■週報:世界の防衛,最新9論点
今週は潜水艦の話題を中心に。最新型の212CD型潜水艦は価格高騰が行き過ぎて二か国での共同購入に近い方式となった模様です。
ノルウェー海軍およびドイツ海軍は7月7日、212CD型潜水艦6隻の建造についてノルウェーのコングスベルク社とドイツのティッセンクルップ社との間で契約を成立させました。212CD型潜水艦6隻はドイツ海軍が2隻、ノルウェー海軍が4隻を導入する内訳です。212型潜水艦は燃料電池を搭載のAIP潜水艦としてドイツが開発、輸出も行われています。
212CD型潜水艦は212A型潜水艦の改良型としてノルウェー政府が2017年に導入を発表していますが、イタリア海軍等で既に運用されていた212A型潜水艦のノルウェー海軍仕様開発はその費用として2019年にティッセンクルップ社が2億5000万ユーロを投じており、この負担をノルウェー一国が行う事への妥当性疑義から発注が実に4年間遅れていました。
212CD型潜水艦6隻の建造費は55億ユーロとされ、ティッセンクルップ社の開発費を6隻の潜水艦に含め、その潜水艦をドイツとノルウェーが共同購入する事で事実上開発費を折半した構図です。建造は2023年に開始される計画で、ノルウェー海軍へ一番艦の引き渡しは2029年、ドイツ海軍への一番艦の引き渡しは2032年に実施される計画とのこと。
■ブレキンゲ級潜水艦再発動
企業買収で経営統合されたもののいった先で貴社の技術を使うつもりはないので冷や飯をと云われれば、反発もあるのは当然だ。
スウェーデン国防省はブレキンゲ級潜水艦の増強を発表しました。これは八月におけるスウェーデンでの潜水艦関連の最大のニュースといえるでしょう。ブレキンゲ級潜水艦はA26型潜水艦とも呼ばれる潜水艦で、ゴトランド級潜水艦の後継として設計されたものですが、一旦は2014年に冷戦後に高度な潜水艦は不要として計画が中止されていました。
フレキンゲ級潜水艦が中止された背景には、潜水艦建造が低調となりメーカーであるコックムス社がドイツのティッセンクルップ社の傘下に入った事での計画費用高騰もありましたが、ゴトランド級潜水艦のAIP方式はスターリング機関方式である為にティッセンクルップ社の燃料電池方式と相いれず、この結果、一部技術者がサーブ社に引抜かれています。
サーブ社はこの結果、コックムス社を買収する事となり、これをもとにフレキンゲ級潜水艦計画が再稼働し、2隻を52億スウェーデンクローネで建造、2027年から2028年に掛け竣工させる計画です。今回の増強は、建造する2隻の価格が計画超過と成らなかったことを受けての増強、本型潜水艦は排水量1900t、乗員数は17名から31名となっています。
■ポーランド次世代艦
ポーランドの水上戦闘艦も冷戦時代のアメリカ中古艦から世代交代を迎えつつあるもよう。
ポーランド海軍は将来フリゲイト3隻の導入についてスペインのナバンティア社とドイツのティッセンクルップ社との選定を開始しました。これはナバンティア社が8月6日に発表したもので、ナバンティア社はスペイン海軍イージス艦F-100型フリゲイトの設計原型の将来水上戦闘艦をポーランド海軍に提案、同型はオーストラリア海軍も採用しました。
イージス艦F-100型フリゲイトポーランド型の提案に対してティッセンクルップ社はA-300PL型を提案しており、これはドイツの輸出型フリゲイトとして各国が採用しているMEKOシリーズの最新型となります。MEKOシリーズの輸出は多岐に及びますが、現在運用されている国だけでも12か国あり、一例としてオーストラリア海軍も運用しています。
将来フリゲイト3隻の導入について、ポーランド政府は2035年までに竣工を計画し、予算として1150億ユーロを計上、選定した企業の技術協力を受け、ポーランド国内のグダニスクなどでの建造を計画しています。ポーランド海軍はMEKOシリーズについては既に2019年に満載排水量2150tのシュラザックを導入していますが、将来艦はより大型のものです。
