北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

新しい88艦隊と反撃能力整備【2】はるな就役1973年から半世紀-2023年はヘリコプター搭載護衛艦竣工50周年

2023-08-10 20:00:41 | 北大路機関特別企画
■DDHに可能な限界点
 DDHヘリコプター搭載護衛艦は時として空母と呼ぶ方もいますが、1973年のヘリコプター搭載護衛艦一番艦はるな竣工から海上自衛隊が護衛艦の限界は何処にあるのかを突き詰めて到達した限界値です。

 一個護衛隊に一個航空隊に相当する航空部隊を収容する能力を持つヘリコプター搭載護衛艦が加われば、それは護衛隊群や航空群とまでは行かずとも任務群として機能するのが、新しい88艦隊を構成する護衛隊の提案です。仮に相手が意識する遠隔地にこうした部隊が、親善訓練など居座れば価値観を共有しない相手は意識せざるを得なくなる、抑止力となる。

 価値観の共有、というものは難しい話ではなく、現在の日本は国際公序、つまり国連海洋法条約などで強行規範となっている“海洋自由原則”という価値観を共有する側の世界に居ます、それが、海洋閉塞主義、伝統的な地政学に基づく自国勢力圏を設定し他国の接近を拒否する価値観の国家に対しては、地球が一つである以上、認識の際が生じるという。

 憲法問題から領域を超える事は簡単な話ではありませんが、臨検など仮に応用できる安保理決議や強行規範などを用いて、シーレーンに対する抑圧的な機能を行使することは、国際法上のグレーゾーンではあるものの、明確な武力攻撃に区分されるものではありません。日本が国際法上の武力行使を受けた場合の選択肢として、整備しておいても無駄でない。

 プレゼンスオペレーションとして、日本は2014年からこうした遠隔地での各国海軍艦艇や海洋法執行機関との間で親善訓練を継続しています。これは鳩山政権時代の友愛ボートを発展させた概念であり、安倍政権時代からプレゼンスオペレーションは毎年実施、二ヶ月から三ヶ月にわたりインド洋方面へ展開し親善訓練を積んでいます。しかし数が足りない。

 いずも、かが。問題を付け加えると、ローテーションの厳しさを無視するならば、本土周辺地域の防衛を、ひゅうが、いせ、中心の護衛艦部隊や基地からの航空自衛隊F-35AとF-15Jに依存するとして、いずも、かが、この2隻だけで不可能ではありません。けれども長期にわたる遠隔地での作戦を維持するには、ローテーション、即ち交代がなければ続かない。

 ソマリア沖海賊対処任務における海上自衛隊と韓国海軍の違いをみればわかるのですが、交代が行える大型水上戦闘艦が、本土から離せないセジョンデワン級イージス艦と、やや小型すぎるクワンゲドデワン級を使えず、イスンシン級駆逐艦のみしか用いれなかった韓国海軍は常時展開ではなく不定期展開しかできていません。気合だけではこえられません。

 8隻のヘリコプター搭載護衛艦があって、初めて訓練と展開を両立できるものであり、特に遠隔地での運用を考える場合にはその回航にようする日数も加味しなければなりません。いや逆に、プレゼンスオペレーションの前述した二ヶ月から三ヶ月、いずも、かが、2隻で毎年実施できているのですから、この対象を、ひゅうが、いせ他8隻へ増やせないか、と。

 航空母艦ではなくヘリコプター搭載護衛艦であるからこそできるのは、恐らくこれがF-35CやラファールF4.1を搭載する航空母艦であったならば、8隻への増強ということは簡単には主張できません、それは日本が8隻の航空母艦を保有するリソース、航空母艦という二回り以上は大きな艦を8隻維持する人口や経済力とを有していない、そんな現実がある。

 航空母艦、例えば10万7000tのニミッツ級空母であれば一回の長期航海は半年以上可能です、いやイギリスも6万5000tのクイーンエリザベスで半年以上の長期航海を行いました。ただ、自衛隊がクイーンエリザベス級空母に相当する空母を8隻や6隻を維持できるようには、なかなか想像できないのですね。人口爆発と高度経済成長が再来すれば別ですが。

 ヘリコプター搭載護衛艦は、はるな竣工の1973年に駆逐艦が可能である限界点を検討した上で生み出した日本独自のシステムです。だからこそ、航空母艦を持つべきというような未知の技術を今から構築するのではなく、ヘリコプター搭載護衛艦、空母に対しても数隻を集中する事で対抗できるヘリコプター搭載護衛艦を、増強すべきだと考えるのです。

