■週報:世界の防衛,最新12論点
今週は海軍関係の話題を中心に紹介しましょう。神戸では新型潜水艦たいげい公試がいよいよ開始され来年の竣工に向けて順調に進んでいるようです。
海上自衛隊配備に向け建造が進められている潜水艦たいげい海上公試が開始されたとのこと。これは8月2日に神戸の三菱重工神戸造船所より出航したもので、公試が進めば来年三月にも竣工予定となっています。潜水艦たいげい、これが新型の潜水艦たいげい型1番艦であり、従来の潜水艦そうりゅう型と比較し推進動力を一新した点に特色があります。
たいげい型潜水艦たいげい、潜水艦そうりゅう型がスターリング機関を搭載したAIP潜水艦として設計されていたものを、リチウムイオン電池推進方式として設計した新世代潜水艦で、そうりゅう型後期建造艦にAIP区画をリチウムイオン電池区画に置換えた実績とともに建造されています。リチウムイオン電池は従来よりも短時間で充電可能となりました。
■ロシア,ツィルコン搭載原潜
ツィルコン極超音速巡航ミサイルは冷戦時代の超音速対艦ミサイルが有した様なポテンシャルを再建し得るのでしょうか。
ロシア海軍は原子力潜水艦カザンにて深海武器システム試験を実施した、本艦はツィルコン極超音速ミサイル搭載原潜である。ロシア北方艦隊が発表したところによれば、この試験は七月初旬までにバレンツ海で実施され、水深500m以上の深さで実施されたとのこと。ここでいう深海とは水深200m以下を示すもの、試験兵装の詳細は非開示である。
ツィルコン極超音速運航はマッハ8の巡航ミサイル、カザンはヤーセン級攻撃型原潜の2番艦で水中排水量13500t、533mm魚雷発射管10基を有し魚雷やミサイル等30発を搭載、更に巡航ミサイル用VLSを8セル搭載している、ヤーセン級は一番艦が1993年の起工から竣工まで21年間を要したが、2番艦以降は概ね10年で建造されている、6隻が就役中だ。
■インド,MH-60R受領
アメリカからP-8哨戒機を導入したインドは新たにMH-60R多用途ヘリコプターを導入しました。
インド海軍は初のMH-60R多用途ヘリコプターを受領したと発表しました。インド軍は海軍の艦載機としてMH-60R多用途ヘリコプター24機を24億ドルで導入します、この決定は2020年2月にアメリカのドナルドトランプ大統領がインドを表敬訪問した際にインドのモディ首相との首脳会談においてインドの防衛力強化として締結された新装備調達です。
MH-60R多用途ヘリコプターは最初の2機が7月17日、アメリカ西海岸サンディエゴのノースアイランド海軍航空基地にてインド海軍へ引き渡されました。インド海軍では駆逐艦やフリゲイトの艦載機として対潜哨戒及び特殊作戦用の航空機を必要としており、24機24億ドルの高性能機取得に踏切りました、契約には搭乗員訓練費用も含まれ現在訓練中です。
■英軍,極東に沿岸即応部隊
イギリスが東インド艦隊を再建する模様ですが今回配備されるのは護衛艦いしかり型と同規模の哨戒艦とのこと。
イギリス海軍はインド太平洋地域へ哨戒艦2隻からなる沿岸即応部隊を新編し、恒久的に配置する、これは7月20日の岸防衛大臣とウォレス国防相の日英防衛閣僚会談においてウォレス国防相が発表したものです。なお、この会議の席上において極東へ向かうイギリスのクイーンエリザベス空母戦闘群の日本寄港が9月になると正式に決定されています。
イギリス海軍にはリバー級哨戒艦が8隻配備されています、これは満載排水量1700t、後期艦は2000tの外洋哨戒艦で30mm機関砲と7.62mm多銃身機銃を搭載、乗員は30名程度で速力も21ノットと控えめですが、航続距離は7800浬と長く、海兵隊40名が同乗可能で、また乗員は基本的に個室か片方が当直となる二人部屋、長期の居住性を重視した設計です。
リバー級哨戒艦の2隻を先行して配置し、続いて指揮部隊として沿岸即応部隊を立ち上げるという計画です。小規模ですが極東艦隊か東インド艦隊の再編だ。沿岸即応部隊は、シンガポールかグアム、若しくは横須賀が考えられるでしょう。仮に横須賀に置かれれば第二次大戦後の進駐軍地雷以来、米軍以外の実任務部隊司令部が置かれる事となるでしょう。