■沿海域戦闘艦ナンタケット
フリーダム級沿海域戦闘艦の新しい一世kが誕生したとの事ですが日本の護衛艦のような在来型艦艇が求められているのが昨今の情勢です。
アメリカ海軍のフリーダム級沿海域戦闘艦ナンタケットが8月7日に進水式を迎えました。ナンタケットはフリーダム級の14番艦で、建造はロッキードマーティン社が担当、メノーミニー河畔に在るフィンカンティエリマリネット海洋造船所にて進水式を迎えている。沿海域戦闘艦は近年、中国を意識し当初の軽武装を一転し重武装運用が恒常化している。
フリーダム級沿海域戦闘艦を含む沿海域戦闘艦は、2000年代のテロとの戦いを念頭に海洋法執行の支援と沿岸海域における特殊作戦支援を重視し高速航行と無人機運用、そして艦隊のセンサーノードとしての役割を重視した設計ですが、ロシア脅威の再興と中国海軍海洋進出により、その運用思想が現実の脅威に適合できなくなっているとの指摘もあります。
ナンタケットは満載排水量3292tで全長115m、ガスタービンとディーゼルエンジン4基の11万5400馬力により最高速力45ノットを発揮し、57mm艦砲とRAM簡易防空ミサイルを搭載するが、更にNSN対艦ミサイルを搭載、また艦砲に代えてAGM-114L簡易対艦ミサイル24発と30mm機関砲の搭載や、150kw級レーザー砲の搭載なども計画されている。
■米AARGM-ERミサイル
自衛隊も将来的に電子攻撃能力を構想するならば妨害電波だけではなく対レーダーミサイルも必須と成ろう。
アメリカ海軍は7月19日、F/A-18E戦闘攻撃機からのAGM-88G-AARGM-ER高度対レーダーミサイルの発射試験を成功させました。試験はカリフォルニア西部もポイントマグー訓練海域において実施、原型のAGM-88-HARMは1986年に開発された、スーパーシュライク対レーダーミサイルの後継です。F/A-18E,EA-18G,F-35C,F-35B等に搭載されます。
AGM-88G-AARGM-ER高度対レーダーミサイルについて、開発を担当するノースロプグラマン社では、現行最新のAGM-88Fが射程148kmであるのに対して、射程を大幅に延伸すると共に電子妨害対処能力を大きく向上させたものとされています。対レーダーミサイルは防空システムなどのレーダー電波発信源を狙い防空網の無力化に用いられる装備です。
■タイ,潜水艦支払遅延要請
日本の様な国産技術があれば調達時期も調整できたのか。友好国向け費用と考えられますが潜水艦はるしお型より三割小型の潜水艦で1隻当たり3億4500万ドルですか。
タイ海軍は国防費三割減を受け中国潜水艦取得費用の分割支払いを提案しています。タイのクーデター軍事政権は昨年、中国より元級潜水艦2隻の導入を決定していますが、2020年はタイ国内におけるCOVID-19ロックダウンにより経済打撃が深刻であり、中国からの潜水艦取得には反対デモが開かれるなど、国内にて、非常に大きな反発を招いていました。
元級潜水艦2隻の取得費用は6億8470万ドルとされますが、COVID-19による景気後退を受けタイ海軍国防費は当初の6億3100万ドルから5億0185万ドルへ大幅に減額されています、この為、タイ政府は潜水艦建造費の一括支払いを断念し、中国政府との間で7年間の分割支払いに転換する方針で交渉中、タイ議会下院においてその是非が上程されました。
元級潜水艦は2006年から中国が建造している新鋭潜水艦で、宋級潜水艦の設計を元にロシアから導入したキロ級潜水艦の技術を盛り込んだもの、水中排水量は2400tで、スターリング機関を搭載している。中国海軍では原子力推進技術に並行して静粛性の高い通常動力潜水艦の航続距離延伸にAIP推進方式を研究、元級が中国初の実用化となっています。