 プレゼンスオペレーションを実施する部隊を実質四倍に増やすのですから、三ヶ月を四倍としましたら十二ヶ月、つまり恒常的に実施する事が可能となり、インド洋やアラビア海、地中海や場合によってはアメリカ東海岸やイギリスと大西洋地域において、日本のヘリコプター搭載護衛艦を中心とした艦隊が恒常展開する、ということが可能となるのですね。

 FOIP自由で開かれたインド太平洋、日本がプレゼンスオペレーションを定期的に実施し、各国と親善訓練を重ねる場合においても、この安倍政権時代に提唱した海洋自由原則という国際公序に依拠した安全保障観とも合致します。そしてこの行動は、前述のとおり、古典的なゲオポリティクスによる海洋閉塞主義を試みる国には、大きな不確定要素となる。

 プレゼンスオペレーションについて、今行っている施策に各国の反応は概ね好意的です。1946年からの平和憲法が築いた、日本は領土的野心を有さない平和国家、という一つの実績といえるでしょう。1953年の建国以来日本をのぞく東西南北すべての国と戦争を重ねた国とは違う、平和の遺産、ここに依拠し国際平和に貢献する、という発想といえましょう。

 ひゅうが、いせ。果たしてF-35Bの運用は可能なのか、こうした疑問符をつけられる方はいるかもしれません、実際、船体規模に限界があることは確かです。ただ、F-35BがJSF計画として構想された当時、イギリスのインヴィンシブル級空母での運用を念頭に置いていたことを忘れるべきではありません、そして必ずしも飛行隊規模を積む必然性もない。

 インヴィンシブル級空母は、平時においては主任務が対潜作戦であったことから主力艦載機はシーキングであり、シーハリアーはこの場合5機を搭載するのみでした。もちろん、制空作戦などではシーハリアーを増強し空軍のハリアーも追加搭載していましたが。5機は即応待機を行う一つの定数として、最低限度よりは上の数で実績が積まれているのです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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ウクライナ情勢-ロシア航空宇宙軍航空攻撃阻むウクライナ防空砲兵前線進出と占領地橋梁叩くストームシャドウ

2023-08-10 07:00:41 | 防衛・安全保障
■防衛情報-ウクライナ戦争
 この状況で一定規模の航空戦力と空中機動部隊がウクライナにあればと思うのです。

 ロシア航空宇宙軍の大規模な攻撃が効果を挙げられていない、8月7日付イギリス国防省ウクライナ戦況報告がその概要を発表しました。7月から8月初旬にかけて、ロシア空軍は毎日100回以上の航空攻撃を実施していますが、6月のウクライナ軍反撃開始の際程には航空攻撃が威力を発揮できていません、これにはウクライナ側の変化が。

 ウクライナ軍は前線の防空砲兵部隊を増強しており、これによりロシア軍戦闘機や戦闘爆撃機はロシア軍占領地上空よりもウクライナ側へ接近できない状況となっていて、ロシア空軍は滑空爆弾を重点的に投入しているもよう。この滑空爆弾は通常の自由落下型爆弾に翼を装着したもので、地対空ミサイルを避け目標の数km手前から投射する。

 滑空爆弾について、問題はJSOWのような精密誘導爆弾ではなく通常の爆弾に翼を装着しただけのものであるため、命中精度を確保できない状況とのこと。また同様の理由からロシア軍戦闘ヘリコプターもウクライナ軍防空砲兵部隊の第一線進出により、6月の反撃緒戦の頃のような威力を発揮できていない状況があるとイギリス国防省の分析です。
■チョンハル橋
 ストームシャドウミサイルの運用を見ますと航空自衛隊が導入するJSMミサイルには期待してしまうのだ。

 クリミア半島とロシア占領地を結ぶ橋梁の状況について、ISWアメリカ戦争研究所が8月6日に分析情報を発表しました。橋梁はチョンハル橋とヘニチェスク海峡橋があり、チョンハル橋は自動車道と鉄道橋がウクライナ軍攻撃を受け現在修理中、ヘニチェスク海峡橋も補修中で通行不能、この為危険であるか輸送効率の低い迂回路が使われている。

 ストームシャドウミサイル、従来のHIMARSから発射されるGMLRSよりも射程の大きな巡航ミサイルが橋梁の破壊に威力を発揮しており、鏑矢となったイギリスからの供与に続き、フランスから供与されたストームシャドウミサイルも実戦に投入されていることが、ウクライナ空軍のSu-24フェンサー戦闘爆撃機広報写真などからうかがえます。

 ドニエプル河西道路とチャプリンカ北東経路という迂回経路がありますが、先ずドニエプル河西道路については対岸のウクライナ軍軍砲兵射程圏内に入っておりトラック輸送は砲撃で無力化される懸念がある、チャプリンカ北東経路は砲撃の射程外にはありますが主要道路ではなく村道にあたり道路状況が悪く大型車両が速度を上げて通行できません。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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