北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

新しい88艦隊と反撃能力整備【4】モスクワへの道-ロシアウクライナ戦争示した権威国家和戦論形成と反撃能力

2023-08-17 20:14:13 | 北大路機関特別企画
■自衛隊大西洋方面作戦
 十年前、いや五年前、いやいや2022年1月までの段階ならばここまで防衛力というものを踏み込んで議論する事は、少なくとも北大路機関では無かっただろうなあと思う視点です。

 ロシアウクライナ戦争のウクライナ軍奮戦とともに、自衛隊の反撃能力というものを考えますと、果たして日本がロシアからの攻撃を受けた際、専守防衛の延長線上程度のささやかな反撃能力を行使した場合で、モスクワの意志を一転させる事は可能なのか、という厳しい現実です。ウクライナはこの現実を受け入れ、モスクワへ無人機で反撃している。

 反撃能力、これは超えるのが難しい一線でありながら相手国が国民世論により和戦を決する民主主義国家ではなく、権威主義国家である場合には相手に耐えがたい結果を突き付ける事が専守防衛の枠内では限界がある事も事実であり、それでもなお専守防衛を貫くには、平和の為に痛みを共有する日本国民としての覚悟の共有が必要、いや、避けては通れない。

 ロシアウクライナ戦争では民間調査機関オリックスの検証によりロシア軍死傷者は既に25万の大台に乗っている、太平洋戦争における日本の死者数と比べれば六分の一、いや死傷者では確かに更に低い水準かもしれませんが、東日本大震災の死者行方不明者に負傷者を加えると2万4582名となっていますから、東日本大震災の十倍と云えば見方はかわります。

 大量の死傷者にロシア世論が耐える背景には、ロシア国内において多民族国家でもあるロシアの政権に影響を与える層以外の中央アジア地域での徴兵を強化した場合、それがどれだけ死傷者となろうとも、こうした層の人々を管理する側としては相手が反旗を翻す人数が減るだけであり、耐えうる、という分析さえあります。これは、考えさせられるものだ。

 モスクワやサンクトペテルブルクが攻撃されて初めてその意味を、つまり政権支持層の居留地が攻撃されなければ通じないとウクライナは理解するからこそ、ウクライナ周辺地域への攻撃よりも首都モスクワへの無人機攻撃を行っている、それは成果こそ限られているもののロシア側には確かに影響が及んでいる、この事実は日本として無視できる物か、と。

 新しい88艦隊は、こうした状況に置ける一つの選択肢となります。それは大西洋地域にヘリコプター搭載護衛艦を展開させ、F-35Bからのスタンドオフミサイルによる中枢攻撃の可能性を示唆することです。簡単ではありませんが理論上不可能ではない、もしくはF-35Bの支援下で汎用護衛艦からトマホークミサイルを運用する選択肢も検討余地はあります。

 モスクワを実際に叩くのではなく、モスクワの国家最高指導部が東京を叩くならば、日本も選択肢を持つ、という視点を相手に突き付けるが重要です。もちろん、バレンツ海の沿岸からバックファイア超音速爆撃機が妨害に飛行する可能性はありますが、F-35B戦闘機ならばバックファイアを迎撃可能です。そしてステルス性能は相手に不確定要素を与える。

 平和の為にこういうことをするのではなく国民として痛みを共有しよう、ということで、例えば年間に数千や一万数千の無人機攻撃被害を受け入れる覚悟があるならば、良いのです。しかし、憲法の方が自分の家族や財産よりも大事だ、という国民世論は、最早カルト宗教の域であり、こんなものを押し付けるようでは支持があっても国家ではありません。

 降伏した方が良い、という議論、これは8月15日にもう少し踏み込んで議論すべきだったのでしょうが、それは昭和20年の終戦が、結果として国際公序に立脚したかたちで行われた為であり、ロシア軍のブチャでの虐殺やクリミアとドンバスでの同化政策を見るならば、虐殺かロシア人としての戦争協力を求められるだけで、これが果たして平和なのか、と。

 新しい88艦隊、4個護衛隊群の内半分を大西洋方面へ展開し、必要な物資は同盟国から補給を受け、長期的に展開する。可能性として橋本内閣時代の日米新ガイドラインを応用するならば、F-35B戦闘機の補充やスタンドオフミサイルの補充をアメリカ東海岸で受ける事が可能ですし、交代要員を日本本土からC-2輸送機と艦までV-22輸送機で派遣可能だ。