■いずも一割上回る韓国型空母
いずも、より少し大きい。韓国は海上自衛隊の護衛艦はるな型に対抗してヘリコプター2機を搭載可能なイスンシン級をDDHと区分するなど、日本への対抗意識が面白いですよね。
韓国海軍が進める韓国型空母について現代重工がイギリスのハブコックインターナショナル社と覚書を交わしたとのこと。これは9月4日にCNNなどで報じられたものです。韓国海軍は周辺情勢の緊迫化を受け、現在建造している独島級強襲揚陸艦を中心とした水上戦闘艦部隊では将来想定される脅威へ対応できないとし、新型艦建造を模索していました。
韓国型空母はF-35B戦闘機を運用する航空母艦とし、韓国政府はF-35B戦闘機取得へアメリカと交渉を進めています。これを搭載する韓国型空母は、現代重工が公開したイメージ図では艦橋が前後に配置された、クイーンエリザベス級空母を小型化した艦容となっていて、ヘリコプター発着スポットだけでも甲板上に5カ所が描かれる大型艦が描かれている。
クイーンエリザベス級空母を小型化した艦容、満載排水量3万t規模で全長260mを構想しているという。この具体的数値を発表した現代重工ですが、同時にこれは建造が決定したものではなく、大宇海洋造船も独自の空母を韓国政府に提案しています。韓国の国防費はGDP比で4%に迫り、このまま成長すれば日本の防衛費を上回ると考えられています。
■シンガポールの米沿海域戦闘艦
はつゆき型護衛艦の方が適したような厳しい状況、しかし沿海域戦闘艦の船体を構成する軽金属合金は海水腐食が問題視されていますが暖かいというよりも厚い海に配備して大丈夫なのでしょうか。
アメリカのハリス副大統領はシンガポールを訪問し8月23日、同国に前方展開している沿海域戦闘艦タルサを視察しました。沿海域戦闘艦タルサは特徴的な三胴船体を採用する水上戦闘艦ですが、同時にその軽武装が現実の脅威に対応できていないと批判され、今回改めて沿海域戦闘艦という区分についてアメリカ海軍や外交関係での議論を呼んでいます。
ハリス副大統領は24日にシンガポールで声明を発表し、改めて中国による南シナ海全域の管轄権主張と人工島建設による権利主張を違法である、と発言しました。また、現在シンガポールへ2隻が前方展開している沿海域戦闘艦を2021年末までに4隻に増強するとともに2022年末までに西太平洋地域での沿海域戦闘艦展開態勢を8隻とする構想を示しました。
沿海域戦闘艦は、しかし速度は優れているものの極めて軽武装、アメリカ海軍ではビルマーツ前第七艦隊司令官が海軍協会ニュースにて沿海域戦闘艦により南シナ海南半分から中国海軍の行動を吹き飛ばしたと発言した一方、現職の第七艦隊報道官は、何も吹飛ばしていないと反論するなど、沿海域戦闘艦の有用性についての温度差が明らかとなっています。
■アルジェリア,中製056型導入
ミサイル艇以上フリゲイト未満の警戒監視用小型艦としては案外よくできた艦だと思います。
アルジェリア海軍は中国より056型コルベットの取得を決定した、056型コルベットは別名を江島型といい、満載排水量1500tの小艦ながら100mm艦砲とYJ-83対艦ミサイル及びHHQ-10近接防空ミサイルに短魚雷発射管、そして飛行甲板を有している沿岸防備用としては理想的な小型水上戦闘艦で、中国海軍では既に本型を60隻近くも建造している。
アルジェリア海軍は2016年までに056型コルベット3隻を取得しており、今回新たにC28A型という改良型を輸出するとのこと。056型は短期間で建造できるとされ、また、中国の建造を担当するチャイナステートシップビルディング社は、要望が在ればさらに強力な兵装を搭載可能としている。飛行甲板を有しており、此処に兵装を追加する事も可能であろう。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
