勢力と政党政府に善悪を点けるには、それでは自国民に飢餓作戦を行う政党政府は人道上正当性を担保できるのか、という疑問符が付くのです。

 アフリカ情勢への影響。上記の事情はあるのですが、エチオピアが今後大規模な内戦に突入する様な懸念は否定できません、すると東アフリカ情勢全般に大きな悪影響を及ぼす懸念があるのです。これは大袈裟のような表現ではありますが、エチオピアの立地と、そして前述の安定した地域であった、要石的な同国の内戦と考えれば決して誇大表現ではない。

 エチオピア隣国は、北部にエリトリアとジブチ、南部にソマリアと西部にはスーダンと南スーダンが国境を接していますが、この地域は現在非常に懸念すべき緊張状態にあります。スーダンが今年発生した軍事クーデターによる混乱、南スーダンは独立後の内戦が継続、ソマリアは破綻国家のまま、ジブチは内政安定するもエリトリアは独裁政権の混乱が続く。

 南スーダンでは内戦状態の懸念から自衛隊が派遣していたPKO部隊を撤収させたことはご記憶の方が多いでしょう、その際に自衛隊日報に戦闘と記載されたか武力衝突と記載されたかの言葉狩りが、日報問題、として国会で問題視された事もご記憶でしょうが、スーダンやエリトリアも含め周辺の不安定な地域からの難民を受け入れているのもエチオピアだ。

 PKO部隊派遣の必要性、こう安易に主張する事も出来ません、現在のPKOは安保理決議に基づく軍事色の強いものである為、派遣されれば戦闘に発展する懸念が高く、これは内戦を悪化させます。しかしながら、こうした情勢があり、悪化した場合は東アフリカ地域全般の情勢緊迫化に繋がるとして安全保障上リスクがある事は認識しておくべきでしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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