■サール6型コルベット引き渡し
サール6型コルベットと云うと小型ではありますが10km圏内の局地防空艦というべき艦艇で訓練支援艦てんりゅう、よりも小型ですが武装組織のロケット弾攻撃に曝される同国には貴重な艦艇です。
イスラエル海軍はドイツのティッセンクルップマリンシステムズよりコルベットアトズマルトとナイツザクホンを受領しました、これはサール6型コルベットの3番艦と4番艦にあたり、これでイスラエルが発注した4隻のサール6型コルベットは全て就役しました。アトズマルトはイスラエル独立記念日、ナイツザクホンはドイツ無条件降伏記念日を示す。
サール6型コルベットは全長90mで満載排水量1900t、イスラエル海軍初のミサイル防衛専用艦です。ミサイル防衛は日米が想定する様な弾道ミサイル防衛は想定せず、パレスチナ自治区沖のイスラエル天然ガス掘削施設をロケット弾攻撃等から防護するアイアンドーム防空システム艦載型を搭載、建造費の三分の一はドイツ政府が戦後補償として担います。
■エジプト,独製潜水艦受領
209/1400型潜水艦は新興国が潜水艦の運用と建造を習得するのには理想的な教科書といえる潜水艦やもしれない。
エジプト海軍は8月2日、ドイツより潜水艦S-44を受領しました。S-44はエジプト海軍が進める4隻の209/1400型潜水艦の最終艦で、2015年に潜水艦増強計画の一環として追加発注された2隻です。209/1400型潜水艦はディーゼルエレクトリック方式、水中排水量1600tで全長62m、乗員30名で運用可能であるとともに250mまでの潜航が可能です。
209/1400型潜水艦のエジプト海軍への配備は2016年12月に一番艦が引き渡され、二番艦は2017年8月、更に3番艦は2019年5月に竣工しています。エジプト海軍はフランスからロシア輸出差し止めのミストラル級強襲揚陸艦取得、イタリアよりカルロベルガミーニ級ミサイルフリゲイトの取得を進めるなど、近年海軍力増強の目覚ましさで知られている。
■英軍P-8A哨戒機配備を公開
イギリスはP-8Aポセイドン哨戒機か日本のP-1哨戒機かを比較し前者を選定しました。
イギリス空軍は初のイギリス向けP-8Aポセイドン哨戒機と曲技飛行部隊レッドアローズの展示飛行を実施しました。この飛行展示はP-8A哨戒機の配備されたロシーマス基地上空において実施され、イギリスBAE社製のホーク高等練習機に囲まれたP-8Aが存在感を示しています。なお、イギリスにおけるP-8A正式名称はMRA1海洋哨戒機となっている。
この飛行はファミリーデイ航空祭の予行飛行といい、P-8A/MRA1哨戒機は一機一億ポンドという高額な装備品とされていますが、2021年内に5機体制が構築される予定で、ロシーマス基地にはE-3早期警戒管制機の後継機となるウェッジテイル早期警戒機が配備される計画で、ここはイギリス空軍におけるボーイング737系統機の集約運用基地となります。
■米軍,E-3AWACS機を練習機へ
E-3セントリー空中早期警戒管制機を練習機にしたという驚くべき話題をひとつ。
アメリカ海軍は8月、イギリス空軍が退役させるE-3セントリー空中早期警戒管制機を1500万ドルで取得しました。アメリカ海軍では早期警戒機として運用するのではなく、E-6マーキュリー空中指揮機要員用の練習機として運用するとのこと。E-3とE-6は一見してE-3に搭載されている巨大な回転式レーダーはありませんが、共に原型機は同じ機種です。
E-6マーキュリー空中指揮機は戦略ミサイル原潜部隊へ指揮命令中継を行う航空機で、ボーイング707を原型としています、海中を航行する潜水艦へ通信を行うには超長波周波数の通信が必要となりますが、この為にはアンテナも非常に長大となり、陸上に配置するには難しい部分が在りました、この為に空中で曳航する、長大なアンテナを搭載しています。
E-6マーキュリー空中指揮機には7900mと1200mのアンテナが搭載されています、そしてこの機体は海軍に16機配備されていますが、万一の核戦争に備えて常時飛行させる必要があり、ローテーションに余裕がありません。中古のE-3を導入する事で年間600時間と2400回の離着陸回数を節約できるとのこと、E-3練習機運用は2023年に開始予定という。