今週は潜水艦の話題を中心に。最新型の212CD型潜水艦は価格高騰が行き過ぎて二か国での共同購入に近い方式となった模様です。
ノルウェー海軍およびドイツ海軍は7月7日、212CD型潜水艦6隻の建造についてノルウェーのコングスベルク社とドイツのティッセンクルップ社との間で契約を成立させました。212CD型潜水艦6隻はドイツ海軍が2隻、ノルウェー海軍が4隻を導入する内訳です。212型潜水艦は燃料電池を搭載のAIP潜水艦としてドイツが開発、輸出も行われています。
212CD型潜水艦は212A型潜水艦の改良型としてノルウェー政府が2017年に導入を発表していますが、イタリア海軍等で既に運用されていた212A型潜水艦のノルウェー海軍仕様開発はその費用として2019年にティッセンクルップ社が2億5000万ユーロを投じており、この負担をノルウェー一国が行う事への妥当性疑義から発注が実に4年間遅れていました。
212CD型潜水艦6隻の建造費は55億ユーロとされ、ティッセンクルップ社の開発費を6隻の潜水艦に含め、その潜水艦をドイツとノルウェーが共同購入する事で事実上開発費を折半した構図です。建造は2023年に開始される計画で、ノルウェー海軍へ一番艦の引き渡しは2029年、ドイツ海軍への一番艦の引き渡しは2032年に実施される計画とのこと。
■ブレキンゲ級潜水艦再発動
企業買収で経営統合されたもののいった先で貴社の技術を使うつもりはないので冷や飯をと云われれば、反発もあるのは当然だ。
スウェーデン国防省はブレキンゲ級潜水艦の増強を発表しました。これは八月におけるスウェーデンでの潜水艦関連の最大のニュースといえるでしょう。ブレキンゲ級潜水艦はA26型潜水艦とも呼ばれる潜水艦で、ゴトランド級潜水艦の後継として設計されたものですが、一旦は2014年に冷戦後に高度な潜水艦は不要として計画が中止されていました。
フレキンゲ級潜水艦が中止された背景には、潜水艦建造が低調となりメーカーであるコックムス社がドイツのティッセンクルップ社の傘下に入った事での計画費用高騰もありましたが、ゴトランド級潜水艦のAIP方式はスターリング機関方式である為にティッセンクルップ社の燃料電池方式と相いれず、この結果、一部技術者がサーブ社に引抜かれています。
サーブ社はこの結果、コックムス社を買収する事となり、これをもとにフレキンゲ級潜水艦計画が再稼働し、2隻を52億スウェーデンクローネで建造、2027年から2028年に掛け竣工させる計画です。今回の増強は、建造する2隻の価格が計画超過と成らなかったことを受けての増強、本型潜水艦は排水量1900t、乗員数は17名から31名となっています。
■ポーランド次世代艦
ポーランドの水上戦闘艦も冷戦時代のアメリカ中古艦から世代交代を迎えつつあるもよう。
ポーランド海軍は将来フリゲイト3隻の導入についてスペインのナバンティア社とドイツのティッセンクルップ社との選定を開始しました。これはナバンティア社が8月6日に発表したもので、ナバンティア社はスペイン海軍イージス艦F-100型フリゲイトの設計原型の将来水上戦闘艦をポーランド海軍に提案、同型はオーストラリア海軍も採用しました。
イージス艦F-100型フリゲイトポーランド型の提案に対してティッセンクルップ社はA-300PL型を提案しており、これはドイツの輸出型フリゲイトとして各国が採用しているMEKOシリーズの最新型となります。MEKOシリーズの輸出は多岐に及びますが、現在運用されている国だけでも12か国あり、一例としてオーストラリア海軍も運用しています。
将来フリゲイト3隻の導入について、ポーランド政府は2035年までに竣工を計画し、予算として1150億ユーロを計上、選定した企業の技術協力を受け、ポーランド国内のグダニスクなどでの建造を計画しています。ポーランド海軍はMEKOシリーズについては既に2019年に満載排水量2150tのシュラザックを導入していますが、将来艦はより大型のものです。