 大西洋にヘリコプター搭載護衛艦を二個護衛隊群派遣したとしてロシアから見れば空母4隻、ロシアに戦争遂行を断念させるほどの威力は無い、と反論があるのかもしれません。しかしすると他に選択肢はあるのか、となる。外交で解決を、という反論は逆に外交の成功が有るからこそ、アメリカと同盟を結びNATOとも良好な関係がある、といえます。

 プレゼンスオペレーションの話に戻りますが、こうした不確定要素を与えるためには、ヘリコプター搭載護衛艦の定期的な大西洋展開が必要となります。もちろん名目としては親善訓練でもよい、ニジェールやスーダンにアフガニスタンと近年、在外邦人保護や邦人救出の任務が増大しており、その為の親善訓練や信頼醸成と併せて行えば友好国を増やせる。

 クイーンエリザベスの横須賀親善訪問、東京五輪の頃には海事関連で注目されたイギリス海軍空母打撃群の日本訪問ですが、あれは2021年の話でした。しかし、中国にはイギリスは極東地域に一定の打撃部隊を展開させうるということを示したことは重要でした、2021年に行った一回の展開が2023年にもプレゼンスを行使したわけだ。プレゼンスの重要性だ。

 カヴール日本展開、イタリア海軍は空母カヴールを2023年末か2024年の早い時期に日本へ展開させるという。カヴールとクイーンエリザベスはNATO合同空母打撃群として地中海で訓練を何度も実施し、特にロシアウクライナ戦争開戦前後から今日に至るまで、継続的に実施していますが、極東展開、オンザブーツという、これを行うインパクトは大きい。

 シャルルドゴールあたりもいつか来日してほしいところですが、クイーンエリザベス、シャルルドゴール、カヴール、トリエステ、ファンカルロス一世、まもなくここにイギリスのプリンスオブウェールズが加わる、これで6隻となり、この態勢まで揃えますと、極東展開が隔年であっても可能となる。視点を逆にしてみると8隻の重さが見えてくるのです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【京都幕間旅情】五山送り火,夜空に向けられる京都はお盆の伝統行事で如意ヶ岳に灯る大文字と台風七号の爪痕

2023-08-17 07:00:18 | 日記
■京都の夏-五山送り火
 お盆もこれでおわりという昨夜執り行われました五山送り火の模様をお伝えしましょう。

 五山送り火、昨年は色々ありました故に点火したものの確認できない、いやNHKが点火の様子を中継している云々、というCOVID-19以来久々の五山送り火なのに、という一幕がありました。今年は、台風七号の進路で、護摩木は集めていましたが不安は残りました。

 如意ヶ岳の点火を遠景に視認出来た際は正直安堵したのですけれども、一方で友人知人で関東在住の連中は新幹線で大変な難渋しているという状況、これを聞いていましたので、ちょっと難しい状況で五山送り火に誘ってしまった、と報道をみるにつれ反省してしまう。

 台風7号の置き土産は静岡県内で記録的な豪雨をもたらし、15日の計画運休明けの東海道新幹線は今度は運転見合わせ、小田原三島間の運転見合わせは徐々に名古屋へ、そしてとうとう東京と新大阪で東海道新幹線が全面運転見合わせ、という状況になっていました。

 計画運休明けでも不測の運転見合わせが有る可能性はJR東海もJR西日本も予告はしていましたが、まさか全面運転見合わせになるとは思わず、聞けば2200時台でも新幹線電光掲示板は1500時台の列車が掲載されていたといい、二時間以上の遅れです、と表示、確かに。

 本日17日は始発から平常通り運行、というJR東海とJR西日本は16日の時点で発表していますが、お盆やすみの予定を台風に翻弄された方はそうとういるでしょうから、例えばどれだけ遅れても寝れば済む寝台列車の再評価や、在来線に長距離急行の必要性など思う。

 五山送り火は、しかしそういう中にありましても無事執り行われました。仄かな光が一瞬一瞬に文字へと変容する様子には思わず感嘆の声がまわりから自然とわき起こるもので、妙法と舟形と左大文字、遠い鳥居型を除けば灯る様子は、日常が戻ったと実感させました。

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