■ヤーセンM攻撃型原潜建造加速
ヤーセンM攻撃型原潜は退役艦に対して建造量産が大幅には遅れているのですが兎に角一隻増えて数が揃ったもよう。
ロシア海軍は7月30日、ヤーセンM攻撃型原潜クラスノヤルスクの竣工式を行いました。クラスノヤルスクはロシアのセヴマシュ造船所において建造されていたもので、ジルコン極超音速ミサイルを搭載、2014年7月27日に起工式をむかえ進水式は2019年、当初は2022年に竣工すると考えられていましたが、ほぼ一年前倒しとなったことになります。
ヤーセンM攻撃型原潜は水中排水量13800tで全長139m、第四世代潜水艦原子炉であるOK-650V加圧水型原子炉を搭載し水中速力は31ノット、また静粛性が高い事でも知られます。武装として魚雷室に30発の魚雷若しくはミサイルを搭載可能であるとともに、ミサイル用VLS8セルを搭載、ジルコンミサイルは射程750km、最大マッハ9を発揮します。
■ニュージーランド艦海外で整備
多目的揚陸艦カンタベリーは自衛隊の輸送艦おおすみ型と比較しますと割切ったうえで支援用にこうした設計もあるのかと考えさせられたもの。
ニュージーランド海軍は多目的揚陸艦カンタベリーの定期整備をシンガポールにおいて開始しました。これは2021年8月から数か月間に及ぶ定期整備となりますが、ニュージーランド国内にはカンタベリーを整備可能や入居可能な大きさのドックなど施設が存在しない為、シンガポールのSTエンジニアリング海洋事業部施設へ入渠し整備を実施します。
カンタベリーは満載排水量9000t、民生用RORO船設計を揚陸艦へ応用したもので揚陸部隊250名と軽装甲車16両を含む各種最大車輛44輌やコンテナ33個の搭載が可能で、また揚陸艇2隻も搭載可能、ヘリコプターは最大4機搭載可能ですが、格納庫に一列に搭載する特異な方式を採用していまして、両用作戦から人道支援輸送まで幅広く対応します。
■墺開発S-100カムコプター
無人ヘリコプターS-100カムコプターは小型ではあるものの所謂市販機転用には無い高性能を秘めている。
オーストリアのシーベル社製無人ヘリコプターS-100カムコプターが八月、アメリカ海軍における試験を完了した。S-100は所謂クワッドコプターの様な小型無人機よりは大型であるものの、その重量は50kgであり燃料57リットルを搭載した場合の全備重量は200kgである。しかし行動半径は180kmと比較的広く滞空時間は6時間、巡航速度は190km/hだ。
S-100カムコプターは武装が可能でタレス製マートレットLMMを2発搭載可能、弾頭重量は3kgで威力は限られるもののレーザー誘導により射程は8kmと一定の性能を有している。アメリカ海軍は水上戦闘艦用に検討中だが、既にオーストラリアや欧州ではフランスとイタリアにベルギー、中東諸国や東南アジアと、そして中華人民共和国にも採用されている。
■米軍ソードフィッシュ機雷試験
ソードフィッシュといいますとイギリスの名物航空機で第二次大戦中の複葉艦上攻撃機を思い出しますが。
アメリカ海軍は将来のMk18-Mod 1ソードフィッシュとMk18-Mod2キングフィッシュUUVによる機雷戦装置評価試験をLSE2021海軍大演習へ投入し本格的な試験を行うとのこと。この試験にはドック型揚陸艦アーリントンにEODMU-6などアメリカ海軍EOD水中処分隊が乗艦し、ドック型揚陸艦を起点とした機雷掃討戦訓練を行うとされています。
Mk18-Mod 1ソードフィッシュとMk18-Mod2キングフィッシュUUVの試験は、現在アメリカ海軍の機雷掃討任務が旧式化した掃海艇の後継艦を建造せず、沿海域戦闘艦など水上戦闘艦より機雷掃討を行うオーガニック方式を採用しており、この能力を補完する意味が考えられるでしょう。なお、水陸両用作戦ではEODによる機雷掃海が必須とされています。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