■沿海域戦闘艦ナンタケット
フリーダム級沿海域戦闘艦の新しい一世kが誕生したとの事ですが日本の護衛艦のような在来型艦艇が求められているのが昨今の情勢です。
アメリカ海軍のフリーダム級沿海域戦闘艦ナンタケットが8月7日に進水式を迎えました。ナンタケットはフリーダム級の14番艦で、建造はロッキードマーティン社が担当、メノーミニー河畔に在るフィンカンティエリマリネット海洋造船所にて進水式を迎えている。沿海域戦闘艦は近年、中国を意識し当初の軽武装を一転し重武装運用が恒常化している。
フリーダム級沿海域戦闘艦を含む沿海域戦闘艦は、2000年代のテロとの戦いを念頭に海洋法執行の支援と沿岸海域における特殊作戦支援を重視し高速航行と無人機運用、そして艦隊のセンサーノードとしての役割を重視した設計ですが、ロシア脅威の再興と中国海軍海洋進出により、その運用思想が現実の脅威に適合できなくなっているとの指摘もあります。
ナンタケットは満載排水量3292tで全長115m、ガスタービンとディーゼルエンジン4基の11万5400馬力により最高速力45ノットを発揮し、57mm艦砲とRAM簡易防空ミサイルを搭載するが、更にNSN対艦ミサイルを搭載、また艦砲に代えてAGM-114L簡易対艦ミサイル24発と30mm機関砲の搭載や、150kw級レーザー砲の搭載なども計画されている。
■米AARGM-ERミサイル
自衛隊も将来的に電子攻撃能力を構想するならば妨害電波だけではなく対レーダーミサイルも必須と成ろう。
アメリカ海軍は7月19日、F/A-18E戦闘攻撃機からのAGM-88G-AARGM-ER高度対レーダーミサイルの発射試験を成功させました。試験はカリフォルニア西部もポイントマグー訓練海域において実施、原型のAGM-88-HARMは1986年に開発された、スーパーシュライク対レーダーミサイルの後継です。F/A-18E,EA-18G,F-35C,F-35B等に搭載されます。
AGM-88G-AARGM-ER高度対レーダーミサイルについて、開発を担当するノースロプグラマン社では、現行最新のAGM-88Fが射程148kmであるのに対して、射程を大幅に延伸すると共に電子妨害対処能力を大きく向上させたものとされています。対レーダーミサイルは防空システムなどのレーダー電波発信源を狙い防空網の無力化に用いられる装備です。
■タイ,潜水艦支払遅延要請
日本の様な国産技術があれば調達時期も調整できたのか。友好国向け費用と考えられますが潜水艦はるしお型より三割小型の潜水艦で1隻当たり3億4500万ドルですか。
タイ海軍は国防費三割減を受け中国潜水艦取得費用の分割支払いを提案しています。タイのクーデター軍事政権は昨年、中国より元級潜水艦2隻の導入を決定していますが、2020年はタイ国内におけるCOVID-19ロックダウンにより経済打撃が深刻であり、中国からの潜水艦取得には反対デモが開かれるなど、国内にて、非常に大きな反発を招いていました。
元級潜水艦2隻の取得費用は6億8470万ドルとされますが、COVID-19による景気後退を受けタイ海軍国防費は当初の6億3100万ドルから5億0185万ドルへ大幅に減額されています、この為、タイ政府は潜水艦建造費の一括支払いを断念し、中国政府との間で7年間の分割支払いに転換する方針で交渉中、タイ議会下院においてその是非が上程されました。
元級潜水艦は2006年から中国が建造している新鋭潜水艦で、宋級潜水艦の設計を元にロシアから導入したキロ級潜水艦の技術を盛り込んだもの、水中排水量は2400tで、スターリング機関を搭載している。中国海軍では原子力推進技術に並行して静粛性の高い通常動力潜水艦の航続距離延伸にAIP推進方式を研究、元級が中国初の実用化となっています。