今週は海軍関係の話題を中心に紹介しましょう。神戸では新型潜水艦たいげい公試がいよいよ開始され来年の竣工に向けて順調に進んでいるようです。
海上自衛隊配備に向け建造が進められている潜水艦たいげい海上公試が開始されたとのこと。これは8月2日に神戸の三菱重工神戸造船所より出航したもので、公試が進めば来年三月にも竣工予定となっています。潜水艦たいげい、これが新型の潜水艦たいげい型1番艦であり、従来の潜水艦そうりゅう型と比較し推進動力を一新した点に特色があります。
たいげい型潜水艦たいげい、潜水艦そうりゅう型がスターリング機関を搭載したAIP潜水艦として設計されていたものを、リチウムイオン電池推進方式として設計した新世代潜水艦で、そうりゅう型後期建造艦にAIP区画をリチウムイオン電池区画に置換えた実績とともに建造されています。リチウムイオン電池は従来よりも短時間で充電可能となりました。
■ロシア,ツィルコン搭載原潜
ツィルコン極超音速巡航ミサイルは冷戦時代の超音速対艦ミサイルが有した様なポテンシャルを再建し得るのでしょうか。
ロシア海軍は原子力潜水艦カザンにて深海武器システム試験を実施した、本艦はツィルコン極超音速ミサイル搭載原潜である。ロシア北方艦隊が発表したところによれば、この試験は七月初旬までにバレンツ海で実施され、水深500m以上の深さで実施されたとのこと。ここでいう深海とは水深200m以下を示すもの、試験兵装の詳細は非開示である。
ツィルコン極超音速運航はマッハ8の巡航ミサイル、カザンはヤーセン級攻撃型原潜の2番艦で水中排水量13500t、533mm魚雷発射管10基を有し魚雷やミサイル等30発を搭載、更に巡航ミサイル用VLSを8セル搭載している、ヤーセン級は一番艦が1993年の起工から竣工まで21年間を要したが、2番艦以降は概ね10年で建造されている、6隻が就役中だ。
■インド,MH-60R受領
アメリカからP-8哨戒機を導入したインドは新たにMH-60R多用途ヘリコプターを導入しました。
インド海軍は初のMH-60R多用途ヘリコプターを受領したと発表しました。インド軍は海軍の艦載機としてMH-60R多用途ヘリコプター24機を24億ドルで導入します、この決定は2020年2月にアメリカのドナルドトランプ大統領がインドを表敬訪問した際にインドのモディ首相との首脳会談においてインドの防衛力強化として締結された新装備調達です。
MH-60R多用途ヘリコプターは最初の2機が7月17日、アメリカ西海岸サンディエゴのノースアイランド海軍航空基地にてインド海軍へ引き渡されました。インド海軍では駆逐艦やフリゲイトの艦載機として対潜哨戒及び特殊作戦用の航空機を必要としており、24機24億ドルの高性能機取得に踏切りました、契約には搭乗員訓練費用も含まれ現在訓練中です。
■英軍,極東に沿岸即応部隊
イギリスが東インド艦隊を再建する模様ですが今回配備されるのは護衛艦いしかり型と同規模の哨戒艦とのこと。
イギリス海軍はインド太平洋地域へ哨戒艦2隻からなる沿岸即応部隊を新編し、恒久的に配置する、これは7月20日の岸防衛大臣とウォレス国防相の日英防衛閣僚会談においてウォレス国防相が発表したものです。なお、この会議の席上において極東へ向かうイギリスのクイーンエリザベス空母戦闘群の日本寄港が9月になると正式に決定されています。
イギリス海軍にはリバー級哨戒艦が8隻配備されています、これは満載排水量1700t、後期艦は2000tの外洋哨戒艦で30mm機関砲と7.62mm多銃身機銃を搭載、乗員は30名程度で速力も21ノットと控えめですが、航続距離は7800浬と長く、海兵隊40名が同乗可能で、また乗員は基本的に個室か片方が当直となる二人部屋、長期の居住性を重視した設計です。
リバー級哨戒艦の2隻を先行して配置し、続いて指揮部隊として沿岸即応部隊を立ち上げるという計画です。小規模ですが極東艦隊か東インド艦隊の再編だ。沿岸即応部隊は、シンガポールかグアム、若しくは横須賀が考えられるでしょう。仮に横須賀に置かれれば第二次大戦後の進駐軍地雷以来、米軍以外の実任務部隊司令部が置かれる事となるでしょう。
■サール6型コルベット引き渡し
サール6型コルベットと云うと小型ではありますが10km圏内の局地防空艦というべき艦艇で訓練支援艦てんりゅう、よりも小型ですが武装組織のロケット弾攻撃に曝される同国には貴重な艦艇です。
イスラエル海軍はドイツのティッセンクルップマリンシステムズよりコルベットアトズマルトとナイツザクホンを受領しました、これはサール6型コルベットの3番艦と4番艦にあたり、これでイスラエルが発注した4隻のサール6型コルベットは全て就役しました。アトズマルトはイスラエル独立記念日、ナイツザクホンはドイツ無条件降伏記念日を示す。
サール6型コルベットは全長90mで満載排水量1900t、イスラエル海軍初のミサイル防衛専用艦です。ミサイル防衛は日米が想定する様な弾道ミサイル防衛は想定せず、パレスチナ自治区沖のイスラエル天然ガス掘削施設をロケット弾攻撃等から防護するアイアンドーム防空システム艦載型を搭載、建造費の三分の一はドイツ政府が戦後補償として担います。
■エジプト,独製潜水艦受領
209/1400型潜水艦は新興国が潜水艦の運用と建造を習得するのには理想的な教科書といえる潜水艦やもしれない。
エジプト海軍は8月2日、ドイツより潜水艦S-44を受領しました。S-44はエジプト海軍が進める4隻の209/1400型潜水艦の最終艦で、2015年に潜水艦増強計画の一環として追加発注された2隻です。209/1400型潜水艦はディーゼルエレクトリック方式、水中排水量1600tで全長62m、乗員30名で運用可能であるとともに250mまでの潜航が可能です。
209/1400型潜水艦のエジプト海軍への配備は2016年12月に一番艦が引き渡され、二番艦は2017年8月、更に3番艦は2019年5月に竣工しています。エジプト海軍はフランスからロシア輸出差し止めのミストラル級強襲揚陸艦取得、イタリアよりカルロベルガミーニ級ミサイルフリゲイトの取得を進めるなど、近年海軍力増強の目覚ましさで知られている。
■英軍P-8A哨戒機配備を公開
イギリスはP-8Aポセイドン哨戒機か日本のP-1哨戒機かを比較し前者を選定しました。
イギリス空軍は初のイギリス向けP-8Aポセイドン哨戒機と曲技飛行部隊レッドアローズの展示飛行を実施しました。この飛行展示はP-8A哨戒機の配備されたロシーマス基地上空において実施され、イギリスBAE社製のホーク高等練習機に囲まれたP-8Aが存在感を示しています。なお、イギリスにおけるP-8A正式名称はMRA1海洋哨戒機となっている。
この飛行はファミリーデイ航空祭の予行飛行といい、P-8A/MRA1哨戒機は一機一億ポンドという高額な装備品とされていますが、2021年内に5機体制が構築される予定で、ロシーマス基地にはE-3早期警戒管制機の後継機となるウェッジテイル早期警戒機が配備される計画で、ここはイギリス空軍におけるボーイング737系統機の集約運用基地となります。
■米軍,E-3AWACS機を練習機へ
E-3セントリー空中早期警戒管制機を練習機にしたという驚くべき話題をひとつ。
アメリカ海軍は8月、イギリス空軍が退役させるE-3セントリー空中早期警戒管制機を1500万ドルで取得しました。アメリカ海軍では早期警戒機として運用するのではなく、E-6マーキュリー空中指揮機要員用の練習機として運用するとのこと。E-3とE-6は一見してE-3に搭載されている巨大な回転式レーダーはありませんが、共に原型機は同じ機種です。
E-6マーキュリー空中指揮機は戦略ミサイル原潜部隊へ指揮命令中継を行う航空機で、ボーイング707を原型としています、海中を航行する潜水艦へ通信を行うには超長波周波数の通信が必要となりますが、この為にはアンテナも非常に長大となり、陸上に配置するには難しい部分が在りました、この為に空中で曳航する、長大なアンテナを搭載しています。
E-6マーキュリー空中指揮機には7900mと1200mのアンテナが搭載されています、そしてこの機体は海軍に16機配備されていますが、万一の核戦争に備えて常時飛行させる必要があり、ローテーションに余裕がありません。中古のE-3を導入する事で年間600時間と2400回の離着陸回数を節約できるとのこと、E-3練習機運用は2023年に開始予定という。