■いずも一割上回る韓国型空母
いずも、より少し大きい。韓国は海上自衛隊の護衛艦はるな型に対抗してヘリコプター2機を搭載可能なイスンシン級をDDHと区分するなど、日本への対抗意識が面白いですよね。
韓国海軍が進める韓国型空母について現代重工がイギリスのハブコックインターナショナル社と覚書を交わしたとのこと。これは9月4日にCNNなどで報じられたものです。韓国海軍は周辺情勢の緊迫化を受け、現在建造している独島級強襲揚陸艦を中心とした水上戦闘艦部隊では将来想定される脅威へ対応できないとし、新型艦建造を模索していました。
韓国型空母はF-35B戦闘機を運用する航空母艦とし、韓国政府はF-35B戦闘機取得へアメリカと交渉を進めています。これを搭載する韓国型空母は、現代重工が公開したイメージ図では艦橋が前後に配置された、クイーンエリザベス級空母を小型化した艦容となっていて、ヘリコプター発着スポットだけでも甲板上に5カ所が描かれる大型艦が描かれている。
クイーンエリザベス級空母を小型化した艦容、満載排水量3万t規模で全長260mを構想しているという。この具体的数値を発表した現代重工ですが、同時にこれは建造が決定したものではなく、大宇海洋造船も独自の空母を韓国政府に提案しています。韓国の国防費はGDP比で4%に迫り、このまま成長すれば日本の防衛費を上回ると考えられています。
■シンガポールの米沿海域戦闘艦
はつゆき型護衛艦の方が適したような厳しい状況、しかし沿海域戦闘艦の船体を構成する軽金属合金は海水腐食が問題視されていますが暖かいというよりも厚い海に配備して大丈夫なのでしょうか。
アメリカのハリス副大統領はシンガポールを訪問し8月23日、同国に前方展開している沿海域戦闘艦タルサを視察しました。沿海域戦闘艦タルサは特徴的な三胴船体を採用する水上戦闘艦ですが、同時にその軽武装が現実の脅威に対応できていないと批判され、今回改めて沿海域戦闘艦という区分についてアメリカ海軍や外交関係での議論を呼んでいます。
ハリス副大統領は24日にシンガポールで声明を発表し、改めて中国による南シナ海全域の管轄権主張と人工島建設による権利主張を違法である、と発言しました。また、現在シンガポールへ2隻が前方展開している沿海域戦闘艦を2021年末までに4隻に増強するとともに2022年末までに西太平洋地域での沿海域戦闘艦展開態勢を8隻とする構想を示しました。
沿海域戦闘艦は、しかし速度は優れているものの極めて軽武装、アメリカ海軍ではビルマーツ前第七艦隊司令官が海軍協会ニュースにて沿海域戦闘艦により南シナ海南半分から中国海軍の行動を吹き飛ばしたと発言した一方、現職の第七艦隊報道官は、何も吹飛ばしていないと反論するなど、沿海域戦闘艦の有用性についての温度差が明らかとなっています。
■アルジェリア,中製056型導入
ミサイル艇以上フリゲイト未満の警戒監視用小型艦としては案外よくできた艦だと思います。
アルジェリア海軍は中国より056型コルベットの取得を決定した、056型コルベットは別名を江島型といい、満載排水量1500tの小艦ながら100mm艦砲とYJ-83対艦ミサイル及びHHQ-10近接防空ミサイルに短魚雷発射管、そして飛行甲板を有している沿岸防備用としては理想的な小型水上戦闘艦で、中国海軍では既に本型を60隻近くも建造している。
アルジェリア海軍は2016年までに056型コルベット3隻を取得しており、今回新たにC28A型という改良型を輸出するとのこと。056型は短期間で建造できるとされ、また、中国の建造を担当するチャイナステートシップビルディング社は、要望が在ればさらに強力な兵装を搭載可能としている。飛行甲板を有しており、此処に兵装を追加する事も可能であろう。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)