■ヤーセンM攻撃型原潜建造加速
ヤーセンM攻撃型原潜は退役艦に対して建造量産が大幅には遅れているのですが兎に角一隻増えて数が揃ったもよう。
ロシア海軍は7月30日、ヤーセンM攻撃型原潜クラスノヤルスクの竣工式を行いました。クラスノヤルスクはロシアのセヴマシュ造船所において建造されていたもので、ジルコン極超音速ミサイルを搭載、2014年7月27日に起工式をむかえ進水式は2019年、当初は2022年に竣工すると考えられていましたが、ほぼ一年前倒しとなったことになります。
ヤーセンM攻撃型原潜は水中排水量13800tで全長139m、第四世代潜水艦原子炉であるOK-650V加圧水型原子炉を搭載し水中速力は31ノット、また静粛性が高い事でも知られます。武装として魚雷室に30発の魚雷若しくはミサイルを搭載可能であるとともに、ミサイル用VLS8セルを搭載、ジルコンミサイルは射程750km、最大マッハ9を発揮します。
■ニュージーランド艦海外で整備
多目的揚陸艦カンタベリーは自衛隊の輸送艦おおすみ型と比較しますと割切ったうえで支援用にこうした設計もあるのかと考えさせられたもの。
ニュージーランド海軍は多目的揚陸艦カンタベリーの定期整備をシンガポールにおいて開始しました。これは2021年8月から数か月間に及ぶ定期整備となりますが、ニュージーランド国内にはカンタベリーを整備可能や入居可能な大きさのドックなど施設が存在しない為、シンガポールのSTエンジニアリング海洋事業部施設へ入渠し整備を実施します。
カンタベリーは満載排水量9000t、民生用RORO船設計を揚陸艦へ応用したもので揚陸部隊250名と軽装甲車16両を含む各種最大車輛44輌やコンテナ33個の搭載が可能で、また揚陸艇2隻も搭載可能、ヘリコプターは最大4機搭載可能ですが、格納庫に一列に搭載する特異な方式を採用していまして、両用作戦から人道支援輸送まで幅広く対応します。
■墺開発S-100カムコプター
無人ヘリコプターS-100カムコプターは小型ではあるものの所謂市販機転用には無い高性能を秘めている。
オーストリアのシーベル社製無人ヘリコプターS-100カムコプターが八月、アメリカ海軍における試験を完了した。S-100は所謂クワッドコプターの様な小型無人機よりは大型であるものの、その重量は50kgであり燃料57リットルを搭載した場合の全備重量は200kgである。しかし行動半径は180kmと比較的広く滞空時間は6時間、巡航速度は190km/hだ。
S-100カムコプターは武装が可能でタレス製マートレットLMMを2発搭載可能、弾頭重量は3kgで威力は限られるもののレーザー誘導により射程は8kmと一定の性能を有している。アメリカ海軍は水上戦闘艦用に検討中だが、既にオーストラリアや欧州ではフランスとイタリアにベルギー、中東諸国や東南アジアと、そして中華人民共和国にも採用されている。
■米軍ソードフィッシュ機雷試験
ソードフィッシュといいますとイギリスの名物航空機で第二次大戦中の複葉艦上攻撃機を思い出しますが。
アメリカ海軍は将来のMk18-Mod 1ソードフィッシュとMk18-Mod2キングフィッシュUUVによる機雷戦装置評価試験をLSE2021海軍大演習へ投入し本格的な試験を行うとのこと。この試験にはドック型揚陸艦アーリントンにEODMU-6などアメリカ海軍EOD水中処分隊が乗艦し、ドック型揚陸艦を起点とした機雷掃討戦訓練を行うとされています。
Mk18-Mod 1ソードフィッシュとMk18-Mod2キングフィッシュUUVの試験は、現在アメリカ海軍の機雷掃討任務が旧式化した掃海艇の後継艦を建造せず、沿海域戦闘艦など水上戦闘艦より機雷掃討を行うオーガニック方式を採用しており、この能力を補完する意味が考えられるでしょう。なお、水陸両用作戦ではEODによる機雷掃海が必須とされています。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)